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高校社会科教員の生きる道

前回、教員の就活事情(以下)について書きました。

0.はじめに

今回はより範囲を狭めて、私が担当していた高校の社会科の教員事情について書いてみたいと思います。本来は、高校の社会に関する科目は「地理歴史科」・「公民科」と称しますが、今回は便宜上、それらをまとめて「社会科」と表記します。

1.結論

先に結論をまとめたいのですが、私の体感と感想的には、
社会科の教員は競争が厳しい(募集が少ない)
→2
・採用されるためには1科目・1分野を磨く
→3
・長く生き残るためには、1科目の専門性を高め、他の科目も教科書レベルは抑える
→4

→横の番号の章で具体的に説明しているので、そちらを適宜参照していただければと思います。

2.社会科は募集が少ない?

よく社会科は競争が厳しい、募集が少ない、よって常勤になるのが難しいなどと言われますが、これらの意見に関しては私も同意します。高校教員の求人を見ていると、国語科や英語科、他の理系科目等に比べて、社会科は圧倒的に求人の母数が少ないと感じました。また、私の就職先の学校で出会った同僚の社会科の先生方も「社会科の常勤は選べる範囲が狭かった」と仰ってました。社会科の競争が激しいのは、よくいわれていることですが、次のようなことが影響していると思います。
英語科の教員免許が取得できるのが英米文学部や一部教育学部、国語科の教員免許が取得できるのが国文学部と一部の教育学部と、他科目は免許の取得を目指せる学部が限られているのに対して、社会科の免許は歴史学系の学部の他にも経済学部でも法学部でも取得可能と免許取得の幅が広いことが社会科の競争を激しくしていると考えられます。もっとも地理・歴史・公民と幅広い分野の知識を必要とする科目なので、より様々な分野の学問から先生が生まれることは好ましいことであり、結果的に社会科教員のレベルが上がることは良いことだとも思いますが、なかなか就活は厳しいと感じました。

3.生き残り方 採用編

常勤のような生き残りが厳しい社会科で採用されるために必要なことは、一つの科目・分野を徹底的に磨くということだと思います。
社会科(高校の地理歴史・公民科)は、日本史/世界史/地理/政治経済/倫理と幅広い分野を担当します。そういえば、最近では、歴史総合や公共といった私たちが学生の時には存在しなかった科目もできました。正直、社会科の教員になる人でも、学生時代に全ての科目・分野を学ぶわけではありません。高校の履修や大学受験は選択制ですし、世界史選択だったから日本史のことはよく知らないといった先生も多くいるわけです。
ただ、採用の時からオールマイティーに指導可能な先生を求めている学校はほとんどありません。たいてい、採用活動の際には、日本史・世界史・地理・政治経済といった科目の中から1科目を選んでペーパー試験を受けたり、それらの科目の1分野を選択してその部分の模擬授業を行ったりすることで選考されます。逆に、上記リンクの『教員の就活』の中に書きましたが、講師採用のための試験は好きな1科目が選べる代わりに、教科書レベルを超えた資料集レベルの専門的な知識が問われます。
よって、これから高校の社会の先生になるという場合は、好きな科目を一つ選んで、徹底的にその科目の知識と理解を深めるということをお勧めします。

4.生き残り方 勤務編

3では、とにかく一芸を磨く、一つの科目を徹底的に磨くということを書きました。しかし、実際に学校で勤務をするようになった暁には、好き嫌いを問わず何でも担当できますという姿勢が問われます。高校は塾や予備校に比べると、高度な教科知識が問われにくい分、誰もが何でも教えられるという体制が求められやすいです。そのため、就職の選考の時に受けた科目とは全然違う科目を担当するということも日常茶飯事です。実際に、私も日本史で採用していただいた学校で政治経済と倫理を担当しましたし、政治経済で採用していただいた学校で歴史を担当しました。
そのような何でも屋さんが求められる学校で長く働くためには、自分の得意科目は引き続き徹底的に伸ばしていくと同時に、他の科目も教科書レベルぐらいは指導できるようにしておきたいです。例えば、日本史が得意であれば、日本史は大学二次試験にも通用するように鍛錬し、それ以外の科目も教科書を見れば教えられるくらいにはなっておくということです。
多科目を担当できると、それだけ契約延長の機会も増えるそうです。

5.おわりに

社会科は競争が厳しいがゆえに、私の周りにおられる先輩の先生方は本当に楽しく分かりやすい授業がお得意な方でした。歴史を語るなど、話芸も大いに求められる社会科は授業力、トーク力を上げる訓練となるとも思います。


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