日本の学校におけるいじめ問題の詳細分析

レトリカ教採学院、学院長の川上です。
  
いじめは日本の学校において、依然として深刻な社会問題です。
 
文部科学省が公表した「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、2023年度のいじめの認知件数は732,568件であり、前年度の681,948件から50,620件(7.4%)増加し、過去最多を記録しました。
 
この数字は、いじめが日本の教育現場に広く存在していることを明確に示しています。
 



いじめの現状

いじめの態様にはさまざまな種類がありますが、最も多いのは「冷やかし・からかい」であり、全体の件数の約6割(58.7%)を占めています。
 
そのほか、「無視や仲間外れ」、「身体的な暴力」、「インターネットを利用した誹謗中傷」などが報告されています。
 
SNSの普及により、インターネット上でのいじめも深刻化しています。
 
匿名性の高さや高度の流通性が、加害者に罪悪感を与えにくかったり、被害者にとっては24時間攻撃を受け続ける状況を作り出したりしています。
 
つぎに、

いじめを学年別で見てみると、小学校が全体の8割を占めており、中学校、高校、特別支援学校が続きます。

特に、毎年おおよそ、小学1年生~3年生のいじめの認知件数が目立ちます。
 
小学校でのいじめが突出して多い理由としては、自己表現の未熟さや集団生活における適応の課題が挙げられます。

また、低学年の言動であるため、表出しやすいということも考えられます。
 
一方で、中学校や高校では、進学や部活動、競争や人間関係、集団の複雑化が要因となることが多いです。
 

いじめが発生する原因

いじめの原因は複雑で多面的です。
 
ここでは、学校環境、家庭環境、社会的背景、個人の心理的要因という4つの観点からその要因を分析します。
 

1. 学校環境

日本の学校では、集団主義的な文化が根強く、同質性や協調性が重視される傾向があります。
 
これにより、他者と異なる行動や特性を持つ児童・生徒が排斥されやすく、いじめの対象となることがあります。
 
たとえば、転校生や外国籍の児童・生徒、LGBTQ+の児童・生徒などがいじめに遭いやすいというデータがあります。
 
また、教員の対応不足もいじめの一因とされています。
 
文部科学省の報告によれば、教員がいじめに気づく割合は、依然として限定的で、早期発見が困難な状況です。

毎年、教師によるいじめの発見は、どの校種でも、おおよそ、1割程度にしかなりません。

しかし、特に、今年の調査において、公立の高等学校において教師がいじめを発見した件数は、0%(0件)となっていました。
 
特に忙しい業務環境では、いじめの兆候を見逃すことが少なくありません。

また、先述したように、校種が上がれば上がるほど、複雑化したいじめ、水面下でのいじめも増えるために、発見が困難だと言えます。
 
さらに、学校や教育委員会によるいじめの隠蔽体質が、問題を深刻化させるケースも指摘されています。(toyokeizai.net)
 
 

2. 家庭環境

家庭環境もいじめの発生に影響を与える重要な要因です。
 
たとえば、家庭内のコミュニケーション不足や、親の過度な期待やプレッシャーが子供にストレスを与え、それが学校でのいじめ行動に繋がる場合があります。
 
逆に、親が子供に無関心である場合や、過保護である場合も問題を助長します。
 
無関心な親は、子供の異変を見逃しやすく、過保護な親は子供が問題解決能力を身につける機会を失わせる可能性があります。

くわえて、

先日の虐待のブログでも少し触れましたが、保護者へのアンケート調査で、「時には体罰も必要である」と、体罰容認をほのめかす保護者が、未だに、過半数いるというのも、問題です。

児童虐待防止法や児童福祉法などで、保護者による体罰も法律で禁止されていますが、それでもまだ、しつけと称した体罰をおこなう保護者、容認するも、一定数いるようです。

文部科学省は、体罰を禁止している理由の一つに、「暴力の連鎖を生み出す」と述べています。

実は、明治から、体罰は法律で禁止されていますし、戦後制定された学校教育法においても、体罰は禁止されています。

しかし、特に、昭和・平成の時代は、体罰が公然と行われていたことも多いようです。

その指導や、家庭教育を受けてきた子供が大人になり、保護者となり、我が子へ、しつけと称した体罰を行い、その体罰を受けた子供が大人になり、保護者となり、我が子へ、しつけと称した体罰を行い・・・・

