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2021年8月の日記~巣篭りの夏休みは更新も少ないでした号~

8月*日
またひとつ、新しい会社に携わることになって、何かと世話を焼いている。とても行動力のある女性で、やりたいことがはっきりしている。「お金」の扱いに関する考え方も近く、そこも支える判断をした上で大きかった。そういう人の背中を押すのが楽しいと、最近ますます思うようになった。押してもらう側から押す側に興味が移ったのは、もちろん年齢のこともあるが、力になれることが増えたからだと思う。

8月*日
会社に「取材をさせてほしい」とメールをくれた大学生とZOOMで話をした。若い人は全員が広く言えば後輩で、後輩からのお願いは極力聞き届けたいと思っている。思えば自分も若いころ、駆け出しのライターとしてたくさんの先輩の話を聞いてきた。そこで直接耳にした多様な意見や考えが、自分の基礎になっている。小説家になり損ねて辿った道だったが、実質のキャリアデビューが「ライター」だったことは幸運だったと思う。
たくさん引き受けた取材のひとつに、「ベンチャー企業の社長列伝」的な連載があった。楽天の三木谷さん、ソフトバンクの孫さん、サイバーの藤田さんら、多くの当時の若手ベンチャー社長に会い、話を聞いた。中でも忘れられないのは、ワタミの渡邊美樹さんだ。
理由は二つある。一つは「取材中に怒られた」こと。もう一つは、広報担当の女性が、打ち明け話のように話してくれたことが印象深かったからだ。
打ち明け話は、取材後に語られた。突然その女性が「渡邊は海外出張も多いのですが、出張先で何よりも先にすることがあるのです。それは何だと思いますか?」とクイズを出してきた。いくつかのやり取りの後明かされた正解は、「自分の家族にお土産を買うこと」だといった。会社が元気なのも、毎日仕事に精を出せるのも、まずは支えてくれる家族がいるからだ、そのことを絶対に忘れないために、ルーチンにしていると、その女性は嬉しそうに話してくれた。
その話にも感じるものがあったが、それよりも、その話を実に嬉しそうに、自慢話のように語る女性の姿が印象的だった。「取材中に怒られた」のも、原因は私にあり、わざわざ怒ることがどれだけ愛のある行動であるかは、しばらくして気づくことができた。
その後、渡邊美樹さんは、ブラック企業の主だと叩かれたり、経営感覚を持ち込むと意気込み国会議員になるも心折られたりしながら、この度また、ワタミの社長に復帰された。確かに厳しい人なのだと思うが、あの日以来、変わらず密かに応援し続けている。

8月*日
いくつか経営している会社のうち、アパレルを生業にする会社の業績が思わしくない。コロナの影響も、もちろんある。「イベントが軒並み中止になっているから」「卸先さんの状況が大変だから」など、苦戦を招いていると思われる要因を言い出せばキリがない。でも一方で「それが理由だ」という説明を聞いても、なんだかなと思う。
国内におけるアパレル事業は、ファストファッションが伸び、消費動向も変わり、コロナになる前から厳しかった。以前は7割の確率で勝てた業界だったものが、徐々に勝率が下がり、コロナで一気に3割以下になったような印象だ。都合、4割が黒字から赤字に転落したことになる。うちはそこに該当した、というに過ぎない。現に利益を出し続けている業界仲間をたくさん知っている。
そのような状況になったとき、取りうる道は二つあると思う。一つは「勝率が高い事業に足場を移すこと」、もう一つは「これまで以上に勝つための努力をすること」だ。ところが、いずれの選択もせず「ただただ厳しさを嘆く」人が案外多い。このようなタイプの人が、成功を見ることは難しい。経営は、「行くも地獄、引くも地獄」ではない。「留まることこそが地獄」だと思う。