【論文レビュー】藤村直史「小選挙区比例代表下での役職配分ー民主党の党内対立と政党投票ー」2012、選挙研究、28巻1号
1995年から続く自民党では、役職配分について次のルールが採用されていた。①派閥均衡人事②シニオリティルール③選挙の弱い議員への役職の配分④結党初期の官僚出身者の抜擢だ。
①は中選挙区制のもとにおいて派閥の人数の比率に基づいて役職の配分が行われた(中北(2017)によると、小泉政権以後は抜擢人事が増え、また近年派閥の力が弱まったため崩れてきていると言われている。)②は当選回数の多くなるにつれ、委員会、内閣などにおいて重要ポストを与えられる。③は選挙区において、次点との差が少ない、比例復活などの議員に重要ポストを与え、その後の選挙に備える。④は結党初期のことで、官僚出身者の多くを政策形成の観点から重要ポストに採用する。
①~④を踏まえて、民主党政権時代における役職配分の実体を分析したのが本論文だ。著者は4つの仮説を立てる。
①政党は派閥均衡人事(民主党におけるグループ)を行う。②シニオリティルールが採用される。③小選挙区比例代表並立制では、政党投票(party vote)が行われると考えられるため、選挙に強い議員(小選挙区で次点との差が大きい議員)に役職を割り振る④政権担当初期においては官僚出身者が多く役職に配分される。
以上を鳩山、菅、野田の3政権で分析された。対象の役職は大臣、副大臣、大臣政務官、国会常任委員会委員長、同理事である。
結果、②と③の仮説が採択された。
このなかでも②のシニオリティルールについて、民主党政権下でも採用されていたということが興味深い。以前、亀井静香元衆議院議員が番組で「民主党は若い連中の集まりだった。」と自民党における年功序列と対比させて語っていたが、民主党においても重要な役割を締めたのは当選回数の多い議員であるのだ。
また、④の棄却についてはついてはよく民主党政権の失敗として上げられている「政治主導を急速に推し進めようとしたが、移行がうまくいかなかった」ということに人事の面から説明できることになるかもしれない。(因果関係は定かではない。)
政党組織の安定の要因は1つは人事であると考えられる。それをすべく自民、民主において共通して、シニオリティルールという制度がとられてきたことは興味深いことである。また、個人投票、政党投票といった選挙の傾向が役職を決めるというのも、選挙という不安定性からくる完全なる適任人事ができないことのジレンマを表しているようで興味深い。
p.s
アウトプットのために論文レビュー初めて見ました。面白い論文読んだら、アウトプットしようと思います。
【参考文献】
藤村直史「小選挙区比例代表下での役職配分ー民主党の党内対立と政党投票ー」2012、選挙研究、28巻1号
中北浩爾「自民党ー「一強」の実像ー」2017、中公新書
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