という感じで、やはり文科省が述べている通り、暴力の連鎖を生み出している状況があります。

こういった家庭環境の連鎖も、いじめの一因になっているようです。


 3. 社会的背景 

SNSやオンラインゲームの普及は、いじめの新しい形態を生み出しました。
 
これらのプラットフォームでは、匿名性が高いため、加害者が罪悪感を持つことなく誹謗中傷を行える環境が整っています。
 
さらに、24時間接続可能な状態が、被害者に持続的な心理的負担を与えます。
 
また、社会全体の競争激化もいじめの要因と考えられます。
 
たとえば、受験や部活動の競争が児童・生徒間の対立を引き起こすことがあります。

少し話は脱線しますが、最近では、タワマンも増えてきました。そのタワマンの中でも、いじめは起こっているようです。

例えば、タワマンの50階に住む、とある保護者が、我が子に向かって、「20階以下の子供とはあそんではいけません。」としつけているという衝撃的なニュースも話題になりました。
 
こういった、社会的な背景、環境によって、新たないじめも生み出されているようです。
 

4. 個人の心理的要因

自己肯定感の低下は、加害者にも被害者にも共通するいじめの心理的要因です。
 
加害者は、自分の優越感を確認するために他者を攻撃することがあり、被害者は孤立や自己表現の難しさからターゲットになりやすい傾向があります。
 
また、共感能力の欠如もいじめを引き起こす重要な要因です。
 
他者の痛みや苦しみを想像できない加害者は、いじめ行動を意図的または無意識的に行うことがあります。
 
 

いじめの防止策

いじめを防止し解決するためには、学校、家庭、社会全体での協力が必要です。以下に具体的な対策を挙げます。
 

1. 学校における早期発見と介入

教員がいじめの兆候に気づきやすくするための研修や、いじめ防止のための明確な指針が求められます。
 
また、カウンセラーやスクールソーシャルワーカーの活用も重要です。
 

2. 家庭との連携強化

保護者と学校が密接に連携し、子どもの異変を共有することで、いじめの早期発見と対応が可能になります。
 
保護者向けの教育プログラムを通じて、家庭内でのストレス軽減策を提供することも有効です。
 

3. 社会的風潮の改善 

いじめを助長するような暴力的コンテンツの規制や、SNSの適切な利用を促進するための啓発活動が必要です。

最近では、オーストラリアで、16歳未満のSNS利用を禁止する法案を提出したことも、 大きく話題になりました。

4. 個々の児童・生徒への支援

児童・生徒一人ひとりの自己肯定感を高めるための心理的サポートや、問題解決能力を養うプログラムの導入が重要です。
  
いじめ問題の解決には、複数の視点から包括的に取り組む必要があります。
 
学校、家庭、社会が一体となって、いじめのない健全な教育環境を実現するための努力が求められます。
 
このような取り組みにより、すべての子供たちが安心して学べる環境を早急に整備していかなければなりません。


まとめ

いかがだったでしょうか。

様々な視点から、お話をしてきましたが、いじめの要因やいじめの解決策はまだまだあります。

例えば、日本屈指のブレーンで構成される、日本学術会議では、いじめの原因は、日本の道徳教育に問題があるという報告もあがっています。

刷り込み教育、心理主義化などが、原因だとも言われています。

この学術会議の報告書も、公表されてすぐ拝見しましたが、まさにその通りだと感じています。

私が大学でいじめや道徳についての講義をする際には、必ず学生の皆さんにも、この資料を解説しています。

また、

脳科学の観点からすれば、

「ヒトは生存し続けるため、集団を作り、グループで協力し合ってきた。しかし、集団の中に内部からの破壊を試みる「フリーライダー」がいると、集団として機能しなくなる恐れがある。そこで、ヒトの脳には、自分自身や集団を守るため、このフリーライダーになりそうな人物に制裁行動を起こし、排除しようとする機能が備え付けられたというのだ。」

「近年では学校や職場だけでなく、執拗な晒しあげなどのように、SNSやネット上のサークルが荒れることも多い。ネットの炎上は「自分は正しいことをしている」という正義感がもとになり生まれていることも多い。」

という科学的な分析もあり、だからこそ、「人はいじめをやめられない」と言われています。


日本人なら誰もが知っている「みんな違ってみんないい」という言葉のとおり、

「みんな違ってみんないい。みんな素晴らしい。人が違えば個性や考え方、価値観が違う。だからこそ、楽しいんだ。面白いんだ。」

そのような考え方を、子供たちに伝えていくことが、これからの学校教育の使命、家庭教育の使命だと考えます。

ではまた!

レトリカ教採学院
学院長
川上貴裕

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