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ひとりの本好きが、本好きの友だちと交わす往復書簡。

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読んだ本について手紙を書く。本好きから本好きへと書く手紙。往復書簡。手書きの必要はありません。ここから始まった往復書簡がいくつもあります。あなたの手紙、待っています。
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#池田晶子

いのちや意識の「あわい」にあるものは——河合隼雄『中空構造日本の深層』、フィリパ…

拝啓 暦のうえではすでに秋。台風が通り過ぎたあとを「野分のまたの日こそ、いみじうあはれに…

既視の海
1年前
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刻々と変化し続けるもの、それでも変らないもの——小林秀雄『無常という事』『歴史と…

拝啓 九州の災害の報に胸をいためつつ、関東の酷暑も災害のようです。ただ、天気予報の「体温…

既視の海
1年前
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身を賭して成し遂げるものは何か——かんべむさし『車掌の本分』、上橋菜穂子『バルサ…

拝啓 夏至をすぎれば梅雨も折りかえし。ただ近ごろは、そぼ降るよりも篠突く雨ばかりに思われ…

既視の海
1年前
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書かずにはいられないもの——町田康『私の文学史』、早川義夫『女ともだち』

拝啓 いつになっても梅雨は好きになれません。ただ、雨が上がり、地面からむわっと湿り気が立…

既視の海
1年前
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言葉の力を信じる——ジル・ボム『そらいろ男爵』、鎌田實『雪とパイナップル』、アー…

拝啓 寒暖の差が大きく、薄暑というには朝の冷気が身にしみます。しかし、あなたからの手紙は…

既視の海
1年前
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【第10信】「あわい」を見つめ考え続ける——吉田篤弘『雲と鉛筆』【書評】

拝啓 午後になり、西日が机のうえに差し込んできました。夏にはうっとうしい西日も、冬ならば…

既視の海
1年前
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【9通目】死を前にして人が求めるものは——宮野真生子・磯野真穂『急に具合が悪くなる』【書評】

拝啓 いつもは季節感のある書き出しをしようと心がけているのですが、今回は興奮か混乱か、まだ思考も虚空をただよったままペンをとりました。むしろ整理するのを拒みたくなるような読後感です。 いつかは往復書簡集か、またはその形式の小説を紹介しようと思っていました。しかし、本書は偶然に出合い、準備なしに読んだところ、思い切り揺さぶられました。宮野真生子・磯野真穂『急に具合が悪くなる』です。 宮野は哲学、磯野は文化人類学をそれぞれ専門とする研究者。もともと二人は面識がなく、学問のイ