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📖ぶたぶたカフェ(矢崎存美)

心がどうにもならない時には図書館へ行くことにしている私


今日も、救いを求めて足を運んだ。

図書館の特集コーナーが目に入る
『疲れてるあなたに』
鮮やかで可愛らしいイラストに惹かれて手に取ると、なんと朝食カフェの話。外でモーニングを食べることが大好きな私にうってつけな1冊、と確信して借りることにした。


〇 あらすじ

ストーリーのメインとなる男性が穏やかな家族とのやりとりのあと、唐突に仕事を辞めるところから始まる物語。

知人の誘いにより、バーカウンターで働くことになった。そのお店は、バーの時間帯前に朝食カフェ"こむぎ"を営業している。
簡単にしてしまうと、そこで繰り広げられるファンタジーストーリーだ。(求:語彙力)

〇 悩める社会人に寄り添ってくれた

今の私は現状を打破したくて、環境を変えれば何かが変わると思っている節がある。このモノローグに衝撃を受けたと同時に、こういう選択もあるよな……と励まされた。

主人公は親に心配をかけないように、所謂良い子になることを自ら偉んで実行してきた人。周りからも慕われているし、大企業に就職できるほどの能力が備わっている。

そういう決定的に自分と違うところを見つけてしまって一瞬気持ちが沈むこともあったが、リズミカルに進むストーリーにグイグイ惹き込まれて言った。


〇 伏線……?

この話には登場人物とぶたぶたさん(?)以外にも何人かの人々が登場する。
「この人は何?」
「え、それってどういうこと?」
と、主人公と同じ目線で疑問を抱きながら、ポロッと落とされた伏線を回収するのも面白かった。


〇 きっとある、ぶたぶたカフェ

そして、美味しそうな朝食の数々……!
ビスケットに目玉焼き、フレンチトースト、パンケーキに、オムレツ。メープルシロップの香りが漂ってきそうで、カフェの鮮やかな世界が脳中に浮かび上がってきた。
実際にこんなカフェがあったらいいな、いやでも絶対に無いな……と私は思ったほどの完成された世界観。
ぶたぶたさんの存在も相まってファンタジーでしかないのだが、『ケンタッキーフライドチキン』や『ぐりとぐら』といった日本人なら馴染み深いワードも含まれているため、同じ世界線であることに微かな希望が見えた。
日本のどこかに"こむぎ"はあるはずだ。きっと

〇 ぬいぐるみちゃん

重要な存在となる"ぬいぐるみ"
私は心が疲弊した時に、ぬいぐるみを撫でたり抱きしめたりすることで心を穏やかにしようと努める癖がある。
ストーリーの中に出てくるぬいぐるみとは身体接触する訳では無いが、登場する人間たちはぬいぐるみとの対話を通して自分と向き合ったり励まされたりしていた。この物語を読んでいる私も、登場人物たちの姿に自分を重ね合わせ、肯定してもらっているような気持ちになれた。



ファンタジー要素はあるものの、人間らしい、疲れた大人に沁みるお話だった。ページ数も多くないのでサラッと読めたのも良い。
小学校高学年〜くらいの時に出会っていたら、その後の人生に寄り添ってくれただろうな。出会っていたかったな〜なんて思った。
シリーズは他にもあるようなので、また違ったぶたぶたさんの物語を探してみようと思う。

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