熟れる
日々の中に取り残してしまった面影。
私の中に未だある体温。
足が向く方へ歩くのは必然と人は言う。
私は言葉と生きていたかった。
言葉と息がしたかった。
そう思っていつも何かを綴った。
意味など二の次で夢中で綴る事を
何年も続けた。
熟れてゆく。
日々のなかで、
確かに熟れていた。
見慣れた場所で春の花が咲きだす。
簡単に季節はめぐってゆく。
重苦しい御託は捨てて、ただ、私は春のにおいを
楽しみにしていようと思う。
風を肌で感じる事はなくても、
確かに春風は吹いていた事を私は知っている。
だから、春を待てるのだ。
穏やかな日の光を浴びて
陽だまりを歩きわらえるひとに
人生になれるように、私は熟れた世界の
中をみやる。
食べ損ねる事がないようにと。
食した。
日々の中に取り残してしまった面影。
それはなんだろう?
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