ゲームの楽しい成長システムを作るための基礎知識と考え方
ゲームにおける『成長システム』って、めちゃくちゃ汎用的で大事な要素だったりすると思うんですよ。
RPG的な成長要素があるゲームは今やアクションゲームとかにも標準装備されていたりしますしね。
ところがですよ。
いざ、自分のゲームを作る時に「どんな成長システムにしよっかな~」と思う時にですよ。調べてみてもぜんっぜん情報が出てきません。
例えば「ゲーム 成長システム」や「成長システム 作り方」でググってみると、出てくるのは
③はまだいいんですが、「正直知りたいのはそこから先……!」となったり。(知識も重要だけど、考え方やバランス調整の話なんかは出てこない)
なんかこう、色んなゲームに活用できる重要な要素について、雑に調べていい感じの情報が出てこないのってね。ゲームデザインの記事を書く私にとっては超チャンス あんまりいい状態じゃないよな~って思うので、この機会に色々とまとめてみようかと思います。
ほら、ゲーム業界の発展(建前)のためにもね?邪な気持ちは一切ないですよ、はい。
ということで、これから目次がズラっと並びますが、基本的には
の2つに大きく分かれます。
①から順に読んでもいいですし、気になる所だけつまんで読んでも良いと思います。その辺は好きにしてください。
◆成長システムを作る時の考え方
はい、それではですね、冒頭で
みたいな事を言ったんですが、それとは違う話をします。
いきなり予定が狂って自分でもびっくりしました。
知識をウダウダ説明する前に、前提になる考え方とかを色々と書きます。
◇成長に対してどう「遊び」を作るか
昔のRPGって「レベルアップ」で完結するのも多かったわけですよ。
これが基本でした。(今も基本中の基本ではありますが)
これは成長していくこと自体に面白さはあっても、育成すること自体には「遊び」が少なくプレイヤーの介入要素は薄い状態です。
それに対し今はスキルツリーだの何だのがあるのが当たり前になっています。
のが今の基本。
つまり成長システムに対して、育成すること自体に「遊び」をもたせているのが当たり前になっているのが今の時代なわけです。
単純にそうした要素がある方が楽しいってのもありますしね。
なのでこれから「成長システムを考えるぞ」って時には、
というのが、考える軸になるんじゃないのかな~と思います。
◇必ず「遊び」が必要なワケではない
ただし、「遊び」を作るのが必ずしも最適解ではないです。
例えばユニコーンオーバーロードなんかはかなりの高評価を得たゲームで、私もゲームデザインを分析した記事を書いてますが……
2024年のゲーム大賞で「優秀賞」も得たこのゲーム、キャラの育成自体はほとんど「レベルアップでスキル習得」というレガシーなシステムで完結しているんですよ。(クラスチェンジもあるけど後半のキャラにはない)
でもこのゲームは、そうした方がいいゲームなんです。
なんでかっていうとキャラ数もクラス数も多いので……1キャラ1キャラに「遊び」を作るとプレイヤーもすんごい大変だから。
(なにせ最終的に50キャラがスタメンになるゲームですし)
そしてこのゲームの面白さの核はそこではなく、育成の遊びを作りすぎない方が適しているわけです。
どの特徴のキャラをどう組み合わせて運用するかを考えるゲームなので、キャラの(クラスの)数が多いなら、キャラの中で育成の幅を持たせてもややこしい上に面白さへの効果が薄い。
またそうしたゲームでなくとも、遊びを作ろうとして色んな選択肢を用意しすぎると、バランス調整が難しくなります。
テストしなきゃいけないパターンも増えますし、同じレベルでもユーザーの育成の上手い下手でゲームの難易度が大きく変わったりもしますし。
なので「遊び」を用意した方がプレイヤーは喜びますが、単純にゲームバランスの完成度を高めるならぶっちゃけ「遊び」の要素は少なくした方がやりやすいです。
そういった話も踏まえて、これからする話を読んでいただけるとこの記事の内容をより役に立てやすいんじゃないかなと思います。
◆知識編①:成長システムの汎用パターン
まずは全体像をつかむために、よくある成長システムを列挙しつつそれらの特徴を考察していきます。特徴が分かってないとね。効果的に利用することも、応用して新しいことをするのも難しいので。
基本的なパターンを網羅していると思いますが、ここに載っていないシステムもいっぱいあるのでそっちは各自勝手に分析してもらえれば。
今さら羅列されなくても知ってんよぉ!って人は読み飛ばしても大丈夫です。
◇レベルアップ型
これはもう知らない人はいないレベルの話ですね。レベルです。
経験値を溜めてー。一定以上になったらレベルアップしてー。
能力が上がってスキルを覚えて……
レベル制のいい所は分かりやすさです。
強さの指標として非常に分かりやすい。
とか。
実際に戦闘能力を作るのは「攻撃力」とか「防御力」とかの個別パラメータだったりしますが、それらを個々で見ても指標としては分かりにくいです。
しかし各キャラ共通の、色んな強さをひっくるめた指標として「レベル」というのがあれば、非常に分かりやすく扱いやすくなります。
「経験値」という存在と、「レベルアップでパラメーターが上がる」という話については別の項で説明します。次にいきましょ。
◇共通ジョブ型
何だかんだで昔からあって、何だかんだで今でもけっこう使われているパターン。戦士とか魔法使いとか、何かしらのジョブ(クラス)をキャラに設定して、設定したジョブに応じた成長をします。
とかですね。
次に説明する固有クラス型と違うのは、キャラ等でジョブが固定化されていない所です。
かわいいあの子を脳筋戦士タイプに育てることもできれば、ガチムチなおっさんを魔法使いに仕立て上げることもできる。
つまり
という自由度が売りのシステムです。
更に育成の方向性が「ジョブ」等の分かりやすい概念になっているのもポイントですね。これをつけたらこうなる、というのが分かりやすい。
