逆ぼったくり喫茶/麻布天
20世紀後半、某国のあまり豊かでない街に、その喫茶店はあった。喫茶店と呼ぶにはかなり大型なそこは、大抵の値段は通常の半額以下、コーヒーに至っては5分の1の値段という破格の喫茶店だった。人々は値段の秘密を聞こうとはしなかった。何故なら人々は知っていた。マスターも従業員も、この街では知らぬ者はいない程の犯罪組織であったから。犯罪組織といっても、善良な市民を危険に晒し、悪逆無道の行いをするような集団ではなく、弱きを助け強きを挫く。ニッポンでは「鼠小僧」と呼ばれるような組織だった。