#102 名前も知らないけれど、生きて欲しいわけです。
ふとメンタルが落ち込んでしまって「もう人生どうでもいいや」とか先のことが考えられなくなってしまった時。
自分なんてと卑下をして「寂しがるのは親と友達くらいのもんだしな」と数少ない人の顔が浮かんだり浮かばなかったりするんです。
もし僕にメンタルが病んでる友達がいたら、きっと最悪のケースまで勝手に考えて「死ぬほど」心配すると思います。
でも、自分のこととなると軽く考えてしまうのが不思議とわがままにも感じるわけです。
タイトルにある名前も知らないというのは、僕のバイト先のお客さんの話です。
僕は、家の近くのコンビニで大学時代に4年。
そして3ヶ月の社会人生活、6ヶ月の休職生活、3ヶ月の無職生活の計1年を経て出戻りで今も働いています。
計5年も同じところに務めていれば仲の良いお客さんや話はせずともお互い顔見知りのお客さんも多くなります。
コンビニでバイトをされたことがある方なら分かるかも知れませんが、お客のタバコを覚えるという行為は結構仲良くなるには有効的な手段です。(一部嫌がる方もいたり...という話を耳にしますが。)
今日も1人の常連のお客さんが買い物に来ました。そのお客さんは、男性の50後半〜60前半くらいの見るからに優しそうな方でいつも決まったタバコと甘いものを買って帰る。そんな方です。
僕を見つけるとレジに来ながら指でタバコの個数を教えてくれます。
「最近涼しくなってきたね」とか
「この新商品のスイーツが美味しかった」とか
「どのスイーツが人気なのか」とか
いつもたわいもない会話を少しだけします。
今日もいつも通りタバコの個数を聞こうと待っていると小さな声で「タバコ辞めたの」って言われました。そうなんですねと返したら同じくらいの声量で「癌が出来ちゃったみたいでさ。」とお腹らへんをさすってそう言われました。「まだステージ1だから手術すれば切り離せるくらいなんだけどさ。だから禁煙しないとなんだ。ごめんね笑」と続けて言われました。
「癌」と聞いた瞬間心がキュッとなったのが分かりました。あまり身近な人で癌になった人がいないので正直ステージ1と言われてもどれくらいの軽傷さなのかは僕には分かりません。きっと大丈夫なんだろうけど、心配なのには変わりないです。
「用意されちゃうと吸いたくなっちゃうからさ笑」って言われたので、「全然大丈夫ですよ!タバコを売る素振りを癖でしないように気をつけますね。どうかお大事に。あと、禁煙頑張ってください!」と言葉を選びつつできる限り不自然じゃない笑顔を心がけてそう伝えました。
よくよく考えたらその方のお名前も知らないんです。どんな仕事をされてる方かも年齢も何も知らないわけです。でも、病気の話をされたら凄く心配になるし、癌と聞くと悪いことまで考えてしまったりもするんです。その方がお店に来なくなるかもしれないということが売上とかそういうのではなく不安になるんです。
居なくなると悲しむ人って誰にでもそれなりにいるんじゃないかなって思いました。
家族や友達、大切な人だけじゃなくて普段会ってるそれほどの関係値じゃない人だって人によってはいると思います。名前も知らないけど、よく会う人。仮に亡くなったとしてもその事を知る由もない関係値の人でさえ、居なくなると悲しくなることだってあるんだろうなとそんなことを思いました。