【恋愛小説】君を助けるための石 21話
尊は鈴と結婚して10年…幸せに暮らしていた。
ある日、突然鈴が倒れてしまい意識不明となった。しかも原因が分からない…
そこに、伊邪那岐神が現れて鈴の原因は、鈴が持ち帰った石にあると言う。
その石を返せば鈴は助けられると…
尊は鈴を助けるために、過去に一緒に行った神社に石を返しに行くことにした…
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21話 島根県鹿足郡の神社
鈴が倒れて5日目 10時
尊は、病室に戻った後で…ウトウトしてしまった。
気が付くと…持っていた石が無い…
―――あれ?俺、石を持っていたはずなのに…
ポケットを見ても、鈴の布団の中にも無い…
―――あの石が無くなったら…鈴を助けられない…
尊は焦った…
ふと、ベットの下を覗き込むと…
子どもと目が合った…
5歳くらいの男の子だ。
「あれ?君はここで何をしているの?」
「隠れてる…」
その子の手を見ると…石を握りしめている…
「ボク、その石はオジサンの大事な石なんだ。返してくれるかな?」
「あっ、ごめんなさい。オジサンが落としたから…」
「拾ってくれたんだね。ありがとう」
そう言って手を伸ばすと、石を返してくれた。
「なんで、隠れてるの?」
「検査をするって言われたから…逃げて来た」
「そうか…検査は嫌だよね…」
「オジサンも入院していたことがあるから、分かるよ。でも、オジサンが良くなって退院できたのも検査をしたからなんだよ」
「そうなんだ…」
突然、ノックの音とともに看護師さんが慌てた様子で入って来た。
「あっ、翔くんここにいたんだね。病室に帰ってお話をしよう?」
「うん、わかった…」
「ごめんなさいね…ありがとうございました」
「オジサン、さよなら」
「翔君、またね」
―――危なかった~。石を無くしたら大変だ…
―――気を付けないとな…
次の神社は、何処かな…
アプリを開いて、スワイプするけど…
なかなか神社がない…
4年前は、滝に行くのにハマっていたから滝の写真ばかりだな…
あっ、あったあった…
4年前の5月だ…
ここは、尊が自分用に新しい車を買った時に行ったんだ…
軽自動車は、鈴が通勤用に使っているから
バイクを売った代わりにスポーツカーを買ったんだ…
でも、展望台や滝は狭い道が多いから、車高の低いこの車では行かない。
それで、今日は観光地と決めて…鈴と出かけたんだった。
津和野の街並みを見て回って…
その後で、この神社に行ったんだ。
さて、行ってみるか…
すると…
そこには、朱色の明るい建物が見えた。
朱色の鳥居をくぐって階段を上る…
ここは、津和野城の城山の一角に位置し、時刻を知らせる太鼓が鳴り響いた谷間であったことから名前がついたようだ。
現在では、日本五大稲成一社に数えられているらしい。
すごい神社だったんだ…
御祭神は、宇迦之御魂神と伊弉冉尊
願望成就の神様として崇められているそうだ。
鈴は、子どもの事を願ったかもしれないな…
まずは、本殿に行ってみよう。
でも、人が多いな…
人がいない方に行って石を置いてみよう。
尊は、石を置いてみたが…石は変化しない…
隣の建物にも石を置いてみたが…石は光らない…
隙を見て、本殿にも石を置いてみた…
石は、やはり光らなかった…
ここでもないのか…
尊は、戻るしかなかった…
「鈴、またダメだったよ…ごめんな…」
そう、話し掛けても鈴は答えない…
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