教育基本法第12条が示す「社会教育」の意義と教師の役割

レトリカ教採学院、学院長の川上です。

平成29年・30年の学習指導要領の改訂の際、「社会に開かれた教育」という理念のもと、カリキュラム・マネジメントや、授業改善の重要性が、謳われました。

また、同時に、「よりよい教育を通じて、よりよい社会を目指す」という理念の下、学校運営協議会を置くコミュニティスクールを、全国100パーセントにしようという動きも盛んになってきました。

社会に開かれた教育は、子供たちにとっては、学習の基盤となる要素の、課題発見・解決能力、情報収集・情報活用能力、言語能力などに加え、探究心、協調性や責任感、連帯感などを培っていくうえでも、重要です。

加えて、前日のブログでもお話した生涯学習、あるいは、昨今話題の、シティズンシップ教育などにも繋がる重要なファクターなのです。

社会教育、社会に開かれた教育と聞くと、「難しい」、「結局どう言うことかよく分からない」と感じる人も多く見受けられます。

今回も、大学講師としていつも学生さんに指導しているように、学校の実践や応用の事例を挙げながら、分かりやすく解説していきますね。



教育基本法第12条

教育基本法第12条は、「社会教育」を日本社会における重要な教育の一分野とし、これを、国および地方公共団体が積極的に支援する責任を担うと定めています。
 
ここでは、社会全体が教育の場となることを促し、学校教育だけでなく、すべての市民が成長し学び続ける社会の実現を目指す理念が示されています。
 
 
第十二条 個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。
2 国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない。
 
 

条文の意味と意義

第12条第1項は、個人の多様なニーズや社会の求めに応えるため、学校外で行われる教育の重要性を強調しています。
 
この「社会において行われる教育」には、家庭教育や地域教育、さらには職場での研修や学びも含まれ、個人が主体的に生涯学び続けるための環境を整える必要があるとしています。
 
このため、学校教育だけでなく、図書館や公民館などの施設や学習機会を提供し、多様な学びを支援する体制の整備が不可欠です。
 
また、第2項では、国や地方公共団体が図書館、博物館、公民館、さらには学校施設を活用した学びの場を社会教育として推進し、教育機会の提供や学習情報の充実に努める義務を負うとされています。
 
この背景には、社会が多様化し、また技術や情報が急速に変化する中で、学校教育に加えて、社会全体で知識やスキルを学び続けられる仕組みが必要であるという考えがあり、この仕組みの充実が、社会の活力向上や文化の継承にも寄与するものとされています。
 

学校と教師の果たすべき役割

学校や教師には、この「社会教育」推進に関わるため、地域社会と積極的に連携し、学校が社会の教育拠点の一つとして機能する役割が求められます。以下、具体例を交えながら詳細に説明します。
 

1. 地域社会との連携と学びの場の提供

学校は、地域の公民館や図書館と協力し、地域社会が抱える課題に対応した学習プログラムを提供する役割を果たすことができます。
 
たとえば、地域の農業や伝統産業に関する特別授業を学校で開催し、地域住民も参加可能にすることで、地域に根ざした学びを児童・生徒と地域住民が共有する機会を作ります。
 
また、学校の校庭や体育館、図書室を地域住民が使用できるようにすることで、地域のコミュニティスペースとしての役割も果たし、地域社会との結びつきを強めることができます。
 

2. 生涯学習の意識を高める教育

教師は、児童・生徒が学校を卒業した後も自己学習を続け、社会に貢献する人材に成長するよう指導することが重要です。
 
たとえば、授業の中でリサーチやプレゼンテーションを取り入れることで、児童・生徒が主体的に情報収集し、考察する力を育成し、学ぶ楽しさや成長の喜びを実感させることができます。
 
このような学び方は、生涯にわたり学習し続ける態度を培う基盤となり、社会教育にも通じるものです。
 

3. 社会教育機関との協力と活用

学校は、地域の図書館、博物館、公民館などの社会教育施設と連携し、児童・生徒や地域住民が多様な学習機会に触れることができる環境づくりに寄与します。
 
たとえば、学校と地域の図書館が協力し、児童・生徒とその家族が一緒に読書会や学習イベントに参加できるようなプログラムを実施することが考えられます。
 
また、博物館と連携して実地見学の機会を設けることで、教室では得られない体験を通して知識を深め、社会への理解を促進します。
 

4. 地域の課題に対応する教育内容の充実

教師は地域課題に対する理解を深め、これに対処する教育内容を授業に取り入れることも重要です。
 
たとえば、過疎化が進む地域では、児童・生徒が地元の産業や歴史について学び、地域活性化のアイデアを考える授業を通して、地域社会に貢献する姿勢を育てます。
 
これにより、児童・生徒が地域の一員として自らの役割を考える機会が増え、社会教育の理念である「地域に根ざした学び」を実現することができます。
 

5. 多様な学習ニーズに応える工夫

現代の社会教育は、幅広い年齢層や背景を持つ人々に対応するため、多様な学習ニーズに応えることが求められます。
 
学校のカリキュラムでも、個別のニーズに対応する指導や個別最適な学び・協働的な学びを取り入れることが推奨されています。
 
教師は、児童・生徒が異なる考え方や学び方を持つ他者と協力し、問題解決に取り組むスキルを育てることができます。
 
たとえば、グループディスカッションやプロジェクト学習を通じて、児童・生徒が主体的に学ぶ姿勢を醸成し、それが卒業後の社会教育にも生かされる学びの基盤となります。
 

教師の成長と研修の必要性

社会教育を効果的に推進するためには、教師自身が生涯学び続ける姿勢を示すことが重要です。
 
たとえば、社会教育に関する研修やセミナーに参加し、新しい教育手法や地域課題について学ぶことで、教師が現場での指導に活かすことができます。
 
また、社会教育施設との協働を通じて地域社会の状況を学び、教育内容を充実させる取り組みも重要です。教師が自ら学び続ける姿勢を持つことは、児童・生徒にも「学び続けることの重要性」を自然と伝える効果があり、教育の中核となる理念を体現するものです。
 

結論

教育基本法第12条が示す「社会教育」は、学校教育の枠を超え、個人や地域社会のニーズに応えるための学びを促進することを意味します。
 
学校や教師は、地域社会と積極的に関わり、社会全体で学びの場を提供する役割を担うことで、この理念の実現に貢献します。
 
社会の一員としての責任を自覚し、学校内外での教育を通じて、児童・生徒が自らの成長を続ける力を身につける環境を整えることが、現代の教育現場で求められている重要な役割です。
 
 
 ではまた!

レトリカ教採学院
学院長
川上貴裕


いいなと思ったら応援しよう!