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発達障がいの生徒さんと高校の規則

※発達障がいと一口に言っても、特性や苦手なことは千差万別だと思います。また、個人情報のこともあるので、あえて抽象的に書きます。教員目線で見た、校則などのルール・規則・時間等を守ることが苦手な人に関するお話です。


1.高校と発達障がい

私は発達障がいを抱える当事者の一人ですが、そんな私も高校教員として発達障がいをおもちの生徒さんを指導する機会が何度かありました。当人や保護者の方と配慮について話し合いをしたこともあります。ただ、発達障がいを抱えているからといって、あるいは話し合いをしなければならないからといって、その生徒さんの指導が困難だったという事例は私にはほとんどありません。私の担当生徒の場合、発達障がいの有無で、高校生活や指導内容の中身が変わるようなことはほとんどなかったというのが実情です。ただ、ここから書く規則の適応という面で少し合理的な配慮をすることがありました。

2.枠組みからはみ出ないように

学校には校則があります。もちろん、学校に限らず、世の中には法律などの守るべき規則があります。

社会的な慣習や規則を守らないような人のことを「枠からはみ出した人」と評することがあります。たしかに、法律や校則などの規則を枠組みと考えると、規則を破るということは、すなわち「枠からはみ出す」という様に捉えられると思います。

非行に走る人を減らしたり、校内のトラブルを避けるためにも、
学校は「この円の中で暮らしなさい」という枠組み、つまりは校則を提供します。そして、校則という円から出てしまった人には処分や指導が下され、速やかに校則の円の中に戻るように促されるのです。

3.発達障がいと枠組み

発達障がいの有無に限らずというところもあるのですが、学校生活において特性というものが原因でトラブルが起きてしまうとすれば、この規則という枠組みから飛び出てしまう事例が考えられます。少し具体的にいうと、学校が定めた集合時間に戻ってこれない、先生の許可なく授業中にタブレットで余計な操作をする、提出物の期日が守れないといった事案が見受けられることがありました。もちろん、繰り返しになりますが、これらのトラブルを起こすからといって発達障がいというわけではありません。ただ、発達障がいの特性が困難な方に作用してしまった場合に学校で起きやすいトラブルを挙げてみた次第です。

上記の、時間やタブレットの使用ルールや期限といった枠組みを逸脱してしまう生徒に対してどのように指導すべきか。私は答えを出せないまま退職となりましたが、2つの方法の有効性について今でも考えることがあります。
考える際、参考にさせていただいているのは『ケーキの切れない非行少年たち』という本です。


3-①枠組みを広げる

発達障がいを抱える生徒が、特性によって、他の生徒に適応されている枠内に留まることが難しいのであれば、合理的配慮として枠組みを広げることはできないだろうかと考えました。すなわち、他の生徒に比べて許容範囲を広げるわけです。

世の中はルールが絶対とまではいいませんが、やはり社会で生きていくためにはある程度守るべきことは守るという感覚が大切になります。広げた枠組みであったとしても、枠組みの中でうまく適応できたり、ルールを守れたりという成功体験を積むことができれば、次第にルールは守るべきものだ、与えられた枠の中で暮らすことが求められているということを認知できるのではと思いました。

3-②枠組みを撤廃する

上の①は、教員としては比較的楽な対処でした。その一人一人にあった決まりごと、枠組みさえ設けてしまえば、枠から出てしまった人に指導がしやすいからです。枠組みという目安があることで、正しい行いか・誤った行いかを教員も判断しやすいのです。

ただ、それでいいのかなと思うことも多々ありました。通例の枠からはみ出てしまった人がいて、特性を鑑みて枠を広げたとしても、またその広い枠からはみ出てしまえば、さらに枠を広げねばならなくなります。終わりがないのです。

そもそも、自ら進んで規範を破る人というのはそう多くはいません。何度も定められたルールを逸脱してしまうということは、自分の行いがどのような理由でなぜ相応しくなかったのかが認知できない状態にあることも考えられるのです。そのような状況の人に、枠組みを超えてしまっているから、社会的規範を乱しているからと注意を繰り返しても何もメリットがありません。むしろ、指導されている意味を正しく把握できないまま、何度も自分の行為を否定され続けることは、二次障がいのうつなどの原因ともなりかねません。

だから、どう対処すべきなのかを具体的に述べよといわれると私は答えに窮します。しかし、ルールを破った原因が、特性に起因するものなのであれば、一度枠組みを完全に撤廃して、目の前にいる生徒さんとありのままに話す必要もあるのかと思いました。

4.おわりに

社会で暮らしていく上で、やってはいけはいこと、というのがあるのは確かです。ただ、そのやってはいけないことをやってしまった人に対して、いずれはルールを守ることができる人に導くためにどのような順序を歩むかは、学校現場でも議論をする価値が高いと思いました。

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