クレーム対応の心理的考察
メンタルヘルスサポートシステム「LONTA」では、
働くスタッフのその日のストレスレベルを
定量化することができます。
そのデータを見ていて、思い出したことがあります。
とある不思議なクレーム
起業前はコールセンターのセンター長を任されていました。
ある日、不思議なクレーム対応を経験しました。
化粧品のお客様相談室でのお仕事でした。
夜21時頃、入電があったのですが、
対応したオペレーターに対して、
「声が幼稚すぎる、子供を雇っているのか!?」
とお怒りになり、
「上司に変われ!」
と言われ、管理者(SV)が対応しました。
ところが、SVでも事態が収束せず、
「責任者を出せ」となり、私が対応することになりました。
お客様はかなりヒートアップされていたため、
冷静に対応せねばと考え、私はそこで、
「~~ということですね」
と、お客様の言葉を復唱しました。
すると、
「・・・はぁ?今なんて言いました!?
私の話を聞いてないんですね」
とさらにお怒りになられ、火に油を注ぐ結果となり、
そこから1時間以上、お説教されました。
一向に収束せず、時間だけが過ぎ焦りました。
ただただ、お客様に謝罪を繰り返していました。
ところが、時計の針が23時をさした途端、
「じゃあ、これで。以上」
と、いきなりお客様がお電話をお切りになられました。
終わりが突然だったため、肩透かしを食らったようでした。
・・・23時から何かすることがあったのでしょうか。
3つのクレーマータイプ
今思うと、電話対応の基本である、
「復唱確認」
について、すかさずクレームを入れられたので、
もしかしたら、「プロのクレーマー」だったかもしれません。
最近は「カスタマーハラスメント」という言葉もあるくらい、
接客業で対応するクレーマーのタイプには、
たくさんのタイプがあります。
私の経験上、大きく3つに分けられます。
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1、「怒り、感情激高型」
2、「淡々、ネチネチ嫌み型」
3、「役所、上司クレーム型」
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まず、「怒り、感情激高型」ですが、
例えば、
「おい!ふざけんなよ!!」
「こっちは迷惑してんだよ!あぁ!?わかってんのか!?」
など、怒りの感情を高ぶらせて、
声と言葉で攻撃してくるタイプです。
この場合、ご不満に対して、解決方法を提示しても、
すぐにはご納得されません。
クレームが長期化し、もはや内容よりも、
感情が先行していることもあります。
まずは、解決方法の提示よりも、
感情をクールダウンしていく対話が必要です。
続いて、「淡々、ネチネチ嫌み型」ですが、
これは、
「一体全体、これまでどのような教育されてきたのですかね?」
「おたくのような会社では、そういう対応するのですね」
など、淡々と、嫌味っぽく、攻撃してくるタイプです。
このタイプは、
『真剣にやっていたら、そのようなミスをする筈がない』
という価値観の裏返しがあり、
解決方法ではなく、誠実な対応姿勢を強く求められます。
「幼稚すぎる」と指摘されたお客様の心理状態
冒頭のお客様は、まさにこの
「淡々、ネチネチ嫌み型」でした。
お話の中で、
「私が信頼しているこの化粧品のブランドイメージを
この子が台無しにしている」
(=声が幼稚すぎるというご指摘)
「私の話を真剣に聞いていたら、一言一句理解できるはず。
復唱確認するなんて、ありえない」
といった価値観をお持ちでした。
こういったお客様の場合、テクニックはごまかしにしかならず、
ひたすら誠実にお客様のお話と向き合うしかありません。
最後に、「役所、上司クレーム型」ですが、
これは、
「謝罪文を出してください」
「直接お会いしての謝罪を強く求めます」
など、責任の取り方を形として、強く求められます。
こういったお客様は、長年、役職あるお仕事に就かれていた方も多く、
ビジネスと同じような対応を求められる傾向があります。
ディスペーシングと生理的な指導
クレーム対応力を高めていく上で、
対応するスタッフのメンタルケアは欠かせません。
よくあるクレーム対応の失敗として、
怒りの感情に委縮してしまい、
つい言わされた回答(曖昧、不確実、虚偽)をしてしまい、
さらなるクレームに発展してしまうことがあります。
そうならないための対策として、2つご紹介します。
一つは、「ディスペーシング」(反同調)という手法です。
委縮とは、必要以上に自分を責めてしまうときに、
発生してしまいます。
自分が起こしてしまったクレームに対して、
「これは私が可愛がっている後輩が発生させたクレームなんだ」
と置きかえて対応したり、
「お客様は今、感情の仮面に乗っ取られているだけ、
本当のお客様ではないんだ」
と捉えたりなど、
クレームから一歩引いて、冷静に客観的になるための
言葉掛けを自分に対して行うことがおススメです。
もう一つは、これは古典的で生理的な指導になりますが、
「足の親指に力を入れる」
ということです。
20世紀心理学最大の発見の一つとして、
「行動が感情を作る」
という言葉があるくらい、行動を変えると感情は変化します。
ふだん力を入れない足の親指に力を込めることで、
いつも以上にふんばりが効き、感情の委縮を防げます。
ストレスチェックの本質的な課題
多くのストレスチェックを導入している企業様では、
年に1回の診断を行っています。
しかしながら実態として、人のストレスレベルは、
年1回の測定で理解できるほど、単純ではありません。
始業と終業、
プロジェクトの開始と終わり、
午前と午後、
会議の開始と終了、
など、1日のうちでも数十回以上、
人のストレスレベルは上下しています。
弊社では、年1回のストレスチェックだけでは、
見えてこない部分にこそ、メンタルサポートの必要性がある、
と考えています。
今回ご紹介したクレーム経験をまとめると、
・お客様のストレスは、通話中最も高い状態だった。
(=通話前と通話中でストレスレベルに変化がある)
・対応したオペレーターや管理者が、対応中にストレスを
感じたことは想像に難くない。
(=1日の仕事の中で、突発的にストレスレベルが上がった)
・こういった出来事がもし連続して続いたとすると、
最終的に従業員の離職可能性が高まる。
(=メンタルケアができると、人材の流出を防げる)
このような日々の職場で発生しているストレスに寄り添いつつ、
「悪いストレス」を「成長のきっかけとなるような良いストレス」
へ転換できるような、育成支援をしていくことが、弊社のミッションです。