「対話の力で、孤独を防ぐ」/DANRO CHILDRENとは
人と人とのつながりの中には、”目には見えない温かさ”がある。その温かさが増し、循環する時、きっと世界は今よりもっと明るくなる。そんな想いから創業したDANROは、2023年1月、DANRO CHILDRENをスタートさせました。
「自分のままで、進んでいける世界へ」というVisonを掲げ、幼少期から対話を通して、自分を知り、相手を知ることができる環境や、自分の想いを深め巡らすことができる環境を創出することを目的として生まれたDANRO CHILDREN。
そこに込めた想いや背景について、DANRO代表の小原和花さんとNOAさんにお話しを伺いました。
そのままの自分で生きられる社会に
━━改めて、DANROはなぜ「対話」を軸にされているのでしょうか?
和花さん:DANROは「日常に対話を。対話を文化に。」というスローガンを掲げて、”自分の人生最高だな"と思える光輝く人が一人でも増えたら良いな、そんな明るい世界になったら良いなという想いで対話を軸として創業しました。
日常で自分の話を聴いてもらえる場所って、実はすごく少ないんじゃないか。もっと身近に話を聴いてもらえる場所があること、自分が主役になれる時間があることって自分を生きる上でとても大事なことだと思っています。また心理的安心安全な場所があることは、混沌とした時代を生きていく子どもたちにとって、大きな支えや力になるのではないかと考えています。
━━このタイミングでCHILDREN事業を始めようと思ったのにも、何か理由があるんですね?
和花さん:「18歳未満の未成年の自殺者数が過去最多を記録した」というニュースが目に飛び込んで来て。創業当初から子ども向け事業の構想もありましたが、やるからには継続できる仕組みをつくってからと思っていたんです。ただ、このニュースをきっかけに「ゆっくり、じっくり」という意識から「じっくり、急ぐ」と覚悟を決めました。
そのタイミングで声を掛けてくれたのがNOAさんでした。
━━もともとDANROスクールのメンターとして関わっていたNOAさんが、DANRO CHILDRENに携わるようになった理由を教えてください。
NOAさん:私は、19歳でライフコーチになったんですね。その原動力の根本には「その人がその人として生きられないことへの怒り」みたいなものがずっとあって。
その子として生まれてきたのに”その子”を発揮できない社会ってなんなんだろうか、と。ましてや自ら命を断つ選択をさせる現実ってなんなんだろう。私自身、幼少期から居場所がない感覚や、周りの顔色を伺って、いつも武装している感覚で生きてきた結果、16歳でうつになり、不登校になった経験があります。
「心を壊す前に、サポートできることはないのか」そう考えていた時にコーチングと出会い、人は、自分のことを応援できたら、きっと他の人も応援できるという自分の体験から、19歳から約10年、同年代の人へコーチングを届けてきました。
NOAさん:でもふと、小さい頃からその種まきができていれば、大人になってから苦しむことが減るんじゃないかなって思い始めたんです。幼少期の私が、”自分のままで存在していい”という安心感が欲しかったように。自分が出会いたかった場所をつくりたい。
「よし、子どもにコーチングを届ける活動をしていこうっ!」と思った2022年11月。和花さんに子どもがもっと”自分”を表現できる機会や環境を届けたいと話したことが、DANRO CHILDRENに参画するきっかけになりました。
キーワードは、「孤独を防ぐ」
━━キッズキャンプや親子リトリート、イベントなど、すでに様々な場をつくってきたDANRO CHILDREN。その軸となる想いについてもう少し深くお聞きしたいです。
NOAさん:私たちは「孤独を防ぐ」ということをキーワードとして考えています。
ある調査結果で、子ども向けの電話相談へ来る相談のうち、上位が「雑談をしたい」だったんですね。これを見た時、何かを解決するためじゃなくて、ただただ自分の話ができたり、聴いてもらえたり、そんな環境を求めている子どもたちがこんなにも沢山いるんだと思いました。
それと同時に、こうやって話をしている今も、そんな場所がないことにどれだけ悩みを抱えている子がいるんだろうって危機感を覚えたんです。
和花さん:私自身、家族の関係性に悩む小学生の子と話す機会があって。彼女は「お姉ちゃんは大きな声で泣くけど、私は小さな声で泣くから誰も気づいてくれない。声を掛けられる時も”大丈夫?”って聞かれるだけで、大丈夫なわけないじゃないか!…でも、大丈夫って言うしかないんだよ」って言うんです。
「毎日イライラするけれど、どうやって解消すればいいか分からない。子ども向けのYouTubeを見ても、誰も子どもの生き方を教えてくれない。誰か教えてよ」って。たった6歳。でも、こんなにも自分を表現する場所を探してるんだなって。
━━小さい頃からそんな悩みが…。
和花さん:DANROが影響を受けた映画「ディア・エヴァン・ハンセン」にもその様子は描かれていて。近くに人がいたとしても、つながっていない感覚、心に孤独を抱えている人は少なくないと思うんです。
NOAさん:日常に、自分が主役になれる時間や自分の想いをそのままに表現したり、聴き合ったり。そんな愛ある循環をもっと広げていきたいと思っています。
