見出し画像

変な家族3 不登校のヒーロー 1

 お兄ちゃんが不登校になったのは二年前だ。四年生の夏休み明けから急に学校に行くのをやめてしまった。理由はないらしい。

 お父さんとお母さんは、お兄ちゃんが何も喋らないから、お兄ちゃんの代わりにあらゆる妄想を立てた。

 中でも一番すごいのが、手紙を読んでいるお兄ちゃんを見たお母さんが、その手紙が不登校の原因だと思いこんでしまったことだ。翌日から手紙の妄想は風船みたいに膨らんであっという間に風速20メートルの風に飛ばされて学校中に広まった。

そしてとうとう全校集会の日、校長先生が手紙について、感情を露わにスピーチをした。

嫌がらせで匿名の手紙を出すのは卑怯者のすることだ。言いたいことがあれば正々堂々名前を書けるはずだ。まだ嫌がらせを続けるというのなら私は絶対に許さない。だが、今名乗りでたら、両親を呼びつけるようなことはしない。約束する。一生私の心の中から出さないと誓う.最後に生徒の中に犯人がいないことを願います。

 結局、後から手紙に書かれた内容が明らかになった。私がお兄ちゃんにカメムシと言われたことに対しての抗議文だった。


 お兄ちゃんは相変わらず、家でゲームをしていた。

 お父さんは堪忍袋の尾が切れたのか「お前は非現実に逃げてるだけだ」とお兄ちゃんに向けてクッションを投げた。

 それ以降、お兄ちゃんはお菓子も食べなくなった。

 そんなある日、お母さんが呟いた。

 「何が現実で何が非現実なのかもう私には分からなかくなった。いっそ、あの子みたいに私もゲームに逃げたいわよ」

 その瞬間、お父さんが私の顔を見てふふっと不気味な笑みを浮かべた。

 「ゲームであいつが何をやってるのか様子を見て来てほしい」

 お兄ちゃんがやってるゲームを知ってるのは私だけだ。しょうがなく私はゲームの中に入ってお兄ちゃんを捜した。

 ジョーカー01122それがお兄ちゃんのアカウント名だ。

 すぐに見つけ出すことができた。たまたま試験前の一人が抜けてジョーカー01122のチームに入ることができた。びっくりするくらい強いチームだった。お兄ちゃんはリーダーで誰かが瀕死状態になったりすると、すぐに自分のアイテムを使って助け出してた。

 それにコミュ障の筈なのに、全然違った。ずーっと誰かとお喋りをしている。それもジョークの連発で、面白すぎた。

 そのことをお父さんとお母さんに教えると、自分たちもゲームに参加したいと言い出したので、レギュラー待ちの二軍で参加ことになった。

 もちろんお兄ちゃんには内緒だ。

 最初はゲームのやり方も分からない二人だったが、どんどんわかるようになってお兄ちゃんの活躍に呆然とした。しかし強いプレーヤー達が、一人、二人と減っていき、ジョーカーのチームは上位から六位まで落ちてしまった。

   二話に続く







いいなと思ったら応援しよう!