最近のゲームだと『メタファー』のアーキタイプもこれに入りますね。
好きなアーキタイプ(ジョブ)をつけて、戦ってアーキタイプのレベルを上げて、スキルを覚えて……
ただしメリットばかりではないです。
キャラに関係なく好きなように個性をつけられるということは、
という話でもあります。
別に誰を育てても一緒だよね。一応このキャラ使うけど、別のキャラ使ってもまぁ別にそこまで変らんし……みたいな。
好きなキャラを性能に依存せず使えるけど、逆に言えば見た目以外で中々差別化がしにくい。
まぁ実際にはそうならないように、
みたいな形になっていることが多いですけども。
例えばオクトパストラベラーⅡなんかは各キャラ毎に別の「底力」が設定されていて、その効果によって差別化が行われています。
なので、この共通ジョブ型のパターンは
の狭間で上手いことバランスをとったりする必要が出てきますね。
思い切って①に全振りするとかそういう話もなくはないですが。
(なお②に全振りするならこのシステム自体がいらないです)
どちらかというと
というよりは
みたいな考え方の方がこのシステムを活かしやすいかも。
◇固有クラス型
こっちはキャラ専用のジョブみたいなもんです。
ユニコーンオーバーロードはこのタイプですね。
ステータスの傾向や覚えるスキルなんかはこの固有クラスでだいたい決まっています。キャラ毎にできる物が決まっているので、尖った個性にしやすいです。
そして自由にクラスを付け替えたりはできないので、キャラの個性とクラスの個性が不可分。場合によっては「クラス」なんて明言せずにそのキャラの個性という形にもになることもあります。
共通ジョブ型が「このキャラをどうするか」だとしたら、こっちは「どのキャラとどのキャラを組ませようか」みたいな考え方が向いているかもしれません。
◇変身型
別キャラ、別IDのものに変えちゃう。
最も代表的なのはポケモンの「進化」ですかね。
一定レベルまで上げれば「進化」ができるようになって、進化すればステータスや習得できるスキルが変わる。
場合によっては「タイプ」といった個性も変わる。見た目も変わる。
ポケモン以外だと、メガテンの「悪魔合体」もこれにあたります。
2~3体の悪魔を合体させて新しい悪魔を作る。全然違う悪魔になりつつも、合体前の悪魔のスキルをちょっとだけ引き継いだりもできる。
あとは「クラスチェンジ」なんかもそうですかね。
場合によっては歩兵が騎兵に変わったり、個性としては別軸の存在になって特性が大きく変わる事もあります。
変身型の魅力は、やはり見た目や名前・個性が変わることで起きるとても分かりやすい「インフレ感」です。
やっぱり見た目が変われば、ものすご~く分かりやすく「強くなった感」は出せますし。
見た目も変わるので単純なレベルアップとかではやりにくい変化(歩兵→機兵など)もつけられるので、「変化することで世界が変わった」という体験を作りやすいです。
ゲームデザイン上、分かりやすいプレイ目標になるのも良い所ですね。
(このキャラを早くクラスチェンジさせたい、とか)
◇アイテム型
まぁ、これはメインの成長システムとして使われることはあんまりないんですが……いわゆる「ちからの種」とか。
というやつです。これで真面目に能力を上げろ!というよりは、報酬として良い感じのご褒美を与える役割の方が強いかな~と思います。
もったいなくてなんか使えない、とかも多いし。
そうした部分は置いといて、この方法のメリットとしては、
かと思います。②の方が重要かも。
「おめぇの推しのキャラをより強くしていってくれな!!!」という要素を押し出すなら、こうしたアイテムの存在をより強めていくのも良さそう。
サブ的な要素として使われるのがほとんどですが、これをメインにしたゲームを遊んだこともあり(タイトル名は忘れました)、それはゲームとしてちゃんと成立していました。
工夫次第でメインの成長システムに使えなくもないです。
デメリットとしては、キャラの個性が出にくくなってくるところですかね。
個性を無視した形の成長になるので。
そうした部分への対策としては
みたいな形で使用回数制限をつけているゲームもあります。
ユニコーンオーバーロードはそうかな。
あとは色んなキャラに使わせて「成長システムの遊び」として扱いたいなら、
といったやり方をするのもアリです。
制限のかけ方次第でゲームデザインが変化する感じはしますね。
また、アイテムを使ってスキルを覚えるのもあります。
〇〇の魔導書を使えば〇〇が覚えられる、みたいな。
この辺りの効果は共通ジョブ型に近いですかね。
◇ツリー型
いわゆるスキルツリーとかですね。こういうの。
ツリーの名の通り、各項目が繋がり途中で枝分かれしていく事で「ルート」を作ります。例えば
こういうスキルツリーがあったとして、まずはファイアの習得からスタート。全体攻撃の「炎嵐」を覚えるならその前にある「火風」を習得する必要があるのでフレイムを覚えるルートだと繋がらない……みたいな。
ちなみに最後に両方のルートから繋げて「焔嵐」で収束させてますが、この時の条件は2パターンあります。
自由度を重視するなら①で、ある程度制限をかけてしっかり固めさせたいなら②ですかね。(自由なほどいいか、思想次第)
ちなみにスキルツリーの良い所は以下の3点。
前提条件になるスキルはツリー上で繋がってますし、「このルートで行ってみようかな……」と考えて選択していくのは明確に「遊び」として成立する所でもあります。
そして考えて計画を立てるためには分かりやすさもかなり大事(全体像を把握できなきゃ計画もクソもないの)で、そこを満たしているのが優れている点です。伊達に色んなゲームで擦られているわけじゃあないのです。
ただ、複雑な前提条件を置いたり大量の項目を置いたりするのは向いてないかも。例えば遠くにあるツリーの色んな項目を前提条件にしちゃうと、そこから線を引っ張った時に図が凄いことになります。
