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私には、何か欲しいものがあったのです。 とてもとても、欲しいものがあるのです。 それ…
20世紀後半、某国のあまり豊かでない街に、その喫茶店はあった。喫茶店と呼ぶにはかなり大…
私は喫茶店が苦手だ。こぢんまりとした雰囲気も、誰でも落ち着けるような静かな雰囲気も嫌だ…
「はい、お待たせ。クリームソーダ」 「ありがと。……でもお客さんなんだから、もっと懇切丁…
「おい、砂糖を入れすぎだ」 ぼたぼたとカップの中に砂糖の塊を入れる女を見て、思わずこめ…
ブラックコーヒーというものを、わたしは美味しく飲めたことがない。 初めは、わたしが子…
月の光を浴びてどこまでも広がる水面は私のなにもかもを包み込んで肯定してくれそうだ。私はいつだって月光を反射して眩く揺れる水面に沈んでしまいたいと思っているのだけれど、いざ足を踏み入れようとすると足が震えて、美しいはずの海が恐ろしく思えてしまって、砂浜に立ち尽くしている。 「気ィ済んだか」と低い声がする。何も返事をせずにいれば男は「……そうかよ」と答え、煙を吐き出した。 その様子を横目で見ながら私はふらふらと吸い寄せられるように水面に足を付けて、ぼんやりと浮かび上がっ
私は特に何か書くネタがないのだが、飄々に何か作品を出さなくてはいけないので、大変困って…
空き教室に入っていても怒られない。大学のキャンパスが広いから管理しきれないのだろう。そ…
我々……私とケンジの共通点は2つあった。ひとつは同じ「山田」の名字を持つこと。もうひと…
傘もささずに歩く。水溜まりも踏みしめて、少し細い横断歩道を渡る。信号は赤く光っているが…
「圭、もう別れないか?」 大事な話だと彼氏に呼び出されて、一番に言われたのがこれだった…
『歌を歌ってばかりのかえるがいるんだって』 空を泳ぐ魚たちが、そんなうわさ話をしている…