秋は短し走れよおじさん

毎夜毎夜ふらふらと夜道に現れる灯りの振り子。ゆらゆらと規則的に揺れる光に照らされるのは細くも太くもない2本の足。少し疲れているのか、足の裏はほぼ地面を離れていない。
一歩一歩近づいてくるスピードは決して速くない。ただ、前へ進もうという意思だけが彼の体を動かしているようだ。見たところいわゆる肥満体系ではなさそうだが、軽そうな動きでもない。あの服の下にはきっと綺麗な浮き輪がついていて、それを脱ぎ去るために彼は走っているようだ。


10月には入り季節は秋になるかと思われたが、なかなか温度が下がらない。最高気温が30度を超える日もあり、まだまだ半袖がスタメン入りしている状態が続く。南の地方では突然の豪雨により浸水が発生しているというニュースをよく目にする。地理の資料集でしか見たことのないスコールがこの国にもやってきているのかもしれない。

そうはいうものの最高温度とは裏腹に最低温度は下がり始めており、朝晩はかなり過ごしやすい気候になり始めている。

この短い秋という季節に、走るおじさん。何者にもなれないおじさんが何者かになるために走る。