- リスキリング vol.20 - "If"が招いた大トラブル
誤解の話を誤解しないように
今回は誤解から起こったトラブルの話です。トラブルが勃発して授業がグズグズになっちゃって、教授が今日はもう終了!って。
なお、タイトルに書いてある "If" が誤解の原因と言うより、"If" を聞き逃したことがトラブルの原因のひとつだったって話なんで。すみませんね、誤解の話をするのに、私が誤解を誘因するようなことやってて。
さながら豪傑、馬さん
主人公は馬さん。前回あったカンペのエピソードもさることながら、例えば授業中、話がつまらなくなった瞬間、大きなバッグを机にドンッと置いてその影でスマホゲームやり出すとか。かと思ったら、パッと顔を上げて、公式の解釈を質問し始めたり。えっ、聞いてたんかいって。またある時はバッグからブドウを房ごと出して、食べながら授業を聞いてたり。味があるでしょう。
大柄で恰幅の良い馬さん。ボーイフレンドは彼女の半分くらいの幅の"か細い"子。1.25+0.75=2みたいな。並んで歩いてるとなんとも釣り合ってます。それは微笑ましい。イメージは横山光輝の三国志とか水滸伝に出てきそうな豪傑、いや女傑です。人付き合いもLove or hate で、キャラが立ってます。同胞にも態度はキッパリ。私はよく中国のお菓子をもらいます、あんたも食べなよって。日本語を勉強したことあるんだって、日本語でちょっと話した後にガハハと屈託なく笑う顔が好きです。
もっとも彼女、優秀さが売りではないかもしれません。(とは言っても英語は私よりも達者です) 一緒にやってる企業分析の課題があるのですが、彼女はSWOT分析という定番手法の一本槍。お題の解決として間違ってはないんですが、授業で習った手法を使うという指示があるから、それ以外の方法がもっとあるでしょうって話したのですが、"これでできないことはない"って言って聞かない。私の槍で刺せないものはないって感じ。SWOT職人。ゲームの三国志で言うと武力90、知力30くらいのバランスです。
大混乱を招いた誤解
ここからが本題ですが、そんな馬さん、思いが余って。。。それは授業で消費者が物を買う時の趣向の話をしていた時でした。
化粧品を買う時にどんな基準がある?と言う話から、口コミってあるよね〜って流れ。そしたらある生徒、どこの国とか背景はわかりませんが、消費者向けの口コミは調べればステルス(ヤラセ)がわかるところまで行けるけど、法人向け製品って難しいですよねって話をして。
その彼が続けて、 "もし"、中国製のEVのエンジンのクオリティが低いとしても、消費者はそれに気づけないと言い出して。私は最初のIfを聞き落としていて China、EV、 Engine、low quality 、、、ん、何危険なこと言い出すだ?って言葉だけが頭に残りまして。つい、そんなことないだろうって周囲の泰さんや朱さんに話しかけるや否や、後ろの席の馬さんが挙手。
馬さんの激昂
彼女は中国をバカにされたと激怒。大きな声で、証拠出せ、証拠!!って。どうも彼女も"If" を聞き逃したっぽくて、発言者や教授が、仮にだよ仮に、中国のことを悪く言う意図はないよってなだめても、振り上げた拳をどう降ろせばいいのかわかんなくなっちゃって。しばらく平行線。私も、"あ、Ifの話か"ってわかりましたけど、時すでに遅し。
クラス全体がただならぬ空気に包まれちゃって、そのまま授業は進めたけどディスカッションも全く盛り上がらず、結局早めにお開き。教授達は改めて馬さんのフォローをしました。ちょっと後味が悪い。発言した彼と馬さんは会話してて、なんとかなったみたいですけど。あとから聞くと、彼はやはり中国に対する知識が正確ではないものがあったようです。
これは実に難しいですが、それでも誤解を招くコミュニケーションは気をつけないといけない。無知が原因で悪意がないケースはこれに限らず多いんじゃないかと思います。
ちなみに、中国チームも一枚岩ではない。隣の席の秦さんは、"BYD(中国のEVメーカー)はクオリティ低いわ"って言ってたし、後ろの席の朱さんも"中国製品ってネガティブに言われちゃうよね"っ苦笑い。ただ2人ともセンシティブになる話題を言うべきじゃないとも言ってました。(この2人は中国のことをよくディスる) 一方で授業の後、馬さんの元に3人くらいが近寄ってなんか言ってたから、アレは良くぞ言ったって話じゃないですかね。実際の工業力、技術力の話は、そりゃご存じの通り、20年、30年前ではない訳で。世界は知っています。私たちが今、30年以上前の評判でメシを食ってるように、彼らもすぐなります。
こういうのは他人事ではない
しかしながら、無知が招いた気まずい空気と言うのは他人事ではありません。私もパキスタンの人と、ガラムマサラというスパイスの話が出た時に、あ、それってカレー作る時に使う"インド"のスパイスでしょうって言ったら、いやいや、ガラムマサラはインドのものじゃないって。こっちからすると、あっそうなんだ、ってくらいなんですけど、向こうはそう感じない場合があるんでしょうね。インドとパキスタンは違うって話になって。一応印パの成り立ちは知ってるし、揉め事があることも知ってるけど、さらに細部となると、そこまで思いつかんかったな。
知らないことはある
誰しもそうですけど、百科事典じゃないんでね、知らないことのひとつやふたつはあります。それ故、発言が意図しない方向に行くことはやっぱりあるんですね。なので、"ごめん、知らなかったわ。もっと知る必要があるね。"ってサッと言える、ある意味もうスキルです。言えるようにする。日本語だと礼を失しましたって"失礼しました"っていい言葉がありますけど。
それと、そもそも、お前の国だせぇよなって言われていい気分しないでしょう。相手との距離感がキッチリつかめてると皮肉をうまくセンスのよいジョークにできますけど、かなりの上級テクです。
自分が言われてイヤなことは相手にも言わない、国際社会でも小学校3年生くらいで習う道徳の教えは通ずるのです。