デレラの読書録:村上春樹『東京奇譚集』
あの人は上手くやっている、と側から見てそう思われるような誰かの生活。
満たされた、欠けたところのない、正常な生活。
しかしながら、そういう見た目の正常さとは裏腹に、人間の精神というものは、常に薄暗い地下と繋がっていて、いつそこに引き込まれてしまうか分かりません。
なぜか。
それは人生には偶然性が潜んでいるからです。
人生のなかで、偶然に生じる何かをキッカケに、わたしたちは薄暗い地下に引き込まれます。
そこから戻ってくるとき、人間は成長とも失意とも絶望とも違う何かを背負って帰ってくるということ。
あるいは、偶然性を受け入れるということ
全く問題ない正常な生活に内在する破綻の予感、精神を不安定にする偶然性との出会い。
わたしたちは偶然性に晒されている。
偶然性に出会って、薄暗い地下に落ちたとき、わたしはどうしたら良いのだろうか。
薄暗い地下から戻ってくるための扉の探し方を、村上春樹は書こうとしているのかもしれない。
おわり
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