フィリップスのバズセッション:対話的な学びを引き出す効果的なディスカッション手法

レトリカ教採学院、学院長の川上です。

主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)、個別最適な学びや協働的な学びが謳われて、随分経ちます。

今日はその中でも、教職教養の知識と理論を、 対話的な学びや協働的な学びで実践する方法を、ご紹介したいと思います。


フィリップスのバズセッション(Buzz Session)の概要と教育現場での活用 

フィリップス(J. Donald Phillips)が提唱したバズセッション(Buzz Session)は、短時間のグループディスカッションを行う手法で、教育やビジネスの場で参加者の意見を引き出すことを目的としています。
 
この手法では、通常、6人程度の小グループに分かれ、約6分間という限られた時間で意見交換を行うことで、全員が効率的に参加し、短時間で考えを深めることが可能です。
 
フィリップスの狙いは、グループ内での活発な意見交換を通じて、発言のハードルを下げ、全員が積極的に議論に参加できる環境を整えることにあります。
 

バズセッションの進行方法

1. テーマ設定と指示の明示:

教師やファシリテーターは、例えば、「社会における個人の役割」や「歴史的な出来事が現代に与える影響」などのテーマを提示し、各グループがそのテーマについて議論するように指示を行います。
 

2. グループ編成: 

6人程度の小グループに分けることで、各参加者の発言時間が確保され、均等な参加が促されます。
 
例えば、社会科の授業で「戦争の社会的影響」について議論する際、各グループで異なる視点(経済的影響、心理的影響など)を割り当て、多角的な議論を促すことができます。
 

3. 短時間のディスカッション:

制限時間内(約6分間)で、各メンバーが自由に意見を述べ、他者の意見にも耳を傾けます。
 
短時間での討議は、参加者にとって自分の考えを簡潔にまとめて伝える練習にもなります。
 
たとえば、「環境保護のための行動」について話し合う場合、各自の意見を簡潔に共有し、チームでまとめます。
 

4. グループ発表とフィードバック:

ディスカッション後、各グループの代表が話し合いの内容を全体に発表し、教師や他グループからのフィードバックを得ることで、多様な視点を共有することができます。
 
教師は全体の発表を聞き、重要なポイントを補足し、児童・生徒の学びをさらに深めます。
 

現在の日本の「対話的学び」におけるバズセッションの活用

日本の教育では「主体的・対話的で深い学び」が重視されており、バズセッションはこうした教育目標を実現するのに効果的な手法です。
 
以下のように活用が期待されています。

 1. 均等な発言機会の提供

少人数で短時間のディスカッションを行うことで、普段発言が少ない児童・生徒にも意見を述べる機会が増えます。
 
例えば、英語の授業で「将来の夢」について議論する場合、全員が順番に自分の考えを述べるよう指導することで、生徒全員に発言のチャンスが与えられます。
 

2. 主体的な学びの促進

バズセッションでは自分の考えを整理し、短時間で述べる必要があるため、児童・生徒は事前に内容をまとめ、主体的に討議に参加することが求められます。
 
道徳の授業で「友情とは何か」というテーマで話し合う際、自分の体験を述べることで、他者との意見交換を通じて理解が深まります。
 

3. 多様な視点からの理解の深化

グループ内で異なる意見に触れることで、新たな視点を得られます。
 
例えば、社会科で「地球温暖化対策」について議論する場合、異なる視点(経済的・環境保護の視点など)で意見を交換することで、より広い理解が得られます。
 

4. 協働的な学びの基盤形成

バズセッションでは、他者の意見に触れることで協働的な学びの基盤が形成されます。
 
家庭科の授業で「リサイクルの重要性」をテーマにしたグループ活動を行い、全員で一つの結論に達することで、協力して学ぶ姿勢が醸成されます。
 

まとめ

フィリップスのバズセッションは、対話的で主体的な学びを促進するための効果的な手段として、日本の教育現場でも活用が可能です。
 
短時間でのディスカッションを通して、発言しやすい環境を作り、多様な意見を受け入れる力が育成され、現代の教育が目指す「多角的な思考力」、「多様性理解」、「協働的な学び」を深めるために役立つでしょう。


ではまた!

レトリカ教採学院
学院長 
川上貴裕

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