
技術書典における価格設定について考えたこと
価格設定って難しい
技術書典5で、私のサークルは
・新刊の36ページの本を300円
・既刊の52ページの本を500円
という価格設定で2冊頒布しました。
結果としては、新刊がほぼ完売、既刊が完売という状況でした。
100/10 (円/ページ) の噂は本当か?
技術書典に関する発言でTwitterで囁かれていた説は「10ページで100円」というものでした。
技術書典のサークル詳細には(任意設定項目ではあるが)、
・同人誌 or 商業誌 の区分
・ページ数
・価格
の情報が記載されています。
それらの情報を手動スクレイピングして図として可視化してみた結果が以下です。
棒グラフや円グラフに比べてあまり見かけないかもしれないですが、これは箱ひげ図と言もので、ばらつきのあるデータを可視化するときに便利な手法です。
もしこの図を初めて見たとしても、箱の中に50%のデータが詰まっているということだけ押さえてもらえれば、半分理解したと言っても良いでしょう。
仮に、100/10 (円/ページ) の噂が真実であれば、箱の中に収まっているはず。
見やすくするために、100/10 (円/ページ) となる地点を線で結んだところ、
全体的に箱が線より下方向に存在していることが見てとれます。
つまり、100/10 (円/ページ)ではなく 100+α/10 (円/ページ)が実態に近いのです。
100/10 (円/ページ) って高いの?安いの?
100+α/10 (円/ページ)という結論が出ましたが、だからといって100/10 (円/ページ) の本が高いか?と聞かれるとそれは違います。
技術書典で扱われている本は、名前の通り技術書です。自分でゼロから調べていくと数週間〜数ヶ月かかるようなことが本としてまとめられています。
そう言った情報は興味のない人にとっては価値がないものですが、必要な人には100/10 (円/ページ) であっても十分に安いのです。
完売戦略
技術書典で扱われている本は2種類に分けることができます。
・ニッチな内容でごく一部の層を読者として想定している本
・読み物として楽しめる本
例えば私のサークルが技術書典2,4で出したような本(下図参照)であれば前者です。
Macのスクリーンセーバーを作りたい人や、Macでデスクトップマスコットを作りたい人以外がこれを購入することはないでしょう。
いくら低い価格を設定したところで興味のない人は買わないのです。
そのため、価格を下げると赤字のリスクが増してしまうでしょう。
逆に技術書典3,5で出したような本(下図参照)であれば後者です。
書店で販売されている小説のように、年齢性別関係なく楽しめる本ではありませんが、技術書典に来る人という集団で考えれば、多くの人に訴求できる内容だと自負しています。
そう言った内容であれば、100+α/10 (円/ページ)よりも安くすることお得感を演出し、手に取られる確率を増やすというのは、戦略としてアリではないでしょうか?
この記事の目的と注意事項
技術書典に関するツイートを検索していた時に、価格設定に悩んでいるツイートを多く見つけました。
技術書典の公式ブログのアンケートによると参加者の約20%が初めて執筆したとあります。何を隠そう、私も技術書典2で初めて同人誌を執筆しました。
初めて参加すると執筆する以外にも様々悩む場面が多く、価格設定はその代表的なものだと思います。
技術書典終了後のツイートで「次はサークルで参加したい」というツイートを見つけたのは10や20ではありません。
この記事はそういった今後も増え続ける、技術書典で初同人誌の人の価格設定に対するヒントになれば幸いです。
※同人誌を印刷するには本のサイズや印刷部数、表紙や遊び紙、本文のカラー、そして早期入稿の有無など様々な要因があります。しかし、箱ひげ図や考察はそういった要因を加味せず、単純にサークル詳細に記載されていたページ数と価格のみで作成している点に注意してください。