tuki.さんのアルバム『15』から『晩餐歌』を聴いて思ったこと。
この歌詞すごい。
「あなたと何十回の夜を過ごしたい」って歌えばいいのにそれでは得られぬようなサービスを求めている。
「何十回の夜」というのはずっと一緒にいてというあなたへの気持ちで「最高のフルコース」とは具体的なあなたと得たい対価。
倒置法になっていてさらにその形が崩されている。
「あなたと最高のフルコースを食べたいけどそれよりも本当は何十回も夜を共に過ごして欲しい」というのが本音なのに彼女は「何十回の夜を過ごしたって得られぬような最高のフルコースを頂戴」と高い位置から相手に要求している。
これを「とっかえひっかえ男を替える女の話だ」と普通の人は思うけど違う。
なぜかと言うと「何十回の夜を過ごしたって得られぬような最高のフルコースを頂戴」の後で自分の存在を否定し尽くして「何百回の夜を過ごしたって得られぬような最高のフルコースを頂戴」と会う数を増やしているからである。
この歌は「君を泣かすから」とか「君以外会いたくない」とか弱気なことを言いながらサビで「何十回の夜をを過ごしたって得られぬような最高のフルコースを頂戴」とあなたに高度な要求を提示している。しかし、「大好き」とか「ありがとう」とか「君に恋している」とかの簡単な恋愛の言葉は出てこない。
これを15歳の tuki. @tuki_music_ さんが作ったというのは驚異的で僕の見立てではADOさん @ado1024imokenp が椎名林檎さん @Nekoyanagi_Line 、tuki.さんが宇多田ヒカルさん @utadahikaru のような ポジションになって仲間としてライバルとして切磋琢磨していくのではないかと思うがどうだろうか。
tuki.さんの『晩餐歌』は初めて宇多田ヒカルさんの『First Love』を聴いた時のような衝撃があった。ここまで分析してみてやっぱり令和の恋愛観を表した歌だと思う。会わなくてもいいからフルコースを頂戴。フルコースをくれるなら愛している。
すごい等価交換だ。これからの恋愛歌のスタンダードになるだろう。