3日会わば刮目して見よ【読書レビュー・ネタバレ】東野圭吾「クスノキの番人」
全体記事36記事目は3つ目の読書レビュー、東野圭吾の「クスノキの番人」です。
全451ページ・31章から構成される「クスノキの番人」ですが、レビューを書くにあたり初試みもありますので頑張って書きたいと思います。
あらすじ
その木に祈れば、願いが叶うと言われているクスノキ。
その番人を任された青年と、クスノキのもとへ祈念に訪れる人々の織りなす物語。
不当な理由で職場を解雇され、その腹いせに罪を犯し逮捕されてしまった玲斗。
同情を買おうと取調官に訴えるが、その甲斐もなく送検、起訴を待つ身となってしまった。
そこへ突然弁護士が現れる。依頼人の命令を聞くなら釈放してくれるというのだ。
依頼人に心当たりはないが、このままでは間違いなく刑務所だ。
そこで賭けに出た玲斗は従うことに。
依頼人の待つ場所へ向かうと、年配の女性が待っていた。
千舟と名乗るその女性は驚くことに伯母でもあるというのだ。
あまり褒められた生き方をせず、将来の展望もないと言う玲斗に彼女が命令をする。
「あなたにしてもらいたいこと――それはクスノキの番人です」と。
『秘密』『時生』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』に続く新たなエンターテインメント作品。長編書き下ろし。
レビュー
東野圭吾のミステリーではなく人情系の話になります。
それこそ「あらすじ」に書いてあるように『秘密』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』同様のハートフルなストーリーとなります。
殺人はおこりません(過去の病死などはありますが)。
このブログのタイトルに「3日会わば刮目して見よ」と書きましたが、この本には大きなテーマがあります。
・主人公、直井玲斗の成長物語
・人には言葉や手紙だけでは伝えられない思いがある
・関係性や接し方、態度などでも思いを伝えることができる
以上3つが『クスノキの番人』のテーマだと思いました。
主人公、直井玲斗の成長物語
はじめはどうしようもない若者という感じでした。
仕事への覚悟もなく、責任もどこか人任せ。
人生を左右する決断さえも運任せという感じでした。
しかし、クスノキの番人を務めることで様々な人と出会います。
老若男女問わず、経営者から女学生、創業者一族の後継者など、色んな出会いによって成長していきます。
「人は決して一人では生きられない、ましてや一人で成長なんてできない。人は人と出会うことで成長できる」という古くからある格言を再認識できました。
特に30章のとある会議で主人公が発する意見はこの話の中での成長を見て感じることが出来ますので必見です。
人には言葉や手紙だけでは伝えられない思いがある
人は見栄を張ります。嘘も付くし後悔することもありますし邪念や雑念があります。
また、伝えても伝えきれない好意もありますし、信念や理念があります。
言葉や文字で伝えることが出来ればいいのですが、それだけでは伝えられない思いなんてたくさんあります。
この「クスノキの番人」の世界観ではある方法で言葉や文字以外で思いを伝えることが出来ます。
関係性や接し方、態度などでも思いを伝えることができる
「クスノキの番人」の中では様々な組み合わせの繋がりがあります。
その中でも一番本筋から離れているように見える、とある和菓子メーカーの前会長と息子の繋がりがあります。
前章で私は「言葉や手紙だけでは伝えることが出来ない思いがある」と書きましたが、この2人の関係性を見ると接し方次第で言葉や態度だけで思いを伝えることが出来るのだと思いました。
子供が昨年末に生まれました。
私も息子との接し方次第で息子への思いなどの伝わり方が違うのだと思います。
いま、この時期にこの「クスノキの番人」を読むことが出来てよかったです。
しっかりと思いを伝えていきたいと思います。
以下、「クスノキの番人」の登場人物紹介やストーリーの概要となりますのでネタバレが嫌いな方はここまでにしておいてください。
登場人物
直井玲斗…本作の主人公。警察釈放後クスノキの番人に従事する。
柳澤千舟…玲斗の伯母。玲斗にクスノキの番人を命じる。
佐治寿明…クスノキに祈念に来る参拝者。月に1~2度祈念に来る。
佐治優美…佐治寿明の娘。寿明の行動を尾行し玲斗に遭遇する。
佐治喜久生…故人。佐治寿明の兄。過去に祈念したことがある。
大場壮貴…和菓子メーカー「たくみや本舗」創業者一族の若者。
福田守男…「たくみや本舗」常務取締役。壮貴の祈念に付き添い来社する。
飯倉孝吉…地元の老人。千舟の2年先輩にあたる。
直井宗一…故人。玲斗の祖父。
直井富美…玲斗の祖母。玲斗が母を失ってからは母替わりに育てる。
直井美千恵…故人。玲斗の母。玲斗が小学生時に乳ガンにより亡くなる。
柳澤将和…柳澤グループのヤナッツ・コーポレーション代表取締役
柳澤勝重…ヤナッツ・コーポレーション専務取締役
ネタバレ(章ごとの概要)
今回の初試みが全31章、章を読むごとにまとめていったことです。
大きなネタバレになるので読書レビュー意外に興味が無ければ以降は読まない方が良いと思います。
1章
直井玲斗が新しいクスノキの番人となっている。
佐治寿明という祈念者がやってくる。
また、佐治を追って謎の女性がやってくる。
2章
玲斗の近況について、最近1ヶ月の話となる。
1ヶ月前には留置場にいた。
以前の職場で不当解雇(義心でおこなった行為を咎められた)され、その職場に盗みに入ったが、失敗し捕まった。
祖母富美から依頼された弁護士(岩本義則)が面会にくる。
富美は唯一の肉親である。
実際の依頼人は他の人物であり、その人物の命令に従えば釈放させる。
釈放を依頼するかどうか迷ったときにいつも行うコイントスで決める。
コイントスの結果、釈放され依頼人である柳澤千舟とホテルで会う。
若かりし(40年程前)千舟、祖母・富美、祖父・宗一、母・美千恵と写る写真を見せられる。
千舟は母美千恵の異母姉になり玲斗の伯母にあたる。
姉妹の年が離れている理由は宗一が22離れた教え子富美と結婚したからであった。
富美が千舟に依頼し弁護士をたててもらい釈放されたことがわかった。
千舟の命令はクスノキの番人になることだった。
これ以降のネタバレ内容は下記サイトを参考にしてください。