匂いと共に思い出す。
とあるご縁があって森下典子さんが書かれた「日日是好日」を手にしました。
簡単に紹介すると森下さんがお茶を習って成長された体験ルポのようなエッセイ。
多くの人にとってお茶の世界は馴染みがないものなのでしょうか。私は「日日是好日」を読みながら色んなお茶の先生のお顔を思い出させてもらい懐かしい気持ちになりました。
私の親族はお茶の先生をしている方が多く。
その関係で私も物心つく頃から茶席に参加したり、お付き合いのある先生の茶席のチケットを握り締めて茶菓子目当てに茶席に出入りしていました。
「〇〇先生〜!祖母が参加できないから代わりにきましたよ〜」
と先生に声をかけると90代の先生は暖かく迎えてくださり。
「今日はよく来たね。」と、帰り際に茶菓子をこっそり渡してくれたりしたものです。
社会人を経るまではお茶の世界はただお茶菓子を味わうために行くという感覚でしたが、時折実家に帰る際に顔を出す茶席をいつからか味わうようになっていました。
『あ。あの人のお点前。とっても美しい。』
『亭主の人が考えられて選ばれたお花や道具。とっても今日の場に合っていて素敵だな。』
『うん。このお煎茶丁寧に点れられていて、とても幸せな気持ちになる。』
亭主の自然の捉え方、それが表現された場。
その場に迎え入れられている自分。
本の中にも書かれていましたが、自分の変化を感じる場というのが「道」を歩くということなのかもしれませんね。
最後に参加したお茶席はそんな経験をさせてもらった気がします。
私がお世話になった先生の中には他界され、お会いできない方が増えてきました。
そんな折「日日是好日」を読んで、
「ああ。先生たちこんなところにいてくださっているんだ。」と、自分の感性を養ってくださった先生たちの所作を振り返って、久しぶりにお会いした気持ちになりました。
私の中に彼女達の生き方が馴染んでいる様子を感じさせてもらってとっても嬉しかった。
また色んな経験を経て彼女たちのことを思い出すことがあるのでしょう。その度に新しく出会える彼女たちとの再会を楽しみに、私も精進して参りましょう。
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