分かりやすいのはあくまでシンプルな条件(項目の近くにあるものが前提条件になっていて線の数が少ない)だからこそなので、どうしても複雑になるようであれば別のパターンを検討した方がいいかもしれませんね。
なお、スキルツリーは1キャラの中で複数個持っているパターンもあります。スカイリムとかボーダーランズとか。ツリー内での分岐選択だけじゃなく、そもそもどのツリーを育てていくのかから選択が始まっている。
◇盤面型
正確にはこれはツリー型の一部かもしれません。
変形というか、項目数がクッソ多くてもはや樹形図のような「ツリー」と呼べなくなったスキルツリーの成れの果てというか……。
FF10のスフィア盤なんかが有名ですね。
また、ドラクエ11なんかは「パネル」として線で繋がず、隣接したパネルに繋いでいくような形で習得していきます。こっちの方がルートに柔軟性はあるのかな。
どちらにせよ、特性としては項目数の多さを活かして
というのがあります。上記の2タイトルもスキルの習得だけでなく能力UPも成長項目の中に組み込まれています。
あと、向いているのは
みたいな時とか。
ツリー型はどっちかっていうと大きな成長(スキルの習得とか)に絞った時の方が向いてて、盤面型は複数種類の項目を大量配置する時に向いてますかね。これはどちらが優れているかではなくて、どちらに向いた方針なのかで決まります。
ツリー型の方が向いているのに盤面型で何とかしようといたり、逆に盤面型で処理した方がいいのにツリー型で何とかしようとしたりすると、「何か上手くいかねぇな……」となりがち。
◇ランダム選択型
インディーゲームやっている方なら親の顔より見てるんじゃないでしょうか。ランダムで3択の選択肢が出て、選んだスキルを覚えられるってやつ。
『Slay the Spire』なんかで一気に広まりました。
最近だと学マスがやってますね。
あとこれの変形としては、ショップみたいな形で扱う……というのもあります。商品の内容がランダムで変わる。
こっちはランダム3択よりも選択肢の幅を大きく広げて、かつリソース(金)を消費して習得できるタイプ。『BackPackBattle』みたいにこのショップ型のランダム選択に絞っているゲームもあります。
ランダムで習得できるものが変わっていくので、ローグライクや育成シミュレーションのような、何度も最初から遊び直すようなゲームに向いてます。
プレイ中に習得できるものにブレがあり、スキルツリーとかよりは計画性や確実性は薄まりますが……
しかし何度も最初から遊び直すようなゲームは確実性が高すぎると
みたいな話が出てくるので確実性を薄めた方が向いているわけです。
ただし確実性が薄まりすぎると運ゲーになりすぎるので注意。
その点で言えば「ランダムで3択の選択肢が出る」というのはなんというか黄金比に近いものがあります。
自分で選択しているので遊びの要素と納得感もあり、確実性を薄めつつも狙った方向性の成長はできる……みたいな。
◆知識編②:成長の広さと深さ
先ほど色んな成長システムのパターンを紹介したと思うんですが、作ったり調整したりするうえで頭に置いておいた方が良いのが成長システムにおける広さ(横軸)と深さ(縦軸)の話です。
◇成長の広さ(横軸)
まずは横軸の話からいくと、これは
ってところの話です。
広ければ広いほど、色んな選択が出来て遊びの幅も広がります。
詳しく話すと
ですかね。
念押ししますが、狭ければ劣っていて広ければ優れているわけではありませんからね。広くしすぎてバランス調整の精度が落ちて、最終的につまんないゲームになったら本末転倒ですよ。
そのキャラ固有の個性を出したいなら狭い育成を。
そのキャラに対してプレイヤーなりの、好きな個性をつけたいなら広い育成を……て感じですかね。
ただまぁ基本的に、面白いゲームを作るぞ!と張り切っていると広い育成を作ろうとしがち(作れって言われがち)ですけども。
分かりやすく面白そうに見えますし。
◇成長の深さ(縦軸)
次に縦軸の話ですが、これは
ってところの話です。詳しく話すと
こちらも、浅ければつまらないかっていうとそうではないです。
例えばポケモンの進化は縦軸としては浅いけど、成長がハッキリしてて派手なんで面白いですよね。
多くのゲームで採用されている「レベル」なんてのは縦軸の深い成長システムの代表例です。99段階まであったりするじゃないですか。
また数十時間遊ばせるようなゲームになると、こうした縦軸の深い要素は何かしら必要になってきますかね。ソシャゲなんかは特に。
ちなみに例でスキルの強化を挙げたんですが、これは注意しないと
という話になりがちです。レベルみたいなベースとなる所が深い分にはまだ調整しやすいけど、スキルみたいな色んな意味で選択の余地があるものが深いと調整の難易度は上がっていきます。
◇横軸と縦軸を組み合わせて作る
さて、ここまで話した横軸と縦軸の話ですが、これらを組み合わせて分類すると
という形になります。これらに優劣はありませんが……
ただ達成したい目的と違うタイプを選ぶと上手くいかないので、そのシステムで何をしたいのか考えてから作ることをオススメします。
ちなみに1つのゲームに対して色んなシステムで複合的に作られていることが多いです。例えばみんな大好きなポケモンなら
とか。複数の成長システムに対して異なる役割を与えたり、一部を変化させたりして面白さを作っている例ですね。
何にせよ、作ろうとしている成長システムにどの役割を与えたいかは明確にしておいた方が良さそうです。
◆知識編③:成長のコストや条件
ここまでは「どんな成長システムを作るのか」という上での話でしたが、この項目では「どうやって成長させるのか」という話です。
成長させるためにプレイヤーに何を要求するのか。
◇ポイント蓄積型
あるポイントが特定の値まで溜まったら成長するタイプ。
