一番の理解者でありたい

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お天気の良い日に、田んぼを撮影すると、肉眼では見えない素敵な風景を楽しむことができます。

先日、親しい友人とクレーム対応について話すことがあったので、クレーム対応研修について大切にしていることを書いてみようと思います。

私は、物流会社に8年勤務していました。1日の業務の大半がクレーム対応でした。1日に10件は下らなかったので、対応した件数はざっと計算しても、約28,000件です。なぜ、そんなに毎日クレームが多かったか?減らす努力を怠っていたわけではなく、どんなに努力しても、クレームが発生するような環境でした。

・荷主さんの出荷依頼が半端なく多いため、運送会社のキャパを超えてしまい発送できない。
・荷主さんの生産ラインでしょっちゅう不具合が生じ、欠品状態で出荷できない。
・破損しやすい商品にもかかわらず完全梱包が出来ないため、すぐに損傷して使えない。(しかも1点物の特注品に多い)
・似たような商品が多くて、誤出荷していることに気づかず、帳簿上と現物が合っていない。
・倉庫の周辺でトラックやコンテナが数珠つなぎになって、しょっちゅう警察が注意に来る。
・高速道路を走行中、貸切りトラックが横転して、積んでいた商品が大破。
・オンライン化していなかったため、未着問合せの対応に時間がかかる。

毎日、朝から晩までかかってくる電話の大半がクレームで、神経をすり減らしながら対応していました。
お客様の「とにかくすぐに持って来て!」「今日の展示会用に発注したのに、着かないってどういうこと?」という要望に応えられないケースがほとんどでしたから、状況を理解・納得していただいて、代案を示したり、到着が遅れることを了承してもらうために、あの手この手を使って対応しました。
しかし、対応の成功率は3~4割というところでしょうか?炎上させたケースの方が多くて、上司からの注意されることは日常茶飯事。始末書もたくさん書きました。「クレーム対応で、やってはいけないこと」に関してのレパートリーは誰よりも多いと思います。
そして、前職のそのような経験から、現場改善指導や研修で「クレームへの対応」についてご依頼を受けることも多いです。

理不尽なものは別にして、クレームへの対応は、昔も今も手順やポイントは変わっていません。手順やポイントについては、私でなくても指導出来るはずです。

しかし、一般的な手順やポイントを伝えても、研修生はおそらく「そんなことわかっている」という反応だと思います。みんな、クレームにどのように対応しなければいけないか?は分かっているのです。
私も、上司から注意を受けているとき、始末書を書いている時「そんなこと、言われなくてもわかってるわい!」と思っていました。

私はクレーム対応について研修を行う時に、お客様より対応者の気持ちを尊重しています。対応者が、クレームにどのように向き合っているか?背景にある気持ちや苦手意識について、整理する時間を持つようにしています。
対応者は、好き好んで火に油を注ぐような対応をしているわけではないのです。むしろその逆で、責任感が強い、ルールを大切にしている、思慮深い、状況が把握できている、など素晴らしい面を持っている人が多いです。ただ、自分が大切にしていることを、相手に軽視されたり、きちんと届いていないためにクレームになっている場合が多いのです。

そこに着目して、まず、私がその気持ちと状況を、しっかり受け止めること、対応される方にも、しっかり向き合ってもらうようにしています。
どのようなケースで、どのようなやり取りになったときに、上手くいかないのかを検証し、「そういうことだったんだ!」と認識してもらいながら、より良い方向へと導いていきます。

3年前にシルバー人材センターの駐輪場スタッフさんの研修を担当させていただきました。
毎月、2ケタのクレームが発生していて、このままでは指定管理者制度の入札に加われなくなるという危機的な状況でした。(入札できなければスタッフさんは全員解雇)
スタッフさんは約200名いらっしゃって、全員男性で、平均年齢は70歳以上でした。

研修の前に、これまで発生したクレーム内容を全て見せていただき、現状を把握しました。
発生したクレームの背景にあったのは、「利用者にも、ルールを守ってほしい」という強い思い。ぶっきらぼうで人と上手く話せない方が多かったですが、皆さん、責任を持って業務に取り組んでいらっしゃったのです。
クレーム記録をもとにテキストを作成し、思いをくみ取りながら研修を進めた結果、翌日からクレームが発生しなくなりました。そして、その後半年間で発生したクレームは0件でした。

小さい子も、大人も、誰だって事情をわかってもらえずに、「こんなことやっちゃだめでしょ?」「もっとこうしなさい」と言われることはイヤなのです。
だから私は、現場の最前線でお客様対応に尽力している人の一番の理解者でありたいと思っています。
「こういう状況だったんですね」「こういうときが、言いにくかったり、感情的になってしまうんですね」
気持ちや状況が正確に把握できたとき、みなさんから「そうなんですよ!!」と声が上がったり、表情が変わってきます。
対応の手順やポイントを詳しく伝えなくても、気づきや学びが多かったことが、皆さんの様子から伝わってきます。

正しい在り方ややり方を説明するまえに、丸ごと相手を受け止めて、とことん寄り添って理解すること。それが、私に出来る研修の在り方、やり方だと考えています。

#クレーム対応 #クレーム対応研修 #現場の理解者 #物流


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