「カニと修造」理論
ご覧いただき、ありがとうございます。國山 弾(くにやま だん)です。
何とも奇妙なタイトルですが、知る人ぞ知る名前だと思います。
映画の監督や脚本、スクリプトドクター(脚本で困っている人をカウンセリングし、良い状態に戻してあげる人)で知られている、三宅隆太さんがTBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」にて提唱した理論です。
どんな理論なんでしょうか。
例えば、ロケ番組で松岡修造さんが船に乗って、カニを捕っているとします。
捕ったカニを漁師さんが綺麗にさばき、修造さんが目を輝かせて口に入れます。
「うまぁぁぁ!!」
と声を出すと、視聴者の皆さんは「美味しそうだなぁ」と修造さんに感情移入することでしょう。
ですが、そのロケの前に「カニ男さんのおうち」という映像が流れたらどうでしょう。
カニ男さんのおうちには、生まれたばかりの小さなカニがいます。
小さなカニは、ベビーベッドですやすやと寝ています。
お母さんカニは、眠る我が子を見て微笑みます。
「あなた、今日は結婚記念日ね。早く帰ってきてね」
なんて、お母さんカニは、出かけるカニ男さんに言います。
「ああ、仕事が終わったら、すぐに帰るよ」
カニ男さんはそう言うと、海へと泳ぎはじめました。
そこに巨大な人影が現れ、カニ男さんは引き上げられてしまいます。
お腹を空かせた元テニスプレイヤーの暑苦しい男が、よだれを垂らしてこちらを見ています…
これを見て皆さんはどう思いましたか?
「修造!なんて酷いことをするんだ!」
と思うんじゃないでしょうか。
つまり、視点を変えるだけで、物語が180度変わるということです。
これは、物語を作るにあたって、非常に重要なことです。
Aに感情移入していた視聴者が、Bの視点で物語を見た時、自分が信じていたものが正しくないかもしれないというモヤモヤが生まれます。
逆に作り手としても、話に行き詰まった時に、視点を変えることでダイナミックな物語に変わったりするわけです。
物語を作る者の端くれとして、皆さんに共有したいな、と思って投稿しました。
では、また。