爆食女王

生理前の食欲は
どんなフードファイターも蹴散らす湘南暴走族
冷蔵庫の中身を空っぽにする爆食女王は
これでも足りぬわオホホホホと
華麗な俊足でスーパーへと走る
美味しいとか不味いとかは二の次で
おなかをより満たせそうなものを
次々カゴにぶち込んでいく
ああ私何やってんだろうと
心では泣きながら
完全に主導権を持って行かれた体の本能に
抗う術は全くない
会計の値段にまた涙しながら
家に着く前に路上で貪りたい衝動にさえ駆られる
そこはお姫様だもの
そんな犬みたいに下品な真似はできなくてよ
自分の部屋に持ち込んだ大量の総菜を
誰の目もないのをいいことに手づかみで次々口へと運ぶ
添加物の匂いなんて気にしちゃいられない
私のこの無尽蔵の食欲を抑えてくれ
もう自分ではとっくのとうに制御不能
近所にある喫茶店の名物のジャンボパフェ
たしか5人前とか書いてあったけど今なら楽勝
山ほど買った総菜が気づくときれいに消えていた
まだ足りないわ
階段を降りてカップ麺にお湯を入れに行く
二つくらいいっぺんに平らげるだろうから
お湯は多めに沸かしたけど
待ってる時間がものすごくもどかしい
今さっき爆食したはずなのにもう口寂しい
やっとお湯が沸いた
火傷なんかどうでもいいと急いでカップ麺に注ぎ入れる
これからがまた長いんた
たった3分が永遠のように感じる
無の境地に入ろうとしても
食欲に征服された我が王国に
坊主などいない
2分半で限界が来たのでちょっとくらい固くてもいいやと
二つのカップ麺を交互にすする
美味しいか不味いかなんて今は関係ないんだ
私を満たしてくれるものであれば何だっていいんだ
カップ麺を平らげると少し胃袋が落ち着いた気がした
そりゃそうだ
どんだけ食ってると思ってんだよ
でもあと2時間もしたらまた我慢ができなくなる予感がする
そしてそれは見事に当たるだろう
生理前の爆食女王に満足の二文字はない
もうやだよと心では泣きながら
逃れることのできない支配に
ずぶずぶと飲み込まれてゆくだけ
こんな日々が1秒でも早く終わることを
涙ながらに祈りながら


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