見出し画像

★【続巻マンガ紹介】『税金で買った本 9・10巻』が熱い!

マンガが好き過ぎて、マンガの貯蔵量が60,000冊を越えながらも、毎月新しいマンガを買い漁る僕が、前回1~8巻までの名言を紹介したマンガである『税金で買った本』(©原作:ずいの ・漫画:系山冏/講談社)の最新刊:9・10巻を紹介させていただきます。

税金で買った本 9・10巻 感想

1話完結のオムニバス形式で物語が進む本作の9巻・10巻では、ざっくりとこんな感じのテーマのお話が繰り広げられました。

【9巻】
・開館前に並んでいる利用者
・閉館ギリギリに来る利用者
・本についている付録:型紙の弁償
・返却ボックスに寄贈する人
・どんな本を買うかの選定

【10巻】
・大型図書:住宅地図のカバーかけ
・年度末の予算調整で購入
・置かない本を決める除籍

まず、朝の開館時の話や夜の閉館時の話がいかにも「あるある」という感じで、接客業・サービス業でも同様なことがあるなぁと親近感が湧く内容でした。

実際の図書館でもこうした光景が日々見られるんだなと思うと、図書館員の方々の苦労に頭が下がる思いです。

そして僕が9巻の話の中で最も共感し、憤りも感じた「選定」のお話です。

図書館司書に1度憧れたこともありましたが、図書館の運営も理想と現実に葛藤するお仕事なのだと思いました。

予算や選定基準にとても厳しい角野さんの背景には、元・学校司書教諭で教師として教鞭をとりながら図書室の運営をしていた過去がありました。

具体的な教科担当などはわかりませんが、司書教諭として授業や学級担任、生徒指導、保護者、部活動などの対応をしながら、図書室の運営をしていたんだと思います。

しかも図書室の運営にはちゃんとした資格が必要なのに、その分の給与はいっさい出ないという現状がありますし、角野さんは学校図書館を通して子どもたちの未来に貢献しようと身を削りながら働いたことで、心と身体を壊して学校の先生を退職してしまった過去がありました…。

今回、図書館での選書会議では予算の都合で児童書の選定基準について厳しい意見を述べ、学校図書館時代の理想をまた追求して暴走する角野さんは、気軽に本と触れ合ったことで興味を持ったり、純粋に本が好きで読書にまつわることで頑張りたいと思う子を大切にしたいという思いがありました。

しかし学校図書館の現実は、さまざまな利害関係からまともに取り合ってくれない管理職や人事権を持つ教育委員会上層部などが絡んでいて、自分1人がわめいてもどうすることもできませんし、市や県の図書館も行政の管轄で似たような現状です。

そんな角野さんの想いと過去を知っている朝野さんが『理想に固執するのは大人のすることじゃないよ!』と諭しますが、僕個人の想いとしては、その言葉は言ってほしくなかった…と、少し辛くなりました。

確かに言ってることも意味もわかりますが、『そんな情熱を持っててもどうせムダだよ…。』というふうに聞こえてしまうんですよね…。

でも現実ではやっぱり理想がある中で空回りしながらでも、自分のやれる範囲でうまくやるしかないですし、誰かのため・社会のために頑張ろうと理想に燃える人が報われる世の中になってほしいなと改めて思わせてくれたお話でした。

話は変わって10巻では、図書館は毎年年度末に予算を使い切るために予算調整の本を一般書店から買っているということが知れました。

さすがタイトルに『税金』と入っているだけあって、公共事業の年度末に予算を一気に使うのと一緒やん!と思ってしまった反面、自分がその立場なら予算を削減されないために尽力するんだろうなと、図書館も苦労しているんだなと思いました。

そして10巻で僕がとても共感した『除籍』という、図書館の闇のお仕事とその話を盛り上げてくれる新キャラの松浦さんが登場します。

除籍のお仕事とは、毎月新しく選書で選ばれた本を購入しているので、書架(本棚)に入らなくなる分の本を、最近借りられていない本や古くなった本を廃棄するというのも。

あまり考えたことがありませんでしたが、確かに蔵書をひたすら増やせば置き場所がなくなるので、図書館を運営するためにはこの作業をしないといけないですよね。

松浦さんは除籍の作業をしていて、石平くんに「とにかく本捨てるのは本買う以上に厳しいんだよ」とか「一度捨てた本は元に戻らないからね」と伝えますが、まさに本の置き場がなくなってきてる僕の部屋を語られているようで共感しまくりでした。(笑)

このお話では書籍のリデュース・リユース・リサイクルということで、除籍本を「5年間借りられていない本」というコーナーを作って貸し出しサービスをしたりと、サーキュラーエコノミー(循環型社会・循環型経済)の考え方も取り上げられています。

そしてちょっと辛い部分でいうと、正規職員と非正規職員の権限差によって仕事が溜まり、利用者も職員も困るという一端が描かれています…。

めちゃくちゃプロフェッショナルな仕事ができるのに、非正規社員の安月給として使い倒されていたり、仕事ができなくても正規社員というポジションのために閑職に回されて腐っていくような構図は、現実問題として撲滅されたらいいのにな…と、思わせてくれたお話でした。

1〜8巻までのお話もそうですが、この作品は図書館のバックヤードのお仕事や利用者対応、職員の特性など、皆それぞれに助け合いながら忙しい日々をこなしている図書館員さんに拍手を送りたくなります。

図書館の仕事って本当に多岐に渡る業務をしなければならず、日の目を見ない影の努力や大量の雑務、面倒くさい作業があって、その中には専門性が求められるプロフェッショナルさがあり、図書館で働かれている方に頭を下げたくなるお話が詰まった9・10巻は読み応え抜群だと思います!

