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【恋愛小説】君を助けるための石 16話

みことは鈴と結婚して10年…幸せに暮らしていた。
ある日、突然鈴が倒れてしまい意識不明となった。しかも原因が分からない…
そこに、伊邪那岐神が現れて鈴の原因は、鈴が持ち帰った石にあると言う。
その石を返せば鈴は助けられると…
尊は鈴を助けるために、過去に一緒に行った神社に石を返しに行くことにした…

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16話 出雲市大社町の神社


鈴が倒れて4日目 11時半


尊は、売店に飲み物を買いに行った。
すると…

「尊さん」

と声を掛けられ…
振り向くと…

「尊さん、どうしたんですか?今日はプライベートのようですね」

声を掛けて来たのは、仕事で付き合いのある放射線科の、良りょうだった。

「あっ、良さん…実は、妻が入院してまして…」

「えっ、奥さんどうしたんですか?」

「それが…急に意識を失って…でも原因が分からないそうなんです…僕も参っています…」

「そうだったんですね。僕も色々聞いてみます」

「病室は?」

「5Fの503号室です」

「分かりました。また伺いますね」

良とは、古い付き合いだ…
プライベートでも、たまに飲みに行く仲でもある。
鈴のことで動転して、存在をすっかり忘れてた…

とりあえず、病室に戻って…
また神社に行こう。

尊は、写真の上に石を置いて…
目を閉じ…開ける…
そこは、大きな鳥居の前だった。

その神社は、縁結びの神・福の神として名高い神社で
御祭神は大国主大神おおくにぬしのおおかみ
通常は、二礼二拍手一礼が一般的だが
ここのお参りの仕方は、二礼四拍手一礼だという。

一番目の鳥居をくぐると…長い参道が続く…
そのうちに下り始める。
神社といえば、山の上にあることが多いから
下に下っていく神社は珍しい…
2番目の鳥居から、松の参道が出現して…
参道はふたつに別れる。

―――しかし、ここは平日だっていうのに人が多い。

もしかしたら、石を置くのは難しいかも…

右手に、御神像が見えてきた。
一応、ここにも行ってみよう。
だいたいの人はここには寄らず…まっすぐ拝殿に向かう。

尊は、御神像の奥にある会所に寄ってみた。
参拝している若いカップルがいるが…
幸い、俺の後ろには人はいない…
カップルが行くのを待って…
石を置いてみた。

しかし…石は光らなかった。

よし、3番目の鳥居をくぐり…次は拝殿だ…
しかし…ここは、人が多すぎる…
尊は、本殿に行ったが…
ここもダメだ…人が多くて石を置けない。
次へ行こう。
東十九社ひがしじゅうくしゃに行くと、人が少なくなった。
機会を狙い…石を置いた。

でも、石は光らなかった…

次は、釜社かまのやしろで石を置いてみた。
変化はない…
ここも違う。

素鵞社そがのやしろは、砂浜の神社の砂を交換するところでもある。
人がいなくなるのを待って…
石を置いてみた…
やっぱり石は光らない。

それから、鳥居がある所に石を置いてみたけど
石は光らなかった…

拝殿と本殿に、もう一度行ってみたが…
人が多くて無理だった…

だいたいここは、縁結びの神様だし…
でも、子どもとの縁を繋いでくれるとも言われている。
砂を持ち帰るなら、まだしも…
石を持ち帰るとは、思えないけど…

一度、帰ってまた夕方に来てみよう。

尊は、病室の写真の上に石を置いた…
そして、目を開けると…
そこは病室だった…

同時に…

「尊さん、尊さん」

という声で目が覚めた…

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