【コンサルタントの読書log】P/Lだけじゃない事業ポートフォリオ改革 ROIC 超入門(松永博樹 著|伊藤学 著)
こんにちは。
本日は最近読んだ本から得た学びや気づきを共有する読書logです。
今回の書籍
P/Lだけじゃない事業ポートフォリオ改革 ROIC 超入門
松永博樹 著|伊藤学 著 - 日本能率協会マネジメントセンター
概要
ROICは、企業が投資した資本に対して生み出した利益の割合を示し、運用効率を評価する指標です。
下記のAmazonの商品説明のとおり「社員全員」向けの内容となっているため、概要や考え方、目的(なぜROICなのか)についてわかりやすく説明されています。
実際にROICをがんがん活用していくような、たとえば事業別ROICを算出したり、目標設定をして管理したり、といった実務で活用していく方には物足りない内容かとは思います。
ただ、ROICとは何ぞや?をまず知りたい!という方には、図や会話形式などで読みやすく説明されているので、イメージを持ちやすくわかりやすい内容になっています。
おすすめな人
ROICをはじめて学ぶ方
会社がROICを経営指標に取り入れているが、自分の実務に直接関係していない(と思われている)方
株や投資のためにROICの概要やROEやROAとの違いについて知りたい方
気づき・学び
ROIC(効率的に稼げたかを測る指標)が注目されるようになった背景
投下資本という言葉がピンとこない場合は、「元手」とか「投資されたお金」とイメージしてもらえればと思います。
何かビジネスをおこすためには、誰かがお金をそのビジネスに提供しています。企業した人が自身のお金を提供していることもあれば、銀行などから融資をうけていることもあるでしょう。株式会社であれば、株主からも金を出していただいています。
そうなると、そのビジネスにお金を提供してくれた人は「そのお金をうまく活用してどれだけ稼げたか」気になってきますので、それを管理する指標としてROICが利用されています。
そもそも、経済が右肩上りだった頃は売上を追いかけていればよかったが、売上が伸びにくい時代になるとコスト削減による利益の確保が重要になってきたとのこと。
では、成長を目指すにはどうするか。
無駄は削ぎ落としつつも、グローバル化や新しいビジネスに挑戦するなど、新しい投資が必要になってきます。
限られた経営資源をいかに有効活用して、ビジネスを拡大していくかが経営課題になり、ROICのように投下資本に対してどれだけ稼げているかを管理することが重視されてきているのです。
ROICが事業の管理に向いている理由
ROICは以下の計算式で求められます。
$$
\boxed{\ ROIC(投下資本利益率) = {税引後営業利益 \above{1pt} 投下資本}}
$$
分子は「税引後営業利益(=営業利益ー法人税)」となっており、営業利益(本業での儲け)から支払うべき法人税を差し引いたものになります。
ROICに似たものにROE(=当期純利益/自己資本)(=株主資本に対してどれだけ稼いだか)がありますが、ROEの分子が当期純利益で営業外損益や特別損益を含んでいるのに対し、ROICは営業外損益や特別損益は含まれません。そのため、本業・事業の稼ぎを管理するのに向いているとされています。
続いて分母ですが「投下資本(=事業用資産ー仕入債務)」となっています。
ROICに似たものにROA(=営業利益/総資産)(=総資産に対してどれだけ稼いだか)がありますが、ROAの分母が総資産で非事業用資産も含まれているのに対し、ROICでは非事業用資産は含まれません。そのため、本業・事業に投下した資金に対して、どれだけ稼げたかを管理しやすくなっています。(なお、ROICでは仕入債務を控除していますが、これはまだ支払っていない=投下していないからです)
また、ROICは会社全体だけでなく、事業別に合理的に算出しやすい指標です。ROEの分母の自己資本はもともと事業別に集めた資金ではないため、事業別に評価することは難しいです。ROAの分母の総資産には共通的に使用している資産や非事業用資産もあり、こちらも事業別に評価はしにくくなっています。
ROICの改善を目指すのはどこまでか
ROICの改善に注力しすぎると、投資をしなくなってしまうというデメリットがあるとのこと。
投資をすると、分母の投下資本は増えるものの、その投資による利益が得られるにはタイムラグが発生し、一時的にROICは悪化してしまいます。
しかし、成長するには、投資は必要です。
そのため、中長期的な視野でみていくことを改めて認識しました。
さいごに
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
余談ですが、半年前くらいから参画させていただいているプロジェクトで、経営計画の策定などをご支援させていただいています。
新しいプロジェクトに入る前、頭の整理をしたくこちらの本を読ませていただきました。とても読みやすくわかりやすかったので、同じ案件に入っているコンサルの若手の方に、ROICについて勉強するのに良い本はないかと相談されたので、こちらの本をおすすめしました。
過去に読んだことがある本や、学んだことがあるトピック、理解していると思っている内容についても、改めて本を読んだり学んだりすると、その度に何かしらの気づきがあります。
知っていると思っていたけど忘れていたことや、ちゃんと理解できていなかったこと、文字の知識として知っていたけれどこれまでの経験や事例と紐づいてより解像度高く理解できた、など。
会社員時代も勉強はもちろん必要でしたが、フリーランスになって自分が提供する価値への責任を強く意識するようになり、また自分をアップデートし続けないと自分の市場価値が逓減していく危機感もあり、より一層勉強の必要性を感じています。
読んだ本でおすすめなもの、内容をアウトプットしておきたいものについては、今後も不定期ですがご紹介していきたいと思います。