彼女の誕生日、好物。私の休日。

　今日は姉の誕生日だ。そして、待ちに待った私の休日だ。
　この一週間は意外な再開や、仕事で新しいことが始まったりと少し忙しない日々だった。まだ大丈夫だと考えていたけども、日中右瞼が痙攣することが数日続いたのが何よりの証拠だろう。だから、今日この日が来ることを切に願っていた。
　今日一日は誰とも会わずに家で過ごすことに決めている。そのために数日前に図書館へ行き、より空想の世界に没入できる小説をいつもより多めに借りた。そして、まずは溜まった睡眠負債を返済しようと前日21時には床に就いた。おかげさまで約二カ月続けているポケモンスリープでは睡眠スコア100点を叩き出し、新しいポケモンにも遭遇できた。（我らが愛するヤドンが登場するこのアプリを紹介してくれたのは恋人だが、彼はもうしばらくこれを起動させておらず、私だけがコツコツとレベル上げに勤しんでいる。色違いに遭遇したり、ブイズの育成に注力したりと愛くるしい彼らにすっかりハマってしまっている。）

　朝、明るい陽射しに導かれ瞼を開く。スマホの画面を確認すると、日付は9月18日を示している。８つ歳の離れた姉が幾年前にこの世に生まれ落ちた日だ。三姉妹の私達の中で一番乗りで現世に乗り込んだ、父母の愛を一心に受けた彼女の記念日だ。
　数日前に電話口で話した時にスフレチーズケーキが一番の好物だと話していたのを思い起こして、まどろみとの境を揺曳しながらスマホを操作してプレゼントを選ぶ。スフレチーズケーキが好きならばりくろーおじさんは間違いないんじゃないか。ネットでメッセージカードと共に送信する。スマホ一つでモノと言葉を贈れる現代に感謝しつつ数日前のアイツに意識を向ける。自分で書いたメッセージカードを添えて梱包して送ったアイツ。おそらく土日祝日を挟んでいるから到着は少し後になりそうだ。できれば当日に届いてほしかったが致し方ない。中身は一冊の本である。ものぐさな私は、他人の言葉を借りて想いを届ける。noteを書く余力があるにもかかわらず。
　どうやら今日はカップヌードルが発売開始した日でもあるらしい。それも先の電話で聞いた。だから私はこれを書き終えた後に買い物に出かけようと思う。そうしてカップヌードルとスフレチーズケーキを用意して、姉の住まいとは程遠いこの一人暮らしのアパートの一室で一人でそれらを食べるのだ。律儀に数字のキャンドルも買ってきたので、火を灯して、彼女の幸せを願って消してやろうじゃないか。

　今日は久しぶりに絵を描こうと思う。昔は好きだったがもう何年も描いていない。でも先日会った人話を受けてもう一度描いてみたくなった。使う色鉛筆はこれまたもう何年前か分からない誕生日に父から貰ったステッドラーの水彩色鉛筆だ。幾度とない断捨離を乗り越えてきた年代物である。捨てずに保管し続けた過去の自分を褒めてやりたい。今中身を確認したら数本を芯が折れているものがあったので、鉛筆削りも買わなくては。

　朝食はパンベルデュをこしらえた。（少し洒落た言い方をしただけのフレンチトーストである。）それをブラックコーヒーと共に食す。何時からか自分で豆を選んでコーヒーを淹れるようになり、自宅でのカフェタイムが格段に贅沢なものになった。とはいっても、普段使用するのはコーヒープレスなので拘りを尽くしているとは言い難いが、余裕のない平日の朝でもそのコーヒーによって落ち着きを得られるから現状満足している。パンベルデュはどうやらラム酒を入れすぎたようで飲み込む時少しだけ喉が熱くなる。その感覚を楽しむ自分はまた一歩大人というものに近づいたのかもしれない。

穏やかな一日だ。
おはよう9月18日。