夢を叶えた五人のサムライ成功小説【フライパンズ編】13

この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。


まゆがマイクを握り、出場者に向かって言った。


『それではただ今から取材を行います。あらかじめお伝えした順番でインタビューさせて頂きます。インタビュアーは岩松茂太、収録は私、桜まゆが務めさせて頂きます』


まゆの挨拶と共に、茂太のマイクを握る手に力が入る。

『恥ずかしい限りです。本当なら私はそちらに座っているはずです。ですが人生は本当に不思議なものです。私が一番感じています。ですがライブでは私もピンとして新ネタを披露させて頂く機会も頂戴しました。みんなに紹介したい方が居ます。私は出会ったとき、その人の職業を初めて知ったとき、驚いてしまいました。このなかで例えば、レッツ!美銀を主催する会社の社長さんと面識のある方が居ましたら手を挙げてもらえませんか?私たちはプロですがメジャーな番組には出るなんてことはそうありません。ですから社長なんて雲の上の存在だと思います』


茂太は一つ深呼吸をした。
そしてスタジオ内とメンバーひとりひとりの顔を見てから、再びマイクを手に取った。


『みんな、知らないですよね。それが普通です。でも人生って先ほども言いましたが不思議なことが当たり前に起こるものです。お笑いから遠ざかった今の私は言うなれば裏方的な位置にいます。ですが縁のもたらす力ははかり知れません。私は社長と何度か会っています。正直、今でさえ驚いています。ある方を通して紹介されました。そのある方は私の恩人です。今日、この場を借りて紹介させて頂きます』


スタジオにどよめきが起こる。
顔を見合わせる面々、何がなんだか分からないメンバー、反応は様々だった。

『では、ご紹介させて頂きます。レッツ!美銀主催者であり、ヘルプミーコーポレーション社長である松木雄介様です』


拍手が沸き上がる。とんだサプライズに一同が騒然する。
刺激を受けたのか、みんなの士気が高まり、意気揚々さが伝わってきた。


社長はその光景を見て笑わずにはいられなかった。
社長の大きな感謝に触れ、一同は心のなかでより一層お笑い道に精進を重ねていく決意を誓った。
茂太もまた松木に改めて深々と頭を下げた。

『それでは皆様、長くなりましたがインタビューを始めさせて頂きたいと思います』


いよいよ茂太の新しい道へのスタートが幕を開けた。
柴田や松木が見守るなか、インタビューがトントン拍子に進んでいく。


茂太は自身の不安が取り越し苦労だったことに安心を覚えた。
茂太を見守る面々もまた目の前でおこなわれている茂太のインタビューを目の当たりにして安堵感に包まれた。


インタビューする人間がかつての仲間であることが救いとなったのか、ぎこちなさを生むのではと予感してもいたかま、プラス効果を結果としてもたらした。


和気藹々としたムードのなか、取材というものを感じさせない笑顔がそれぞれにはあった。


やはり、心を突き動かすものは感動であり、そしてその感動は自然としたありのままさがもたらすこと、茂太は内心噛み締めた。
柴田は思った。


もう自分が茂太に教えることはない。あとは茂太自らが学び、習得し、成長を遂げていくだろう。
いつしか柴田は葉巻の入ったケースを空にしていた。


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