縁結びの前に
数日後に縁結びのお作法が始まる。
ご縁を頂くのは仏教徒のご本尊さまなので
弟子の準備として
仏の教えで器を整える。
その為に
前行の法話がある。
本格的な教えとお作法の前に
弟子が行う準備である。
今回器を浄化する教えは
チベット仏教に伝わる修行の要である
『道の三要素』と『37の菩薩の実践』
というテキスト。
『道の三要素』は
カーラチャクラの法統にも名を連ねているツォンカパ大師が著した
大乗仏教の修行の道筋を要約し
深く説かれているテキストである。
『37の菩薩の実践』は
王子(菩薩)トクメ・サンボが著した
大乗修行者となった菩薩が
どのように考え利他の行為を実践するのかを
日常生活で起こり得るシチュエーションを通して
具体的に書かれたテキストである。
ツォンカパ大師は
チベット仏教ゲルク派の創始者で
智慧と方便ともに優れた導師。
ヒーローともいえる有名な大師である。
菩薩のトクメ・サンボは、
ツォンカパほど有名でないかもしれないが
彼について
どのくらい心が優しかったのか
以前聴いた話がある。
トクメ・サンボは余りにも慈愛に溢れていて
道で可哀想な動物を見ると
立ち止まって泣きながら祈ることがよくあった。
余りにも長く祈っているので
同行する人々は「よくあることだ」と彼を放っておいて先に進み
彼は暫くして追いつくのだった。
ある日トクメ・サンボは
先生である高僧と数人のお坊さんと一緒に
遠い町を目指して歩いていた。
すると道の脇に
年老いて痩せ細った
死にかけているロバがいた。
トクメ・サンボは涙を流しながら駆け寄り
ロバを抱きしめてオンオン泣きながら祈り始めた。
先生達はそれを見ながら暫く待っていたが
彼が全く動きそうにないので
「じきに追いつくだろう」
と彼をそのまま置いて
目的地に向かって歩き出した。
その先生は神通力があると有名な高僧であったが、
その場を離れる時、同行の者達へ言った。
「あのロバはもう大丈夫だろう。
菩薩が祈っているのだから。」
あのロバは死んでも
良い転生を得ると確定した
と言ったのである。
よく泣く菩薩は多くいる。
可哀想な生き物を見ると
いてもたってもいられない。
そんな菩薩が著した菩薩行の実践が
ツォンカパ大師の修行の階梯と
縁起&空性の見解とともに
神さまとの縁結びまえに
弟子に授けられる。