こう言うと分かりにくいかもですが、要は経験値です。王道オブ王道。
経験値が50たまってレベルが3になりました。レベル4になるためには経験値をあと54万獲得する必要があります。みたいな。
キャラに対するレベルだけじゃなく、剣レベルとか話術レベルとかそういう小分けにされた技能に対するものにも使われる事があります。
熟練度的な。剣レベルを上げるには戦闘で剣をたくさん使う必要があるよ、みたいなやつもここに入りますかね。
まぁなんにせよ、特徴としては
でしょうか。
ちなみに経験値も、敵を倒して手に入れるのが一般的ですが
みたいに色んな入手先を作ることが可能です。
大抵、そのポイントの用途が限られているので入手先の方を手広くやりやすい……というのはあると思います。
◇ポイント消費型
例えば、スキルポイントを消費してスキルを覚えるとか。
ショップでお金を払って魔法を買うとか。
特定のキャラを進化させるためには炎の石が必要だとか。
鉄の剣を魔法の剣に強化するには鉄鉱石が5個、魔石が3個必要だとか。
ちからのたねを使えば力が+2されるとか。
ソシャゲなんかで嫌でも目にするやつ。
蓄積型との大きな違いは自由度ですかね。ツリー型とか盤面型とかに使われることも多く、
という形で遊びを作りやすいです。何かを選択するような成長システムではよく使われます。
そしてこっちは入手先を絞った方が分かりやすいですかね。スキルポイントはレベルアップでのみ手に入るとか。
お金みたいな汎用性の高いポイントは入手先が多くあっても問題ないので絶対ではないですけども。
◇特定行動型
特定のイベントで新しいスキルを習得できるとか。
サブクエをクリアしたら、あるキャラの「進化」が解放されるとか。
育成シミュレーションで体力のトレーニングをしたら体力が+2されるとか。
前の2つはポイントや素材を経由しての強化でしたが、こっちはそうした物を経由しない直接的な強化です。
その代わりに何かをクリアするとか、特定の何かを選択するとか、なにかしらの「行動」が成長の条件になっています。
ポイントを使うよりかは汎用性は落ちるんですが、ただ行動と直接結びついているので直観的ではあります。
フレーバーが活かしやすいのはこっちかも。
◇ギャンブル型
成長に確率が影響してくるタイプ。
サガシリーズが代表的ですね。代表的というかほぼこのゲームくらいしかやってないってのはありますけど……
例えば、サガシリーズには一般的な意味での「レベル」がありません。
戦闘終了時に判定が入って、確率で能力が上がります。「愛がアップ!」とか。あとスキルも戦闘中に確率で覚える(閃き)。
ただし完全ランダムではなく、ある程度の指向性はあります。
強い敵と戦った方が能力が上がりやすいとか。
このキャラはこの能力が上がりやすいとか。
このタイプは運の要素も絡むので他のタイプよりも確実性はありません。
ただその変わり、他のタイプにはない射幸心の面白さがありますね。
遊んだことのある人なら分かると思うんですが、偶然に強い技を閃いた瞬間の喜びは普通に覚えるよりも大きいもんです。
また他のタイプのように「計画して、選択する」ことの面白さを出したい場合は、ある程度ルール付けをすると良いです。
力を上げたいなら斧を使うのがいいよとか。この技を覚えたいならこの技を使いなよとか。
◆知識編④:レベルアップ時の能力上昇
あまり特定のシステムに寄った項目は作らないと決めてたんですが……
レベルアップはかなり普遍的なので基礎知識として一応。
レベルが上がって能力が上がるぞ!といっても、ゲームによって上がり方は様々です。知識編②でレベルアップを「狭い成長」の例として出していましたが、仕様次第では広くなったりもします。
大別するとこの3つに分かれますかね。
◇固定上昇
このキャラはレベル10になると力が3上がるぞ、とか。
特定のレベルになった時に上がる能力や1レベル毎の能力の上昇幅があらかじめゲーム側に決められているパターン。
知識編②で説明した、いわゆる「狭い成長」で、特徴もそれに準じます。
つまり遊びは少ないけど安定して強くなる。バランス調整しやすい。
◇割振り
レベルが上がったら能力を3上げることができる。
ただし力を上げるのか、素早さを上げるのか、どんな能力を上げるのかはプレイヤーが選択できる……てやつ。
知識編②で説明した、いわゆる「広い成長」で、特徴もそれに準じます。
自由度が高くて遊びは多い分、極端な成長をさせることもできるのでバランス調整が大変。
よくあるトラブルとしては
とかですかね。
◇ランダム上昇
あまり見るタイプではないんですが、ファイアーエムブレムなんかではよく使われていました。
レベルアップした時に能力が上がる。でもキャラ毎に固定化されているわけでなく、プレイヤーが選べるわけでもない。何の能力が上がるかはランダムで決まる。
※キャラやクラス毎の傾向はあるので完全なランダムではないです。パワータイプは力が成長しやすくとかはなっています。
ランダムであることによってプレイごとに同じ状況を作らない……というのはあります(歯切れの悪い言い方)
ただし、ランダムであるということで誘発するのが、欲しい能力が上昇するまでリセットを繰り返す「厳選作業」です。レベルアップして攻撃力が上がらなかったらリセットするとか。
ゲームの攻略における最適解が盤外戦術みたいな話になってくるのでそこは避けた方がいいですね。
◆知識編⑤:経験値の扱い方
こちらもレベルに関するお話。
レベルというかポイント蓄積型での話なので、レベルに限った話ではないんですが。
ポイントの蓄積のさせ方をどうするかって話ですね。
◇固定値でインフレさせる
経験値のよくあるパターンとしては固定値で設定されていることが多いです。例えばドラクエなんかは
とかになっています。※数字は適当です
なんでこうしているかって言えば
あたりでしょうか。
ただ、これ③はともかく①と②はこの形じゃなくても達成は可能です。
