柔らかく静かな象と、固く轟音をあげるショベルカー
昨日は日曜日だというのに遅くまで仕事をしていた。
がんばりたい仕事だったし、スケジュールをできるだけ巻こうという会社の方針もあった。
でもなかなかしっくり来ずに、落ち込みながら眠りについた。
そしたらそんな気分になる夢を見て、翌朝5時半に目が覚めた。
朝一番にパソコンを開くのは気が進まない。疲れてしまうから。
なので仕事が気になったけどパソコンは開かず、テーブルに置いてあった夫の読みかけの星野道夫さんの文庫を開く。
いつも心の中に月のような存在に思いを馳せている。
声を聞いてくれるもの。澄んで照らしてくれるもの。真理を教えてくれるもの。そんなものの象徴みたいな存在を願っている。
星野道夫さんの言葉は、そんな心の月のような存在に近い気がした。
静かに自然を見つめるまなざし。
雨が降って薄暗い朝、窓際に椅子を持って行き、手元の照明をつけて瞑想するような気分で本を開く。本の先には、アラスカの自然とそこで思いを巡らす星野さんの言葉が広がっている。
本を読んでいると、お風呂の換気扇の音が妙に気になってくる。24時間つけっぱなしの換気扇は普段は気になることは無いのに。
オフにできないように貼ったシールをはがして、換気扇をオフにして、本の中に広がるアラスカの世界に戻っていく。すると今度は冷蔵庫の音が気になってくる。
こんなに色々な電化製品に囲まれて暮らしていたのだとふと気付いて、それらが全くない場所に身を置く時間を経験をしてみたい、と思う。朝の光があり、鳥の鳴き声が聞こえ、本を開く時には静寂がある世界。
昔動物園に行った時に、象の飼育員さんが、像は4トン近くあるけど、歩く時は静かなんです。4トンのショベルカーが静かに動くことはできないけど、4トンの像は静かに歩くことができるんですね、と教えてくれた。木を倒し土を削る固く大きな音を出すショベルカー。大きな体を静かに揺らし木とともに暮らす象。
最近わたしはふたつの世界で揺れている。パソコンやインターネットが欠かせない仕事をしながら、電子機器がない自然の世界に心を寄せている。それらの間で上手にバランスを取れる存在になりたいと思う。