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<本の感想>近藤史恵『私の命はあなたの命より軽い』を読んで
自己紹介
皆様、こんにちは華月です。
良い文字の海に溺れていらっしゃるでしょうか。
本の紹介
本日、紹介いたしますのは近藤史恵さまの『私の命はあなたの命より軽い』です。
簡単なあらすじとしましては、
初めての出産を間近に控えたわたし(=遼子)は夫の急な転勤に伴い、里帰り出産をすることに。家族仲もよく、夫婦仲も良い。本当に何も問題はなく、愛しい我が子に会えるはずだった。。。
こんな感じです。私がざっくりと書きましたのでGoogleの紹介文とは異なります。
私の感想(ネタバレも入ります)
この本の事をひと言で表すなら「不穏」。
ひたすらに不穏です。心がザワザワします。けど、物凄く面白いです。一度読み始めたらページをめくる手が止まらないです。
頼むハッピーエンドで終わってくれ!と願わずにはいられません。
1つ、皆様にお聞きします。
命の価値は平等ですよね?
しかし、命の重さこちらは本当に同じですか?
この本を読んだ感想はこれにつきます。
以下ネタバレ入ります。ご注意を。
まず、このタイトルから話したいと思います。
私が最初に読んだ時、主人公は妊婦さんだったのでタイトルの『私』=主人公のことであり、『あなた』=生まれてくる我が子のことだと考えました。命とは平等であるはずだけれど、優劣をつけるほどに我が子の事を愛しているのだと。
しかし、読み進めていくうちに意味合いが変わっていくように感じました。理由としましては、主人公の妹の存在です。
主人公の妹、この子15歳で愛する人との間にできた子を堕胎しています。違いますね、させられています。つまり、『私』=生まれる事のなかった命であり、『あなた』=皆から祝福されて生まれるてくる命ということになります。
更に加えますと、妹の彼氏が実家の庭先で自殺しています。原因は妊娠させた事を職場、近所いろいろな場面で吹聴されたからです。これは主人公の父が立場等々を守ろうとしたため。つまり、『私』=自殺した妹の彼氏、『あなた』=主人公の父となります。
ここまでで、3つの命が天秤にかけられています。本来は同価値であるはずなのに、ここまで"重さ"が変わっています。天秤が傾いた方の命が助かっています。ここまでで、やっと半分くらいです。
次に行きましょう。
はじめに家に帰ってきた時から主人公は家族に対して違和感を持っていました。おかしいとは思いながらも深く追求することはありませんでした。何故なのでしょうか?
考えられるものとして、出産を間近に控えた主人公に対する気遣いもあったことでしょう。ですが、それ以上に主人公の目にフィルターがかかっていたことが挙げられます。
本書中でも主人公が述べているのですが、出来損ないの自分は尊敬すべき父母、美人で出来の良い妹に恵まれたことが誇りだと。そして、ここまで順調に結婚、子宝に恵まれてきていると。
今まで主人公は自分が理想とするものに囲まれて生きてきているので、実家の"歪さ”に気付かないのです。気付いていたとしても、まさか父が、母が、妹がそんなことするはずが無いと歪ませてしまいます。
これは最後のシーンにも表れています。
無事に我が子が産まれ、妹との関係も元の様に良好となります。しかし、最近夫の帰りが妙に遅くなってきます。妹が家に遊びにくる時だけ、帰りが早くめかし込み始めました。ふとした時に妹と顔を近づけクスクス笑い合っていることも増えました。しかし、何も言いません。気が付かないフリをします。
これは分かりやすく私が最後のシーンをまとめたものです。1つ情報を加えるとしたら、妹は主人公の夫の事を毛嫌いしていました。一緒の空間にも居たくないといった具合に。
ここまでくると主人公が本当に報われてほしいと思いますが、主人公、周りから見ると物凄く幸せそうに見えます。私が怖いと思ったのはここですね。一見平和に見えても、実情薄氷の上です。
妄想が入りますが、妹さんも何故そんな平和ではない道を選んでしまうのか。
終わりに
本としては物凄く面白いです。ここまで不穏にさせられたのは初めてで、もっとこの著者の本を読んでみたいなと思いました。
百聞は一見にしかずとも言いますのでぜひぜひ皆様には読んでいただきたい。
さて、ここら辺で本の紹介を終わらせていただきたいと思います。
初めてこんな風に書くので読みにくい部分がありましたら教えていただけると幸いです。また、もっと詳しく書いて!のような要望にもお答えします。
いずれの皆様も文字の海に溺れられますよう・・・