例えば次の項目のやつ。
◇レベル差で経験値を決める
ファイアーエムブレムとかのシミュレーションRPGで使われている事が多い手法です。簡単に言うとこういう仕様。
なので例えば
みたいな形になります。
「レベル」という強さの基準を使い比較することで、経験値周りの数字を大きくすることなく
これを達成しているわけですね。
固定値でやる各敵に経験値を設定して調整して……は地味に面倒だったりするんですよ。てきと~にやっていると
とか発生したりもするので。
レベル差で割合で決めてしまえば、そういった問題点はスルーしやすくなります。
とはいえこれもRPGで多く使われずシミュレーションRPGで使われている理由があって、例えば上記の仕様だと
みたいな話が出てきたりします。シミュレーションRPGの場合は
とまぁ、大量の雑魚狩りをすればOK!とはなりにくいのが前提としてあるので成立してるんですね。
なので他ジャンルで使うのであればそれに合わせた仕様に変えながら扱う必要はあります。
◇簡単な経験値テーブルの作り方
固定値でインフレさせていく場合、経験値テーブル(どのレベルでどれくらい経験値量が必要か)を作る必要があります。
決まった作り方があるわけではないと思うんですが、基礎知識としてスタンダードな作り方を紹介しておきます。難しい数式は使わず算数レベルで。
まず、経験値テーブルの変数としてあるのが
の3つです。レベルアップの処理をする上ではNextはいらんかったりしますが、累計を出したりゲーム上で親切に表示したりするのに使います。
で、基本的にやりたい事としては
ですが、これを手作業で1レベル毎に考えるのは面倒です。なので計算式を作ってパッと出せるようにしましょう。
かな~りシンプルにやるなら、例えばこういうの。
グラフにするとこんな感じ。直線的な比例のグラフ。
ただ、これだけだと、ちょぉっと終盤の伸び率が低すぎるというか、割合で見ると
とかになるので、手に入る経験値量のインフレ具合はけっこう抑えないといけません。そうなると固定値でやるメリット自体があまりないかも。
なので、これに倍率をつけて対処をします。
なんかそれっぽくなって、終盤の伸び率も大きく上がりました。
グラフにするとこう。ほんのり曲線。
ただ、これでもやっぱり、序盤の必要経験値の伸び率がデカいよなぁ……というのはあります。
元々序盤はレベルが上がりやすく作ってあるからこれでもいいよ、数字自体が大きすぎる場合は最初の倍率を1ではなく0.5とかにしてマイルドにすれば問題ないよ……というならこれでもいいんですが。
そこを落ち着かせたい場合は、別の計算式を使います。
前のレベルのNext経験値に対して倍率をつけるやり方。
前のNext経験値量を1.1倍することによって、徐々に必要な経験値量を増やしています。前のを基準にしているので、最初は10→11という小さい伸びになりました。それでいてレべルMAX付近は1万以上の大きな伸びになっていてインフレもできてます。
グラフにするとこんな感じの曲線を描きます。
指数関数的な曲線とか言われたりしますね。
……が、これだけだと問題があります。
後半の伸び率がちょっと、こう、エグすぎませんか。
二つ目の緩やかな曲線のパターンと比べると、
で、③の方が大人しいんですが、最大レベル付近だと
で③の方が遥かに大きくなっているのが分かるかと思います。
指数関数的なやつってある程度のラインを超えたあたりから数字が爆発し始めるので、ちゃんと作るならこの爆発を抑制する必要があるんですね。
じゃあどうするのかって言うと、①の直線的なグラフと③の指数関数的なグラフをフュージョンさせてマイルドにします。平均をとる。
こうすることで、伸び率がかなり少なかった序盤の伸び率を少し上げつつ、後半の伸び率を抑える事ができます。
比較したグラフにするとこう。
指数関数的な曲線は維持しつつ、マイルドになりました。
ちなみにもっとマイルドにしたい場合は、指数関数を作る時の倍率を(1.08倍とかに)下げるとするとかなり変わってきます。(レベル98の時のNextが 76075→13951まで下がる。5分の1以下)
今回は説明用にに数字が分かりやすい方が良さそうなんで1.1倍にしてましたが。
なお1.08倍にして②と④を比較するとこういうグラフになります。
特性の違いが明確に出てますね。
ちなみに私が実際に作る時はもうちょい弄ります。
(1章の推奨レベルは8~10だから11からはレベルを上がりにくくしてレベルが上がりすぎるのを防ぎつつ、その分2章から手に入る経験値量は多くして次のステージに行ったぞ感を強くする……とか状況に応じて)
ただまぁ基本形としてはここで挙げたような式をベースに作る感じかなと思います。数学が得意な方なんかは色々できるんじゃないかと。
私はあんま得意じゃないのでこれ以上は知らん。
ただ、どういう計算式を採用するにしろ重要なのは
です。数字はそれを達成するための道具でしかありません。
まずそこを考えてから、それに合わせた計算式を採用すると良いかと思います。
あと経験値テーブルの作成に慣れるには実際に自分でエクセルなりスプレッドシートなりで作ってみるのが一番手っ取り早いんで、やってみたい方は自分で作ってみるのをオススメします。
自分で色々と弄ってみて、自分が使いやすいように改造していきましょう。
◆能力上昇のゲームデザイン
さて、いよいよ知識編も終わり、今度はゲームデザインの話をしていきます。とはいってもこれは「こうすればすべて解決で問題ないよ」といった「正解」を示すものではありません。
成長システムを考える時に、こういうこと考えておいた方がいいよねって話をしていきます。考慮事項を挙げる感じ。
まずは能力上昇に関する話です。
◇1回で成長の強さをどれくらい実感させる?
例えばの話、
と言うのは簡単ですが作る方は中々に大変です。
攻撃力を上げるのはいいけど、どれくらい攻撃力が上げればいいのか?