税金で買った本 9・10巻 名言一覧

いやでもさ、パン屋は遅くまでサービスしたら儲かるかもしれねェ。けど図書館は?遅れてきたヤツが得すんのはズルになんねーか?

出典元:税金で買った本 9巻 P40/講談社
石平

図書館は中古の封筒使ってんのに…、弁償は「新品の買え」って言うんだァ…って。

出典元:税金で買った本 9巻 P55/講談社
石平

夜の木陰にオバケがいても気づかなければ怖くない。嫌なこと言われてもそもそも気づいてなければ最強?でも失敗とか危険とかは気づかないとダメだし…。気づいたうえで気にしないのが最強か?

出典元:税金で買った本 9巻 P167/講談社
石平

人をのせて仕事させる側になんのも…、なかなか気分イイモンだなァ…。

出典元:税金で買った本 10巻 P126/講談社
石平

まあね、言いたいことはわかるよ。付録の弁償にモヤっとするの。俺も型紙だけさしかえて本は廃棄するのもったいないし…。でもあのカビクチャを「弁償です」って言い張る気持ちはわっかんねーーよ。

出典元:税金で買った本 9巻 P50/講談社
白井

どーせフリマアプリひとつしか検索してないんだろうし、新品で買ってくれるといいな…。てか買えよ新品…。

出典元:税金で買った本 9巻 P51/講談社
白井

貧乏臭いんじゃない、貧乏なんだよ。

出典元:税金で買った本 9巻 P54/講談社
白井

これは俺の心からの笑顔だよ…。
弁償をきちんと果たす人は貴重な「善」だからね♡

出典元:税金で買った本 9巻 P64/講談社
白井

職員が選んだ本はゆっくりでもいいけど、リクエストの本は利用者がまってるから早くやらないと…。

出典元:税金で買った本 10巻 P24/講談社
白井

俺の本質は暗くて陰湿なゴミグスだから、「陽」の者と目を合わせると焼かれて死ぬ。

出典元:税金で買った本 10巻 P34/講談社
白井

きっと客商売やったことないのねぇ、あの人。相手の事情を知らないし、考えないからああいうことできるんだわ。

出典元:税金で買った本 9巻 P32/講談社
梨原

ゾロリは…、児童図書関係者でも意見の分かれる本で…。置けば必ず読まれるので読者に親しむきっかけになりやすい。一方で「ゾロリしか読まない子」になる危険を孕んでいます。

出典元:税金で買った本 9巻 P98/講談社
角野 ヒカリ

学校図書館の運用は働く人に左右され過ぎています。たった数キロ住む家が、数年生まれた年が違うだけで天と地ほど差がある学校図書館との出会い。本と親しむ機会を失う。

出典元:税金で買った本 9巻 P123/講談社
角野 ヒカリ

彼が義務教育で学習に馴染めず振り落とされ、幸運にも今公共図書館へ戻ってこれた。一方、学習から心が離れたままの子は山ほどいる。

出典元:税金で買った本 9巻 P140/講談社
角野 ヒカリ

本が好きだった、図書館が好きだった。あんな…、彼のような学習意欲が、知りたい気持ちがあったはずのきらきらした目で本を見る子どもを、義務教育が、学校図書館が芽生えた意欲を上手く育てられず、どれだけとりこぼしてきたのか…。

出典元:税金で買った本 9巻 P141/講談社
角野 ヒカリ

わかってるんですよ、私一人がなにかしたところで図書館をとりまく環境は変わりはしない。でも私がもう少しなにかできれば、一人でも…、救える環境に変えられたんじゃないか…。

出典元:税金で買った本 9巻 P142/講談社
角野 ヒカリ

理想に固執するのは大人のすることじゃないよ。それに…、そんなんじゃ心配だよ。また倒れるんじゃないかってさ。

出典元:税金で買った本 9巻 P124/講談社
朝野

キミがいると話しづらいこともあるから帰れって言ってるの。わからないほど子どもじゃないよね?厳しく言ってるうちに帰ったほうがいいぞ。もっと優しく言って欲しい?

出典元:税金で買った本 9巻 P133/講談社
朝野

あなた一人が頑張って解決する問題じゃないし、あなた一人に責任や決定権がある職場じゃない。わかってるでしょ?

出典元:税金で買った本 9巻 P137/講談社
朝野

あたしもさ、もったいないって思っちゃうよ。新しいのも古いのも、どっちも所蔵できたら一番いいよね。でも淡々と捨てる本選んでいくしかないよ。書庫は無限じゃないからさ。

出典元:税金で買った本 10巻 P83/講談社
松浦

とにかく本を捨てるのは本を買う以上に厳しいんだよ〜。一度捨てた本は戻らないからね〜。本の保存は図書館の役割のひとつだよ〜。大事な本はとっておかないとね〜。

出典元:税金で買った本 10巻 P95/講談社
松浦

…こんな仕事に関わってるけどさ〜、やっぱあたし手放せないし捨てられない性分なんだよ。本も人も。パッと全部捨てちゃえば動きやすいけど、一度捨てたら元に戻らないから慎重にね。人も。

出典元:税金で買った本 10巻 P103/講談社
松浦

図書館に個性や得意分野があるのはいいけど〜、「利用者をコチラへ導きたい」っていう思想の偏りはよくないよね〜。いろんな考えの本があったほうが面白くな〜い?

出典元:税金で買った本 10巻 P156/講談社
松浦

いかがだったでしょうか?

次巻もルールに厳しくも図書を愛してやまない仲間とともに送る図書館で、どんな日常が訪れるのか予想できない展開なので、ぜひ興味のある方は読んでみて損はないと作品だと思います!

それでは今回はここまでです。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?