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蒸し問答 サウナで遊ぶな

「あと何分?」「4分」「えー無理やろ」「俺はまだ行けるわ」

仕事の始まりからサウナ行くぞって意気込んだときに限ってこういう環境にあたってしまうんだよなー。

「このあとどうするの?」「そこの水風呂に入って、椅子で休む」
「えー無理やろ」「修行やん」

こんなご時世なんでそもそもサウナ内で会話をしてほしくないんだけど、何より嫌なのがサウナを小馬鹿にしてるところなのよ。少なくともいかにもサウナーですって感じ醸してる俺がいるところでそういう会話ができるのは若さがなせる技なのかもしれない。

「無理だわ。出よう」「根性ないなぁ」「水風呂マジではいるの?」

サウナに平穏が訪れた。大きなガラス窓から見える水風呂では彼らによって無音の喧騒が繰り広げられていた。

いかんいかん。俺はサウナにポジティブになるために来ているのだ。目の前のネガティブは汗と一緒に流してしまおう。

サウナ人口が増えることは喜ぶべきことだし、彼らにもサウナを好きになってもらいたい。ただ、サウナを"楽しむ"ことととサウナで"遊ぶ"ことは全くの別物だ。君たちが興味本位でかき乱した10分は誰かが今日一日楽しみにしていた至福の10分かもしれないのだ。

ポジティブになろうとすればするほどネガティブな感情が湧き出してしまう。そんなとき、サウナ室にスタッフさんが入ってきた。アウフグースの時間はまだ先のはずだが。

「サウナ室の湿度と温度を上げさせていただきますね」

来たっ…!このサウナでゲリラ的に発生する温度調整ロウリュだ。ややぬるめで蒸気重視のこのサウナが灼熱の地獄サウナに変わる瞬間。熱めのサウナが好きな俺にはたまらないイベント。

ジュージューとサウナストーンが鳴いている。鳴け!もっと鳴け!俺の身体からネガティブを全部絞り出してくれ。

外を見ると先程の若者たちが物珍しそうにこちらを見ている。そうだ。これがロウリュだ。俺のサウナは誰にも渡さないぞ。これが俺の生き様だ。

ネガティブを脱ぎ捨てたサウナーはサウナを後にした。


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