攻撃力が「100→105」になるのも、「100→150」になるのも同じ「攻撃力が上がった」ですがその意味合いが違うのは何となく分かるんじゃないかと思います。
こういう時によく言われる話としては、「成長しても体験が変わらないんじゃ意味ないよね」ってやつ。例を出すと
というもの。↑の例だと、ダメージを10→14にしないと倒すために必要な殴る回数は減らないわけです。
なので成長しても、成長した実感も意味も無いのは良くないから、意味のあるくらいの成長はちゃんとさせた方が良いよね~という話。
……なんですが、この話が「絶対的な正解」かと言われるとどうなんでしょうね。
(あらかじめ言っておくと、私は成長の楽しさに脳を灼かれるのが大好きなんで基本的にはハッキリ成長の実感ができるように作る事が多いです)
攻撃が通常攻撃だけのシンプルなゲームだけなら↑の例もいいんですけども。RPGなんかだと色んな要素が絡んだりするじゃないですか。
攻撃力だってキャラの攻撃力と装備の攻撃力とパッシブによる補助がかかったり、攻撃方法も1つだけじゃなくて色んなスキルを使って戦ったりもするわけで……じゃあ何を指標にすればいいのか?
そんでプレイヤーはプレイヤーでわりと雰囲気で遊んでいる所もあり、殴る回数が変わらなかろうとダメージが上がってるなら「とりあえず強くなってんな」というのは感じられますし。
さっきの例で言うならダメージの上昇が「10→12」で倒せるための回数が変化しなくても、前には進んでるのでもう一回レベルが上がって「12→14」になるなら、回数も減って意味も出てくる。
更に言えば一回一回の成長に対して強いリターンを返していくとガンガンにインフレが進みます。成長段階が多いとキリがない。4回殴る必要があった敵を、レベルが3上がったらワンパンで倒せるようにするべきなのか?
……って所まで踏まえて、この話を考えていく必要があるかな~と思います。これは成長システム毎に考えた方が良い話でもあって、例えば
とかでメリハリをつけるとかもアリかな~と思います。
いずれにせよ、自分たちが作ろうとしているゲームの方針や、対象となる成長システムの役割を明確にしておかないと考えにくい所なので、まずはそこから考えるといいかもしれません。
◇自由な育成の中でどう調整するか?
さて、これまでの話で「自由度の高い育成」における危険性は何度か指摘してきました。バランス調整、大変ダヨー。
……とはいっても、やっぱり自由度の高い成長システムは楽しいもんだし作りたい。じゃあどうしようか、というのがこの項目の話です。
まずは話をするために、適当なサンプルを作りましょうか。
例えば以下の仕様。
上がる能力は全部好きなように割り振れるので、けっこう自由度は高い方です。んで、仮にプレイヤーがレベル31(+30)まで上げたとしましょうか。
そうすると30×3で90まで能力値が割り振れるので、平均的に割り振ると
こうなります。バランス崩壊なんてしそうにない、とっても素晴らしい数字ですね。ただし極振りするとこうなります。
さて、腕力23と95。当然これに対するボスのHP量の適性値は全然違います。
同じHPでも人によって敵がタフすぎたり、逆に脆すぎたりしてバランス崩壊を起こしがち。
まぁ腕力の場合は上げ過ぎた時にワンパンで倒せるだけまだいいんですが、
みたいな話になるとまぁ微妙。
ってことで、対策を考えてみましょう。あなたならどうします?
・
・
・
これが正解!とかを話す気はない(そんなものはない)んですが、それだとこの話が中途半端に終わってしまうので。私がてきと~に考えた、サンプルになるような案をいくつか置いておきましょうか。
まずはコレ。
自由に割り振れるのが大事なのであって、全てを自由にやれる必要はないよね。ならゲーム側で「最低保証値」を担保しながら、残りを好きにさせる。
これだけでも極振りした能力は他の能力よりも明確に大きくなってはいるので、別に「プレイヤーが自由にやっている」感はちゃんと残っているのでは……という考え方。
あとスキルツリーや盤面型とかで能力上昇のパネルを用意する時も、プレイヤーが選択できる分がキャラが持っている基本能力値に対してどれくらい大きいのか……で話は変わってきますね。
そんじゃ次。
腕力5と95では19倍もの差がありますが、他の要素(装備攻撃力)を噛ませることで、上記の例では最終値を2倍ちょいくらいの差に収めることができました。
①はステータス内のみで考えた「最低保証値」でしたが、こっちは別の要素(装備の攻撃力)を「最低保証値」として見ています。
あと、合算ってのが大事ですよ。
乗算でやるとむしろ腕力の影響力が爆上がりするので注意。
このように「見た目状の差はものすごいんだけど他要素で誤魔化して問題ない範囲に収める」というのも1つの手です。
はい、次。
「ちょっとこれ以上はヤベェから止めて」って上限値を作ってしまえば、少なくともそこの範囲内で調整することができるじゃないですか。
そして上限から溢れた分は他の能力に割り振ってもらう、一定値までは自由度を保証する形ですね。
シナリオ進行度に合わせて明確にルール化すれば、自由度は減ってもゲームを先に進める理由付けにはなるかもしれない。
へい、次。
プレイヤーから見た自由度は担保しつつ、バトルの計算式とかそっちっかわで解決する方法。まぁあんまりオススメはしないんですけどね。
23と95での差を縮めるという事は、23と30みたいな差で効果を実感しにくくなるという話でもあるので。
やるのであれば、数字の差が大きくなるほど影響力が弱くなっていくようなのを組むとかならある程度は扱えるかも。
ほい、次。
極振りはできるけど、ある程度上げるとだんだん苦しくなってくるよ。それでもやるかい?な考え方。
このやり方だと、極振りを好む人も1極型にする人はかなり減りますね。
代わりに2極型(2つの能力に極振りする)や平均型が増えます。
ただまぁ、ポイント的な制限をしなくても能力値が大きくなるほどマズくはなってるんですけどね。10→11は10%アップだけど、100→101は1%アップでしかないし。とはいえ積み重なるとそうも言ってられないんですが。
そろそろ最後。次は究極型です。
解決策かって言われちゃうとアレですけども。
でもゲームの方針としてそっち方向に振り切るのであれば、中途半端なことをするよりかはいいのかもしれません。少なくともゲームの個性はハッキリするかもしれない。
ただしコレによってBADレビューついたり文句を言われたりしても気にしない鋼の精神力も必要になります。
いかがでしたか?(この文を書くと参考にならない記事感すごいな)
制作方針やゲーム内の他要素などに影響されるので絶対的な正解はありませんし、上記に挙げた以外にも方法はいっぱいあるんじゃないかと思います。
既存のゲームを遊ぶ時に、このゲームはどうしてるのかな?と分析してみるのも面白いかもしれません。
◇割振り内容の差で強さはどれくらい変える?
