世界平和への願いを込めたチャップリンの魂の叫び【独裁者】♯061
圧巻の演説は現代人も耳を傾けるべき内容となっている。
独裁者 1940年 アメリカ
【あらすじ】
架空の国トメニア。
第一次世界大戦で生き延びた二等兵の男(チャップリン)は戦場での記憶を無くし、病院で過ごしている間に政変が起きた。
病院を出る頃にはヒンケルが独裁者として君臨し、男はその事実を知らないまま自宅へ戻った。床屋を営んでいた男はある日、店の壁に“ユダヤ”の落書きを発見する。その落書きを消そうとするが突撃隊がやってきて突然乱暴をされる。ヒンケル政権はユダヤ人を迫害しようとしていたのだった。
【解説】
1940年に公開され、当時のドイツ国の指導者ヒトラーの独裁政治を非難し、演説の悪魔といわれた彼の喋り口調を揶揄したっていうとんでもない映画。
それまでサイレント映画だったチャップリンの作品は、
この映画で初めてトーキー(音声)映画に挑んだ。
そんな記念すべき作品なのにデタラメなドイツ語で、いやもう、それダメでしょ?ってくらいヒトラーを嘲笑う。
そもそもチャップリンとヒトラーは同じ年、同じ月に生まれている。さらにその見た目も似ているという奇遇さを利用し、チャップリンはひとりで二役を担った。
彼はユダヤ人ではないが、ユダヤ人の床屋に扮し、同時に独裁者ヒンケル(つまりはヒトラー)の二役を非常にコミカルに演じる。
映画の終盤、床屋の男が独裁者ヒンケルに間違えられ、演説を求められる。その演説はもう演技ではなく、反戦と平和を訴える魂の叫びになる。チャップリンは喜劇を利用してヒトラーを痛烈に批判したのだ。喜劇映画という枠を超えて、反戦を強く訴えた。
当時あまりに刺激的過ぎて、アメリカやイギリスでも公開に消極的だった。しかし民衆の多くが公開を求め、映画はようやく配給された。
今から80年以上前の映画だが、反戦と平和と自由への願いを込めたチャップリン思いは現代においても人種や宗教、政治的立場を超えて今一度、見直すべき内容だと思う。
【ぼやき】
ヒンケルが地球儀のような風船を飛ばしてニタニタする姿にはゾッとする。なんでかって、この映画が公開された直後あたりにホロコーストが起こっているんだもの。
まるで予言していたかのようなチャップリンの映画。
圧巻の演説は今まさに時代を超えて、世界中の人々に響きわたる事を切に願うばかりです。