━━孤独を「なくす」ではなく「防ぐ」としている意図からも、そこに対する強い想いを感じます。自分のままで生きられる場所や体験を、対話という軸で届けていこうとしているんですね。
和花さん:孤独を防ぐ、そんな積み重ねの先に孤独がなくなる社会にしていきたい。心を温め合えるDANRO PLACEのような場所が身近にある世界にしていきたいです。
主体性を発揮できる環境をつくる
━━孤独を防いだ先には、もっと自分でありたいというパワーが自然と溢れてくるだろうなぁ…と、DANROという場に1年以上触れ続けている私の実体験から想像できました。
和花さん:私たちが叶えたいことって難しいことじゃなくて、すごくシンプルなんですよね。”温まると輝き出す。温まると人は自然と動き出す”って思っていて。先日開催したキッズキャンプでは「環境さえあれば、人は自分を発揮できる」ということを、改めて子どもたちからも教えてもらったんです。
NOAさん:本当にそう。ある子は、虫を怖がってトイレに行けない友達を見て、自分も大の苦手なのに「大丈夫!見ててあげる!」って守ろうとして強くなったり。ある子は、周りの子の様子を見て、初めてのことにも挑戦しようとしていたり。
誰かが何か言わなくたって、その子自身が本来持っていたものが表れていく姿を目にした時、子どもたちはすでに人として大事なものを知っているし、発揮できるんだと感じたんです。
━━主体性を「育む」ではなく「発揮できる環境をつくる」と表現されている理由は、そこにあるんですね。
和花さん:私たちは子どもたちがそのままでいられる体験、体感を届けたいと伝えているけれど、それって子どもに限らず大人にも言えることだなと思うんです。
Noaさん:キッズキャンプの後に開催した親子リトリートで親としてではなく”一人の人として”、自分や家族の在り方を考えられたという声があったのも印象的でしたね。
和花さん:子育てって孤独を感じる瞬間もあるけど、それを助け合えるコミュニティや人との繋がりがあれば、大人の孤独も防ぐことができるんじゃないかと考えています。
それに、子どもがいるいない関係なく、私たちと同じ想いを持っている人は必ずいる。その人たちにとっても、すでに持っているそのやさしさや想いを届けるきっかけや機会をつくることができたら、もっと温かいやさしい社会になると思うんですよね。
━━”子どものため”に見える事業だけれど、その奥には子どもを取り巻く大人にとっても、主体性を活かせる社会に繋がっている。どこまでも、DANROは「人と人として繋がる」ことで、やさしさや愛を循環させようとしているんですね。
DANRO PLACEを全国に
━━1/19からDANRO CHILDRENでクラウドファンディングに挑戦するそうですが、その背景にある想いを教えてください。
和花さん:これまでも、こどもに関する様々ニュースが流れてくるなか、「小さくても、自分たちにも何かできることがあるんじゃないか」そんな一心でただ目の前のこどもたちに、自分のままでいられる体験を届けてきました。
活動を通して改めて痛感したのは、やっぱり身近な大人たちがどれだけその環境がある大切さを知っていて、体感していて、子どもに選択肢として届けられるかが大事なんだなということ。
NOAさん:もちろん、私たちの活動の先に届けられる子どもたちはいるけれど、仲間が多ければ多いほど、より沢山の子ども達に自分のままでいられる居場所をできるだけ早く、より身近に、日常に届けられるはず。
だからこそ、同じ志を持っている人と手を取り合って、みんなで一緒に届けていくことが大事だと思い、クラウドファンディングに挑戦することにしました。
和花さん:対話を通して孤独を防いだ先に、孤独がなくなる世界へ。今回の挑戦は、その大きな一歩になると思っています。
━━近しい想いは持っているけれど、どうしたらいいか分からない。そんな人も多いのではないかと感じているからこそ、その人たちにとっても一歩が踏み出せる場所になるのではないかなと感じます。
和花さん:「対話の力で、孤独を防ぐ」決して簡単なことではないけれど、でも、難しいことでもないと思っているんですよね。
NOAさん:孤独を防ぐということは、隣の人が隣の人にできること。一人ひとりが持つやさしさや思いやりを活かしていくことで、世界を変えていくことだってできると信じています。
「自分のままで進んでいける世界へー」一人でも多くのこどもたちが、力強く自分を生きるきっかけを届けたい。愛ある循環をともに広げていく仲間になってくれたら嬉しいです。
私たちの想いを2分の動画にまとめました。動画を見て下さると嬉しいです。
インタビューを終えて
子どもに関する様々ニュースが流れる中「小さくても、自分にも何かできることがあるんじゃないか」そんな想いを持っている人に、この記事をぜひ読んで欲しいと思いました。「難しいことじゃない」と話す、和花さん、NOAさんの言葉を聞いて、一人ひとりが持つやさしさや思いやりを活かすだけで良い。ただそれだけなんだな、とも感じます。
DANRO CHILDRENが創ろうとしている環境は、大人も子どもも関係ない、人と人とが繋がれる居場所になる。家と学校、職場だけじゃない「自分のまま」で居られるDANRO PLACEを全国に。私も、その未来を一緒に描いていきたいし、もし同じ想いを持つ人がいたなら、一緒にその場所を届けにいこうと伝えたいです。(インタビュー/執筆:廣田 彩乃)