例えば、極振りした時と平均的に上げた時。あと変な能力に極振りした時。
これらで、強さの差が明確に出るのはどうなんだろうなって思う時はあるんですよね。特に「運」なんかはゲームによってはすごく強いけどゲームによってはそんなんに極振りするなよって話もありますし。
(そこで負けまくった時はプレイヤーの責任なのか?)
もちろん、何にどう振っても変わらねぇなっていうのは論外ですよ。
ただし出すべきは強さの差よりも個性の差なんじゃねぇのかなと。
平均的に振ってもどの能力に極振りしても、ちゃんと強い。でも強さの種類が違う……のが理想みたいな。
システム上どうしても強さに偏りがでちゃうよねって話はあると思うんですけどね。ただ「この割振りが正解」「この割振りに人権は無い」みたいな話になってくると、もうそれ自由にやらせる必要ある?という気にもなってくるわけで。
あと割り振った内容によって強さに差が出ると、戦闘が下手な人が割振りをミスった時にまぁ悲惨なことになるんすよ。戦闘が上手い人はクリアしてくれるんで放っておいてもいいんですけども。
そして大抵、戦闘が上手い人は割振りをミスらず、戦闘が下手な人が割振りをミスる。
ってことで、自由に割り振らせるのはいいんですが、作る側としてはその内容による強さの差をどうするのか……まで考えて作ると色んな人が楽しめるゲームになってくるんじゃないかと思います。
◆経験値のゲームデザイン
◇成長はだんだん難しくするべき?
というのがまぁよくあるバランスかなと思います。
ゲームの序盤って「掴み」の部分でもあるので、ここでしっかりプレイヤーを成長の快楽に漬け込んでおくのが重要ですからね。このゲームには美味しいエサがあるんだぜ!と。
しかし、そのスピードでの成長をずっと維持するとインフレも激しくなりすぎるので、徐々に成長スピードを落としていきます。
そうするとだんだん落ち着いてきて、終盤に行くほど成長しなくなっていくような形になるわけです。
ただまぁその上で言うんですが。
個人的には「序盤を成長しやすくする」は必要だけど「終盤は成長しにくくする」はいらないじゃないかな~と思う事も多いです。
終盤になって成長が鈍くなってくると、緩やかにゲームが面白くなくなっていくんですよ。別の記事でも少し触れたんですが、終盤にいくと目標にしていた楽しい成長システム(クラスチェンジとか)もだいたい取り終わり、ゲームをもっと遊びたくなるパーツが減ってくるんですね。
そこで更に成長も鈍くなってくると、
ってなるのも別におかしな話じゃないわけです。
なのでインフレしすぎない範囲で楽しく成長させられるくらいの成長スピードをいかに維持するのか……というのも大事なんじゃないかと。思うわけですな。
最終的にどういう塩梅にするといいのかはゲームや方針次第だとは思いますが、少なくとも「現状、終盤になっても成長は楽しいか?」と見直してみるのも良いかと思います。
◇経験値、あげる?あげない?
例えば、戦闘中に戦闘不能になったまま敵を倒した時。
戦闘不能の仲間に経験値をあげますか?
例えば、仲間になるキャラが8人いて戦闘に出すメンバーは4人までの時。
控えのメンバーに経験値をあげますか?もしくは減らした状態で与えますか?
最近は見直されつつありますが、昔のRPGだと「あげない」仕様がスタンダードだったりはしますね。
みたいな話もありますし。
ただ、実際に自分のゲームでどうするかは「あげない」ことによって何が起きるかも把握した上で考える必要があります。
例えば、
とかは実際に起きうることです。
そうした時、
という話も当然、出てくるわけです。
また、控えのメンバーに経験値をあげるかどうかも
という話が出てきます。
つまり「お気に入りの誰かを強くして戦う」というのには向いているけど、「皆の力を駆使して敵毎に工夫しながら戦う」というのには向いていないわけですね。
戦闘不能の話も控えメンバーの話も、どちらも最終的に自分のゲームの方針にどちらが向いているのかを考えた上でどうするか決めないとそのゲームのポテンシャルが発揮しにくくなります。
◆成長システムのゲームデザイン
◇未来はどれくらい見せる?
どういう風に育てようかなー、とか。誰を育てようかなー、とか。
プレイヤーが考え、計画をしてプレイするには「情報」が必要です。
昔のRPGなんかはこうした情報を「見せない」のが主流でした。
とか。
逆にスキルツリーなんかは情報を「見せる」タイプです。
みたいな。情報を見せているからこそ、じゃあどのルートで育てようかな~と考えられるわけですね。今はもう基本的に情報を「見せる」方が主流なのかなと思います。
欲しいと思える物が明確になっていると、それは魅力的で目指しやすい目標にもなるので
といったゲームサイクルも成立しやすくなります。
じゃあもうこれ「見せない」のは論外で、出来る限り「見せる」方が良いんでしょうか?「見せない」ことにメリットはない?
