トレーナーで生きていく ・ 独立編 vol.43

第43話「リョウの出張トレーニング⑥」

第一話はこちら

リョウの出張トレーニングに同行中、最初のランニングでユウタは動けなくなった。

ユウタ(どうする?回復したら追いかけるか?でも道わかんねーし。。)

再びランニングコースに目をやると遠くから一人の男が走ってくる。リョウだ。

ユウタ(あっ、よかった。。ランニング終わったんだ。。)

リョウが遠くから叫ぶ。

リョウ「ユーター、そこから動くなよー。そこで休んどれ!」

ユウタ(。。終わりじゃないのか。。)

ユウタはそう思ったが聞き返すことができない。残りの体力を振り絞って『はい!』とだけ大きく返事をした。

リョウは再びランニングに戻る。前に走るサトシを追いかける為だろう、ほぼ全速力に見える。

ユウタは上り坂の路肩でヒザマずき、ただ下を見ていた。

冬の軽井沢でランニングウエアだけのユウタに寒さが襲う。唇が震え出す。

ユウタ(やばい、どうしよう。。)

不安に思った直後、黒い大きな車がユウタに近づく。サトシのマネージャー田中の車だ。リョウが呼んでくれたのだろう。

ユウタ(。。。)

田中「鈴木さん、大丈夫ですか?」

田中は車から降りてユウタの横にしゃがむ。

田中「車まで歩けますか?」

ユウタ「あ、はい、大丈夫です。。すみません。。」

ユウタは体に問題のない事が何だか無性に情けなくなった。

田中「。。。」

田中「良かった。。ソレじゃとりあえず車に乗ってください。」

ユウタ「はい。。」

ユウタは車に乗り込み大きく息を吐いた。

田中「スポーツドリンクと温かいお茶です。ゆっくり飲んでください。」

そう言って田中はペットボトルをユウタに手渡し車のエンジンをかける。

ユウタ「あ、ありがとうございます。。」

本来なら自分がサトシにドリンクを渡さなければならなかったのかもしれない。

それが今、自分はサトシのマネージャーに面倒を見てもらっている。

ユウタは悔しさや情けなさを通り越し、もう何も考えられないでいた。

田中「。。。。」

田中「ではゴールに向かいますね。」

田中は20分ほど車を走らせゴールへ到着した。

ゴール地点ではリョウとサトシが次のトレーニングに入っている。

田中「鈴木さん、一緒にやられますか?私は終わるまで車にいますが。」

ユウタ「あ、いえ、すみません。僕も車にいていいですか?」

田中「。。はい、構いませんよ。」

ユウタは車の中で初めてリョウのレッスンを見た。

ユウタ「。。。」

ユウタ「あ、あの、田中さん。。」

田中「はい?」

ユウタ「あの、ここから駅ってどのくらいですか?」

田中「うーん、車なら15分もかからないと思いますが。」

ユウタ「あの、タクシーとかって来てくれますかね?」

田中「あ、帰りたいですか?大丈夫ですか?大丈夫なら私がこの車で駅まで行きますよ。次の移動までまだ1時間以上ありますから。」

田中は再び車のエンジンをかけ車を走らせた。話が早い。

ユウタ「。。。。」

ユウタ「ありがとうございます。す、すみません。。」

必死で涙をこらえるユウタ。

田中「。。。」

田中「いえ。。」

無言で車は駅へと向かった。

こうしてユウタの出張トレーニング体験は終わった。

一生忘れる事の出来ないユウタ27歳の冬だった。

つづく・44話へ

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