【9通目】死を前にして人が求めるものは——宮野真生子・磯野真穂『急に具合が悪くなる』【書評】
拝啓
いつもは季節感のある書き出しをしようと心がけているのですが、今回は興奮か混乱か、まだ思考も虚空をただよったままペンをとりました。むしろ整理するのを拒みたくなるような読後感です。
いつかは往復書簡集か、またはその形式の小説を紹介しようと思っていました。しかし、本書は偶然に出合い、準備なしに読んだところ、思い切り揺さぶられました。宮野真生子・磯野真穂『急に具合が悪くなる』です。
宮野は哲学、磯野は文化人類学をそれぞれ専門とする研究者。もともと二人は面識がなく、学問のイ