これは必ずしもそうとは言えなくて、見せることで失われる物もあります。例えば、何をいつ習得できるのか全て分かっているなら、それは予定調和的な体験になっていって「驚く」ことは少なくなります。
逆に「見せない」場合は分かっていないので、
という射幸性の強い面白さが生まれます。
つまり「見せる」と「見せない」で面白さの方向性が違う。
それと、情報量が多い場合はそれを全て見せると逆に混乱を招きます。
情報が無いと計画は立てられませんが、多すぎるとよく分からなくなってこれもまた計画が立てにくい。
見せるなら見せるでいい感じに情報量を絞った方が扱いやすくなりますね。
そう考えると、
の塩梅をどうするのかが重要になってきます。
例えばユニコーンオーバーロードなんかは、そのクラスがレベルいくつで何のスキルを覚えるかは序盤から見ることができます。
ただし序盤ではクラスチェンジ後の情報は見れません。
ゲームを進めてクラスチェンジの機能が解放された時に見れるようになります。(レベル20以降に覚えるスキルが増える)
つまり
という形になっているわけですね。
逆にこれが最初から全て公開されていると、クラスチェンジが解放された時のわくわく感は薄れてくるんじゃないかと思います。
スキルツリーなんかも最初から全てを見せる必要は無くて、ある程度まで進めたらツリーの続きが出るとか新しいツリーが出るとかで情報はコントロールできますね。
基本的にこうした「新しい重要な情報」に触れるのは楽しいもんですが、最初から全て公開しているとそのインパクトは1回しか機会がない。
そこで情報の公開タイミングを分けることで、楽しい情報に触れるインパクトの回数を増やしている……といった感じでしょうか。
とはいえ短いゲームであんまり隠してもしょうがないですけども。
何を見せて何を隠すのか、どの情報をどのくらい、いつプレイヤーにぶつけるのか。
同じシステム同じ内容でも情報の見せ方の違いでプレイヤーが受ける体験は変わってくるので、そこを検討するのも重要なんじゃないかと思います。
◇成長の目玉は何にする?
作ったゲームをプレイし続けてもらうためには、「目標」を作ることも大事です。
例えば、レベルは優秀なシステムですがそれ単体だとあまり「目標」としては機能しません。ただし
といったものがあれば、それを目指してプレイすることができます。
ただ単純にレベル上げをするのはつまらないけど、魅力的な報酬の目標のためにレベルを上げるのは楽しかったりしますし。
そしてレベルを上げるためには強い敵を倒す必要があって、そのためにはこのダンジョンで手に入る装備があると楽になり……といった所を上手く繋げられればゲームサイクルも回り始めます。
スキルツリーなんかも同じで、ツリー内の節目節目に目標としたくなるようなスキルがあったりするとそれを目標にできます。
更に別ルートにまた別方向で同じくらい魅力的な報酬が置いてあったりすると、贅沢な悩みができてどちらのルートに進むか考えるのがより面白くなりますね。
なので成長システムを考える際に、
を考慮するのも大事なんじゃないかと思います。
見直してみた時に、目玉になるようなものが無ければプレイヤーからしたら単調な体験になっているかもしれない。目玉は作ったけど遠すぎるなら目標として機能しないかもしれない。目玉はあるけどUI的に目立ってないならプレイヤーはその存在を認識しないかもしれない。
ちなみにプレイヤーから見て目玉として分かりやすいのは
ですかね。クラスチェンジなんかは良い例です。レベルアップでステータスとかは上がるけど、クラスチェンジは特性が変わるからレベルアップでは得られない強化がある……とか。
あとはスキルを覚えるにしても、通常スキルとは別の必殺技が覚えられるとか。
その辺りも踏まえて調整できると良いんじゃないかと思います。
◇成長の「リセット」は必要か?
自由に育成できるという事は、育成に失敗することもあるわけです。
特にプレイの初期はゲーム内の能力値やスキルに対する理解度も低かったり、後で加入した仲間とのシナジーを加味したりすると
ってなる場合もあります。
そんな時にプレイヤーの「やり直し」を許容するかどうか、というのが今回の話です。
まぁやり直しを許容してリセットできた方が無難ではあります。
後悔しながらゲームを進めるのも余計なストレスではありますし、それが続けば
となってプレイを止めてしまう事にも繋がりかねません。
その一方で自由にリセットできる場合、例えばイベント等で能力値が一定以上あると有利になるようなゲーム(腕力が50以上あれば岩を押して宝箱を開けられるとか、魔力が200以上あれば動く仕掛けがあるとか)だと
という状況にもなったりします。
「この方向に育てからこそ受けられるメリット」みたいのが無くなるわけですね。(パワータイプに育てていたからこそ岩を押せたとか)
こうなるとその仕様の良さが潰れて実質的には「リセット」という手間を強いているだけ……になるので注意が必要です。
それが嫌な場合はリセットできなくするか、もしくは条件付きでリセットできるような仕様の方が望ましいですかね。(リセット用のレアアイテムが必要とか)
リセットは出来た方が無難ではありますが、他の部分のゲームデザインを破壊しないようにしましょう。
◆まとめ的な何か
◇終わりに
とりあえずはいったん話はココで終わりです。
成長システムを考えたり、実際の中身を作ってバランス調整をしたりする時に、考えておいた方がいいことはいっぱいありますね。
全体で3万字近い記事になったんですが、まだ書き漏らしている物があるような気がする。いや、考えていくと最初の想定よりも増殖しまくったんすよ。こわい。
具体例を挙げながら説明してきましたが、話の内容自体は汎用性があり色んなシステムに応用できる物かと思います。
またこの記事には「こういう物があるからこの中から選んで使おうね」という意図はなく、「こういう物があるからそれを参考に、自分なりに応用して作っていこうね」というのがこの記事の意図ではあるので。
あと記事を読んで「もっと大事なのこういうのがあるだろうが!」と意見のある方もいらっしゃると思うんですが、そういう方はですね。
記事を書いてください。頑張って。知見を共有して。全然無いから。
◇成長システム?育成システム?
この記事を書くにあたって、「成長システム」って表現するべきか「育成システム」って表現するべきかだいぶ迷ってました。
なのでついったーでアンケートをとってみたりもしたんですけどね。
最終的な結論としてはこうなりました。
なお
◇宣伝
ここで話したような内容を使って個人でゲーム作ってます。
終盤になっても成長が緩まずその快感に脳を灼かれたい人におススメです。
あと他にもnoteでゲームデザインに関する話を書いてるので、興味ある方はドウゾ―