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(6/13)「真の観念の観念とは精神のことである」〜スピノザ『知性改善論』ゼミ(@ソトのガクエン)レポート#5

みなさん、こんにちは。ソトのガクエンの小林です。6月13日(木)22時より、スピノザ『知性改善論』ゼミ(6月第2回)が行われました。今回も15名ほどご参加いただきました。ありがとうございました。

今回はまず、佐々木さんによる前回までの議論のまとめから始まりました。『知性改善論』(講談社学術文庫)21ページからの「方法の規定」でスピノザは、私たちの知得の様式(何かを捉え、把握する仕方)として以下の四つを挙げています。

A. 伝聞によるもの
B. 行き当たりばったりの経験に基づくもの
C. 別のものから結論されること
D. ものの本質によってのみ知得すること(直観知)

さらに、27ページあたりでは、これらの知得の様式から最上のものを選び出すべく、「最高の善」を探究するという私たちの目的を達成するのに必要な手立てとして以下の四つを挙げます。

①私たちの本性を正確に知ること、同時に、ものどもの本性について知ること。
②本性からものどもの相違点、一致点、対立点を正確に推論すること。
③それらの能動・受動を正しく概念すること。
④以上の点を、人間の本性ならびに力能と比較対照すること。

これらを踏まえれば、人間の達しうる最高の完全性が容易に明らかになるとし、④のみが「ものの十全な本質を誤謬の危険なしに包括的に理解する」(29)ものであるとスピノザは言います。
このように、私たちに必要な認識がわかったとして、今度は、「そうした認識によって、認識されるべきものどもを認識する途、ならびに方法が叙述されるべきである」として、方法の探究が行われるのが30ページ第30節からの議論であり、今回の読解の主題となりました。

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ところで、スピノザは、「私たちは真の観念を有している」と前提しており、この前提からしか真理の探究は成り立ち得ないと考えています。今回、佐々木さんはこの「真の観念」について、『知性改善論』だけでなく『エチカ』の議論も踏まえた上で、詳細に解説をされていました。
観念とは(1)常に「何か」の観念であり、その観念対象とは異なる、(2)観念は、それ自体で実在的ななにかである(※観念対象は実在するが、これを対象とする観念もまた、異なる度合いであるが実在性をもつと佐々木さんは説明されます)、(3)(2)の観念もまた、別の第二の観念の観念対象であり得る、これが無限に続く。しかし、真の観念を知るためにはその観念を対象とする観念を知り、また、その観念を対象とする観念を対象とする観念を…と無限遡行を続けていても、何の認識にも至りません。しかし、観念の観念においては、すなわち、私が知るということを知るためには、必然的に私はまず知らなければならず、そして、真の観念を有しているということになる。本書は方法をテーマにしているので、ここで言われている観念と観念のネットワーク(「観念ないし思考の自然学」と佐々木さんは表現されていました)がなぜあるのか、あるいは、私たちはいかにして真の観念を持ちうるのかという議論は『エチカ』に持ち越され、ここでは論じられないということでした。

むしろここでは、精神が規範とする真の観念が直ちに真の方法となる、という議論が展開されます(34−37ページ)。かなり読み解くのが困難な箇所でありながら、とても刺激的で、何度も読み返して理解すべき箇所ですが、この部分について佐々木さんは、真の観念を対象とする観念は、すなわち精神のことであり、真の観念を有する精神はそれ自体で自動的に真理を生み出すため、同時に真の方法となる、これがスピノザのいう霊的自動機械であると説明されていました(正確な再構成ではありません。すみません)。このあたりの議論は『エチカ』を読むとより詳細に説明されているということなので、こちらも読まねばなりません。


さらに、スピノザにおける「肯定の肯定」という議論について、「肯定の肯定」とは真の観念の観念なので、肯定を肯定していることであるという議論を、「お互いがニンマリお互いを肯定しあい、高まっている状態」(「正しいね」「うん、正しいね」と言い合っている状態)と表現されていたのが面白かったです(しかし、これが、思惟と延長の並行論、真の観念の観念と、当の観念を対象とする観念からなる「厚み」という、スピノザ哲学の核心に迫るものであるとも指摘されていました)。

とても難解で読みづらい箇所でしたが、下記の通り個人的にツイートしたように、こうして佐々木さんと参加された皆さんと共に「『知性改善論』を読んで理解することが直ちに(反省的に)これを読む私たちを変様させており、まさに、私たち自身の「知性改善」が実践されているのだ」ということを改めて実感することができた貴重な回となりました。


次回は、6月20日(木)22時からです。『知性改善論』(講談社学術文庫)38ページの第43節(B43)から読み進めていきます。いつでもご参加お待ちしております。お気軽にお越しください。お申し込みはPeatixをご覧ください。


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