盆踊り

幼稚園生の頃、夏には近所の公園で行われる盆踊りに行きました。

いつもより早くお風呂に入り、夕飯を急いで終え、祖母が仕立ててくれた浴衣を着て出かけました。
近所の友だちと連れ立って行くのですが、踊っているうちに彼らの姿は見かけなくなりました。踊りの輪は公園を出て、町内を練り歩きました。途中酒屋さんが休憩地点で、そこでコップに入った水を配ってくれました。その後も私はただ一人最後まで踊り続け、満足して家に帰りました。

家族は私が一人になっても踊り続け、町内を練り歩いたことは知りませんでした。後年そのことを話した時は驚いていました。
自分でもなぜそんなことができたのかわかりません。後にも先にも盆踊りを踊ったのは幼稚園生の時だけ。引越しがあったり、環境の変化などがあったにせよ、その後、盆踊りどころかダンスを含め、踊りたいと思ったことはありません。

あれからずいぶんと時が流れました。いろいろな夏を過ごしてきました。
好きな人と過ごした夏やもっとドラマチックなこともあったはずなのに、今でも夏の思い出というとこの時のことを思い出します。
不思議なことですが、酒屋さんで水を飲んでいる浴衣姿の自分が脳裏に浮かぶんです。見たことなどあるわけないのに。
季節にまつわる出来事や音、匂いをよく覚えているのは7歳くらいまでのことかもしれません。風鈴の音や鈴虫の鳴き声も、その頃に聞いたことが今でも甦ります。人の記憶って謎です。



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