「親と子」ではなく「人と人」として/DANRO親子リトリート at Dana Village
人と人とのつながりの中には、”目には見えない温かさ”がある。その温かさが増し、循環する時、きっと世界は今よりもっと明るくなる。そんな想いから創業したDANROは、2023年1月、DANRO CHILDRENをスタートさせました。
「自分のままで、進んでいける世界へ」というVisonを掲げ、幼少期から対話を通して、自分を知り、相手を知ることができる環境や、自分の想いを深め巡らすことができる環境を創出することを目的としてDANRO CHILDRENは生まれました。
2023年8月、福島にあるDana Villageにて開催された「〜遊・癒・開〜自然とつながり、自分とつながる親子リトリート」。全国から7組の親子が集まり、”親と子”ではなく”人と人”として共に暮らした時間には、たくさんの笑顔や涙、いろんな感情が溢れていました。
4日間の親子リトリートについて、発起人であるⅮANRO代表 小原和花さん、NOAさんと、Dana Village代表の小川 美農里さんにお話しを伺いました。
親である前に、ひとりの人として
━━キッズキャンプに続き、親子リトリートの開催に至った背景を教えてください。
和花さん:いくつかきっかけはありますが、そのひとつに、私が「夫婦で子どもを育てることをやめる」と決めた経験がありました。
共働きで、近くに頼れる親もいない私たち夫婦にとって「困った!どうすればいいの!」なんてことは今まで沢山あって。けれど、自分の子どもは自分で育てなきゃいけない責任感を知らず知らずのうちに持っていた過去の私は、誰にも頼れなかったんです。
でも去年、いよいよ「ふたりじゃどうしようもできなくなった!」という場面で、身近な人にSOSを出すことができて。誰かに頼れた時に、頼れる人がいると分かった時に感じた、あの嬉しさや安心感。息子の成長を一緒に見届けてくれる人がいる、そして息子自身も、いろんな大人と出会うことでどんどん成長していく姿を見ることができました。
和花さん:イギリスでは「It takes a village.子育てにはひとつの村が必要だ」という考え方があると知って、私自身、この体験からコミュニティで子育てするってすごく大切だなと思うようになりました。「じゃあ、この体験をどうやって届けよう」と思った時、すでにそれをカタチにしているDanaさんと一緒に開催したいと思ったんです。
━━その企画のお話を聞いた美農里さんは、どんな気持ちでしたか?
美農里さん:Dana Villageという場所で、そういう想いでやりたいと提案してくれたことが嬉しかったですね。この美しい里山の風景や資源がある場所で、いろんな生き方をしている親子が暮らしを共にするのは、とても良い機会になるなってワクワクしました。
私自身、Danaでいろんな人たちと一緒に生活をする中で、子どもの生きやすさって、大人が気付いて変わらないといけないなと思う瞬間が沢山あって。
だから、「”在りたい姿”でありながら、子育てができる機会のひとつになれば」という想いもありましたね。
自分がどう在りたいかが見つめられた時間
━━この親子リトリートは、どんな時間になりましたか?
NOAさん:いろんな親子の在り方が見えた時間でもありましたね。
例えば、「子どものことを全部やってあげたい」って、離れない選択をされた方もいれば「普段の生活だったらやってあげたいけど、ここでは見守ってみよう」とする方とか。どちらが良いとか悪いとかではなく、そんな親子の姿がありありと感じられました。
和花さん:参加者の方から「親としての接し方の違いを知れたことも良かった」という声や、ある親子の在り方を見て「自分は答えを渡し過ぎてたなと感じた」と言う方もいましたね。
NOAさん:大人同士が対話する場面も沢山見られたのもよかったですよね。子どもは安心して伸び伸び遊んで、大人は良い意味で子どもを気にせずに話ができて。
美農里さん:普段ちょっと気になることがあっても、日々の忙しさでいっぱいいっぱいな時に、改めて時間をとって相談したりしないですもんね。テレビやゲームのない、ノイズの少ない環境だったからこそ、いろんなところで立ち話なりシェアリングが起こってたんだなぁって思います。
和花さん:私たちが何かを用意したというよりも、そこにいる人たち同士で、影響し合っていたように感じます。”みんなで育てる”を少し体感できたことや、あの場でみんなで共同生活したことに意味があったんのかもしれません。
美農里さん:そうですね。3泊4日という限られた時間ではあったけれど、あの場が良いコミュニティになっていたんだなぁって思います。
印象的だったのは、初日、ひとりのお子さんが「お家に帰る~!」って泣いていて。”子どもにこんな経験をさせたいって、時間やお金やいろんなエネルギーを捻出して来たのに”って、お母さんの気持ちを考えたら、大泣きする我が子を見る姿に「本当につらいよね」って思って、そのまま声を掛けたんです。のちに「あの時掛けられた言葉が、本当に嬉しかった」と言ってくれて。
