「絵画ってなんかよくわかんない美術館疲れる」という人にも
〜好きポイント〜
・17つも異なる作家が書いた物語が入っているのはお得すぎる!
・美術鑑賞という行為が苦手、美術館疲れるだけ、という私のような人で
も、美術への造詣を深める良いきっかけになる!!
・この絵からこの物語...?となるのもまた一興。
〜出逢い〜
ネットニュース?に出ていたのをたまたま見て、面白そう!と即買い。
こちら、日本語版も「短編画廊 絵から生まれた17の物語 (ハーパーコリンズ・フィクション)」として翻訳・出版されている。
簡単に言うと、画家Edward Hopperが描いた絵に17人の作家が物語をつけ、Lawrence Blockがそれをまとめた本。
英語版はまさかのペーパーバックではなく、ゴリゴリのハードカバーでletter sizeくらいあるので、図鑑のように読める。そしてなんだか表紙の触り心地が気持ちいい。
胸を張って言えることではないが、私は美術館とか絵画鑑賞というものがけっこう苦手。絵を見ても、「人がいる」「天使がいる」「りんごがある」という感じで、それ以上でもそれ以下でもなかったりする。「鑑賞者次第」の幅が大きすぎて、疲れてしまう。
「昔々あるところに、おじいさんとおばあさんがいました」っていう情報しか得られてないような感覚。
「え、そんでおじいさんとおばあさんはどうしたの?????」ってな。
この絵が描かれた時代にはxxxがあって〜とかこの絵のモデルはxxxでyyyをした人で〜とか、教養があれば楽しいのかもしれないけれど。
美術館も、「歩いて、立ち止まって、後から迫り来る人を横目で見ながら追いつかれる前に移動して、絵をみて、また移動して」という行為が単純に疲れるし、美術館の見張りの人(語彙)の目も気になる。単に隙あらば座っていたい、できれば寝転がりたい、という私の体力のなさと怠慢が原因かもしれないけれど。
でもそれは別に「絵画なんて」とか思っているわけではなくて、画家はすごいと思うし、できれば私だって絵画を面白く鑑賞したい。
絵画を見た時に「これはxxxの作品だね」なんてカッコつけて言ってみたい。
そんな私にぴったりの本がこちらでした。
これなら、「昔々あるところに、おじいさんとおばあさんがいました」の後を著名な作家が引き継いで、語ってくれる。どうもありがとうございます。
17つもお話があるので、墓場まで全部を覚えていることはできないけど、私が好きだったお話3つについて書き留めておこうと思う。
1つめは、Nicholas Christopherによる"ROOMS BY THE SEA"(海辺の部屋)。
海辺の家で、部屋がどんどん知らぬ間に増えていくという不思議な話。
ストーリーがすごく好きだったというわけでもないのだけれど、なぜか絵のイメージと共に強く記憶に残る。
ただそれだけ、でもただそれだけのことがとても良い。
美術鑑賞を楽しめる人というのは、こういう感覚を絵を見ただけで抱けるのかな、と羨ましくなる。
2つめは、Warren Mooreによる"OFFICE AT NIGHT"(夜のオフィスで)。
田舎から身ひとつでニューヨークに出てきた女性が働き口を見つけ、充実した日々を送っていたが、ある日事故で亡くなる話。
夢を叶えて独り立ちした女性には、悲壮感がない。
やりたいこともできずに居たくもない場所で100年生き永らえるよりも、ずっといい。
嗚呼、私はMargaretのように自分の足で立って、一人で新しい世界に飛び込んでいく女性が好きだ〜〜〜
3つめは、Kris Nelscottの"STILL LIFE 1931"(1931年、静かなる光景)。
黒人差別が根強かった時代に、自分ができる方法で闘おうとした女性の話。
何かに立ち向かう時、自分の命まで投げ打って闘うことってなかなか難しい。
本当に闘っている人は、自分の微力を呪う。そして、それでも闘い続ける。
やはり強い女性の話が好きだ。
サスペンス・ミステリー好きとしては、Stephen Kingの"THE MUSIC ROOM"(音楽室)とか、Jonathan Santloferの"NIGHT WINDOWS"(窓越しの劇場)もゾワゾワハラハラしながら読んだ。
とにかく盛りだくさん、ゾワゾワハラハラドキドキしくしくほろりなどしながら楽しめる一冊。
そしてこれからEdward Hopperの絵を見たら、「Edward Hopperだね」とドヤ顔で言えそうです。やったあ。