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竈猫
2023年11月4日 00:07
窓を開けると、身を切るような北風が舞い込んできた。思わず身震いして、箪笥から冬物を出す。袖の長い上着を羽織ると、箪笥の匂いが染み付いていた。寝坊に寝坊を重ねた罪深き昼下がり、食材を求めにスーパーまで歩く。風は頬を冷やし、ガソリンスタンドの石油の匂いを運んできた。ああ、冬が来た、と思った。故郷を離れ、すっかり車離れした都会の生活に身を置くようになってから、ガソリンの匂いにノスタ