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ハンドパンという悪魔的魅力の楽器に出会った話。第一話

2023年、春。

見るとは無しに携帯を眺めていた私は、ある奇妙な動画を見つけた。

小さな画面の中で、地下鉄のホームらしき所に座る、少しくたびれた服を着た痩せた髭面の男が、膝の上にちょこんと乗せた不思議な形をした物体を、両手の指先で素早く叩いている。

その物体はどうやら艶消しの金属で出来ている楽器らしく、姿形はどう見ても大昔のSF映画に出てくるアダムスキー型UFOにしか見えない。

その楽器の上半分には七、八個の凹みが円周状に並んでおり、その部分を指先で正確に叩くことで音を出す仕組みのようだ。

何の気なしに見始めた私は程なく、その動画に釘付けになった。

その男の両指先は、残像を残すほどの素早さで楽器の上を跳ね回り、金属の表面に触れるか触れないかで、今まで聞いたことのないポワンという音を発している。

それにしても凄まじい音の洪水だ。
その中から際立ったメロディーとハーモニーが溢れ出し、がらんとした地下鉄のホームに高く遠く響いていく。

そして驚くべきことに、ウッディーなベース音と、裏拍のハンドクラップ音、さらに正確に刻まれる16ビートのアタック音までもがこの小さな楽器から同時に生み出され、音楽の基部をがっちりと支えているのだ。

物凄いスピードで動く両手とは対照的に、男の顔は柔和で落ち着いており、時に目を閉じ、時に微笑みさえ浮かべている。

動画の途中で急に意識が覚醒し、全身に電撃が走って震えが来る。

一瞬の後、私もこの不思議な楽器を演奏することになると確信したことを、今でも鮮明に覚えている。

そう、画面の中の男と同じように。


一体何なんだこれは。

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