シェア
20世紀後半、某国のあまり豊かでない街に、その喫茶店はあった。喫茶店と呼ぶにはかなり大…
私は喫茶店が苦手だ。こぢんまりとした雰囲気も、誰でも落ち着けるような静かな雰囲気も嫌だ…
「はい、お待たせ。クリームソーダ」 「ありがと。……でもお客さんなんだから、もっと懇切丁…
「おい、砂糖を入れすぎだ」 ぼたぼたとカップの中に砂糖の塊を入れる女を見て、思わずこめ…
ブラックコーヒーというものを、わたしは美味しく飲めたことがない。 初めは、わたしが子…
月の光を浴びてどこまでも広がる水面は私のなにもかもを包み込んで肯定してくれそうだ。私は…
私は特に何か書くネタがないのだが、飄々に何か作品を出さなくてはいけないので、大変困っている。 別に飄々に作品を出すことは強制ではないのだが、折角國文研にいるのだし何か書きたいとは思っている。ネタになりそうなものはないかと街をうろついては見たが、風変わりなルンペンも博覧強記な変人も現実にはいなかった。 そもそも、小説とは何だろうか。私はこの冊子に寄稿するときに深く悩んだ。広辞苑によると文学の一形式と書いてある。かの有名な作家、芥川龍之介は辞書の言葉より小説の言葉は美しくな
空き教室に入っていても怒られない。大学のキャンパスが広いから管理しきれないのだろう。そ…
我々……私とケンジの共通点は2つあった。ひとつは同じ「山田」の名字を持つこと。もうひと…
傘もささずに歩く。水溜まりも踏みしめて、少し細い横断歩道を渡る。信号は赤く光っているが…