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【詩】お待たせ

幼い私は母に手を引かれ
美容院に入った
髪を切るのは私ではなく母
私は椅子に座って退屈した
置いてある雑誌は
私にはまだ意味がわからなかった
美容師は母に頻りに話しかけている
母の顔がのっぺらぼうになっていた
私は怖くなってもう帰りたくなった
母の髪が切り落とされていく
顔の無い母が雑誌を読んでいる
幾つもの筒に母の髪が巻かれて
マヨネーズやケチャップをかけるみたいに
何かの液体をかけられていた
そして母の頭上に丸いマシンがセットされた
変な臭いが漂ってきた
母のことが心配になった
顔が無くなって臭くて
母はどうなってしまうのか
そう思いながら眠くなって寝てしまった

お待たせ

肩をたたかれてぼんやり目を開けると
髪の毛がクルクルの女性がいた
顔は元の母に戻っていて
思わず泣いてしまった

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