美農里さん:子育てって、例えば、トイレに行こうと一瞬離れようとしただけで「行かないで!」って号泣する子どもに、どうしようって混乱するというか、焦りが生まれる場面って多いと感じていて。でも、Danaはその場にいるみんなで子育てをするのが当たり前で、安心して声を掛け合ったりできる環境なんですよね。
その泣いていたお子さんも最終日、帰り道で「お家(=Dana)に帰りたい」と言うくらい、ここでの暮らしで感じるものがあった様子で。そんな成長を一緒に見れたことも嬉しかったし、大人が親としてではなく、自分がどう在りたいか主体的に考えるきっかけになったことも嬉しかったです。
━━大人も子どもも、共に育ち合う。そんな人と人とが助け合ったり影響し合う環境が、その時間にはあったんですね。
和花さん:「親である前に、自分がどう在りたいか」が見つめられる機会になったと参加者の方から声を頂いたことも嬉しかったですね。
お子さんが生まれてから数年間、ずっと”○○くんの母親”として生きていたけれど、一人の人として何を感じているのかと問われることがほとんどなかったんだと気付いたという方がいて。その方が、子どもや周りの人目をはばからず、涙を流しながら、美農里さんと長い時間対話をしていて。
最後に「私が私としてどう在りたいのかをちゃんと考えたい」と仰っていて。親子でいい時間になればと思って参加したけれど、自分というものの輪郭を感じられた、そんな時間になったのかなと思いました。
「大人って、案外弱虫なんだね」
和花さん:大人が涙する姿を見て、子どもが「大人って、案外弱虫なんだね」って話したエピソードも印象的で。
━━大人が、弱虫?
和花さん:最終日のエンディングサークルで、感じたことをシェアしていたとき、子どもは泣いていないのに、大人たちが想い溢れて涙していたんです。その姿を見た子が、帰り際に言ったこの一言に「そうか、子どもはどこか『大人は完璧だ』と思っていて、泣く姿をみてそうじゃないんだと思ったんだな」と。
大人が「子どもって○○」と思うのと同じように、子どもが思う「大人って○○」という考え方が解けた瞬間だったのかもしれません。
NOAさん:みなさんの姿を見て、子どもだけじゃなく、大人も親としての役割だけではなく「○○さん」って確立してる時間が大切だと改めて思いましたし、一人で育てなくても良い環境が身近にあったらとも思いました。
和花さん:この体験が非日常のものではなくって、DANROの「対話」やDana Villageの「環境」を日常にしていくために、もっともっと届けたくなりましたね。
孤独を、防ぐ
━━今回の親子リトリートを通して、みなさんが改めて確信したもの、強くなった想いは何でしたか?
NOAさん:私は、親子リトリートで参加されたみんなに対する想いももちろんあったんですけど、純粋に、自分の親にもこの環境があれば…と、強く感じましたね。
子育てって孤独だなって思う瞬間が多いからこそ、何かに落ち込んでも、話せる場所があればまた頑張れる自信になる。私には子どもはいないけれど、そんな環境があることが希望にもなるし、それを届けていく役割があるなって思います。
頼る、共存し合うことが当たり前であり、必要なこと。それを、楽しく軽やかに全国に伝えていきたいです。
美農里さん:そうですね。全ての親子が、今も子育てをしながら悩んでる。私も、孤独を抱えている人に「あなたは一人で子育てしているんじゃないよ」ってメッセージを届けられるような場所を、Dana Villageを含めつくっていきたいなと思います。
━━DANRO CHILDRENが掲げている「孤独を防ぐ」は、対子どもだけではなく、その周りの大人に対しても向けられた言葉なんですね。それが、結果的に社会をより良くしていくのだと、みなさんの話から感じました。
和花さん:DANROでは「自分が主役になれる時間や環境があれば、人と人との間にある温かさを価値づけることができれば、世の中はもっと明るくなる」という信念を持っていて。今回のキッズキャンプや親子リトリートを通して改めてその想いが強くなりました。
でもそれは、いくら言葉で伝えても伝えきれなくて。体験して、体感した先にはじめて伝わると思っているから。多くの人に、少しでも早くこの体感を届けていきたいです。
▼親子リトリートの様子
インタビューを終えて
”どれだけ身近に”話せる場所が、助け合える環境が、つながりがあることが、それだけでどれだけ支えになるか。DANROでの対話や、Dana Villageのような頼れるコミュニティがあることの心強さを、体験者の親子の姿や、その場に立ち会った3人のお話から強く感じました。
そんな環境が、もっと身近にある社会を目指して。すでに始まっている、やさしく、愛のある温かい世界の輪を、私も同じ想いをもつ一人として一緒に広げていきたいと思います。(インタビュー/執筆:廣田 彩乃)
\今年もやります!つながりをアップデートする親子リトリート/
▼ 1/16よりクラウドファンディングに挑戦します。
「私たちの想い」を2分の映像に込めました。ご覧いただけると嬉しいです。