アラム・ハチャトリアン(1903/5/24 - 1978/5/1)の協奏曲的作品
ピアノ協奏曲 変ニ長調(1936)
出世作、定型的な三楽章構成の中に彼一流の楽想が溢れる名作。二度音程をぶつけるのはファリャのピアノ曲「べティカ(アンダルシア)幻想曲」の様に四分音程のニュアンスを意識しているのだと思う。弦楽器においてもハチャトゥリアンは律儀に、エネスコの様な四分音を用いない。第二楽章にフレクサトーンが中央アジアの夜の味わいで、これを省略しちゃうのは残念。若きフィリップ・アントルモンと若き小澤征爾で。
ヴァイオリン協奏曲 ニ短調(1940)
メロディアスでおそらくは一番ポピュラーな名作。初演者オイストラフは第一楽章のカデンツァを自ら作曲していてその演奏と共にポピュラーですが、私はレオニード・コーガンとモントゥー盤が好みでそちらはハチャトゥリアン自身のカデンツァです。ランパルらのフルート編曲版何てのも。
チェロ協奏曲ホ短調(Cello Concerto)(1946)
残念ながらあまりポピュラーではないですけどいい曲なんでもっと演奏されても良くないですかと思うんですが…戦争の記憶が反映されたか暗い影を帯びており、第一楽章には「ディエス・イレ」引用あり。緩徐の第二楽章からアタッカでフィナーレへ。やっぱりアンドレ・ナヴァラがカッコいいす。
ヴァイオリンと管弦楽のためのコンチェルト・ラプソディー(1962)
三曲のラプソディは概ね序破急、即ち、
導入部 〜 独奏のカデンツァ 〜 緩やかなテーマと和声的な展開 〜 急テンポのテーマとその対位法的な展開 〜コーダというか大団円(二つの主題が変容融合)
って構成だす。これってアルメニアの吟遊歌手(アシューグ)の形式なんだそうです。
人気のヴァイオリン協奏曲はやや明るすぎた嫌いもあり、こちらは妖しい魅力から少々能天気な終結へ。そういう振り幅も魅力。初演者コーガンの演奏を念頭に作曲したそうです。
チェロと管弦楽のためのコンチェルト・ラプソディー(1963)
これはもう初演者ロストロポーヴィッチの独壇場。凄え。
ピアノと管弦楽のためのコンチェルト・ラプソディー(1965, 改訂1968)
これももっと演奏されていいと思います。模擬四分音程があ… 音源はナクソスに頼るしかないんですがこれなかなかの素敵な演奏なんで。
アルメニアの吟遊詩人アシューグと言えば、という代名詞がサヤト=ノヴァなんだそですがこの名前、びびびっとくる方もちろんいらっしゃいますよね。