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『天文学者たちの江戸時代』を読んで

 天文学は宇宙を観察して生命の根源をさぐる。なんとなくの天文学のイメージはこのくらい。あとは夢無限大な学問で、ブラックホールがやっと最近見えたぐらいというのを聞いたことがある。

そんな中空を見上げて星を眺めた人たちがおそらく全員考えたことがあるのが、昔の人も同じ光を見てたのかなあ、である。
何百年、何万年、何億年も前から存在する宇宙の中の星たち、きっと何万年も前から光続けているあの白い点たちを昔の人はどんな思いで見ていたのだろうか。
この星々たちを、江戸時代はどのように見ていたのかを教えてくれる一冊がこの本だ。
国運を占うための天体観測としての側面と、暦の制定としての天文学が発達していたということ、鎖国下の江戸時代で輸入された蘭書を翻訳し、より精確な天体観測を求める当時の天文学者たちの熱意を感じる。
移り変わる時代の流れとは全く別の速度で変容を見せる宇宙の姿に一喜一憂するのは今も昔も変わらない。
人間が生命の歴史から道を逸れて、文明を作り始めて数千年。猿から分たれて数万年。人型の何かかとして生きて数百万年。宇宙の歴史からすると数億分の一にしか満たないという驚愕の事実であり、宇宙とはどれだけ壮大なものかを思い知らされる。

つい先日も八万年に一度のアトラス彗星を見ようとしたが、あいにくの曇り空で見れなかった。八万年後の大豆家の子孫に伝えてぜひ観測をお願いしたいと思う。
僕らが目の前の一瞬に、喜び怒り哀しみ楽しんでいるのか、星たちにとっては取るにに立たないことだろう。逆に数億年の命があったとしたら我々は何ができるのだろうか。一つ一つのイベントに迷い惑わされ苦しむこの人生を星々たちはこんなにも楽しむことはできないだろう。