彼女、夜間覚醒す

我が家の長女である“彼女”は、重度知的障害を伴う自閉症スペクトラムである。

赤ちゃんの頃は1日の睡眠時間が約10分だった彼女だが、（親のほうに）血の滲むようなネントレにより、だいぶ幼い頃から入眠まで付き添えば1人で寝られるようになった。というか、布団の感触も夜眠ることも好きなので、入眠に関してはかなり上手なほうである。
今のところ、「おやすみ」と言ってから5分以内には眠りに就いている様子だ。
色々怖いことを考えてしまってなかなか眠れないのは次女のほうだが、そのかわり次女は一度眠ると明かりが点こうが彼女がいくら騒ごうが起きないので、そこは大変助かっている。

そう、「入眠に関しては」問題ないのだ。
問題なのは中途覚醒のほうである。

彼女は深い眠りのあと、夜中2時〜4時の間に起きることが多い。以前は覚醒してもしばらく独り言を言ったり歌ったりしたあと再入眠してくれていたので問題なかったのだが、ここ最近は子供部屋を抜け出すことが増えた。本人もまだ眠いときはトイレに行ったあと私のベッドに潜り込んでくるのだが、完全に目が覚めてしまっているときは廊下やリビングに明かりを点けて回り、1人エアコンの消えたリビングで遊び始める。
だいたい私が漏れ出る明かりや声で異変を察して発見するのだ。
「まだおはようじゃないよ。おやすみだよ」
と言うと、割とすんなりと遊ぶのをやめてついてくる。こうなるともう自分のベッドでは寝ないので私のベッドに入れて寝かしつけるのだが、再入眠するときとしないときがあり、ここは賭けである。
早朝というよりまだ夜間の時間帯に起きて再入眠しなかったときは悲惨だ。その日は学校で使いものにならず、眠そうなのに昼寝せず（彼女が好きなのは“夜”眠ること…なのである）夕方から眠気で機嫌が悪くなる。

この中途覚醒に困り果てて発達外来で相談したところ、メラトベルという薬を処方された。
単に入眠を助ける薬として認識していたので意外に思ったのだが、聞けば睡眠環境全体を整える効果もあるらしい。
メラトベルを飲み始めて、彼女の入眠はよりスムーズになった。明かりを消して3分以内には眠っているのではないだろうか。
だが中途覚醒に関してはあまり改善が見られなかった。2月にメラトベルの処方量が倍に増えたのだが、増えたその日の夜中も元気に起き出してきた。
室温や寝るときの衣類にも気を配っているが、今のところ改善しないままである。薬が増えた途端に起きる頻度が上がったので、もしかすると定着するまで不安定なのかもしれない（希望的観測）。

しばらく様子を見つつ、睡眠不足な日々は続くのだった。

ちなみにだが、外泊などで私と同衾状態のときの彼女は滅多に起きない。
一見母親とくっついていた方が安心して眠るのだなと思えるが、寝ている間に私が少しでも身じろぎするとパッと手が動き、離れまいと私の所在を確認してくるので、実は眠りが浅いのではないかと踏んでいる。その瞬間私も目が覚めてしまうので、同衾するのはお互い良くない気がする。
逆に次女は寝る寸前まで親にくっついていても、眠りに入る瞬間には離れ、独りで眠り、ものすごい寝相で同衾している夫を蹴って追い出すらしい。性格が出ていて面白い。